田舎でのお悩みを、田舎暮らしのベテランライターが回答。今回は、農地だったところに家を建てるために地目変更したいのにできないという話。
2年前に荒れ放題の3反歩の土地の売買契約をしました。問題は地目が畑だったこと。家を建てたいので原野か雑種地に地目変更できないかと売主に聞いたら、「それは無理なので仮登記で。植林して木が大きくなったら山林に地目変更して本登記しましょう」と言われました。最近、現地を訪ねたら、ヒノキが私の背くらいに育っていましたが、まだ転用できないとか。理由を教えてください。
群馬県在住 太田さん●57歳
非農地証明で転用するための要件
山林や原野が農振地域に指定されていなければ、家はすぐに建てられる。だから荒れた農地を原野か雑種地に地目変更したらいい、という考えは合理的。しかし、原野のように必要性のはっきりしない許可申請は、農業委員会で受理されない。雑種地も駐車場など、特定の目的が必要だ。
可能性があるとすれば、非農地証明や現況確認証明を使う方法だろう。前者はそこが非農地であることを証明するもの、後者は土地の現況を農業委員会が確認したうえで証明するものだ。いずれも耕作放棄してから20年以上の経過期間が必要。自然に生えた木が20年生以上なら、山林に地目変更できる可能性がある。
植林が認められるのは、申請の許可が出てから
太田さんは売主から、植林による地目変更を提案された。自己所有の農地を地目変更するには「農地法第4条」の申請が必要だ。太田さんは、売主によるこの申請で農地を山林に転用することを前提に契約したわけだ。ちなみに、他人の農地を取得して行う5条植林は、山林を所有していない人には認められない。
売りやすいからと勝手に木を植える地主もいるが、植林は4条の許可が出てから。隣接地に日陰ができないよう北側5間、南側3間を空けて植えるところもある。地目変更には通常、1反歩当たり300~400本が目安で、樹種や本数は申請書に記入しなければならない。
植林による農地転用が認められるのは早くて3年、遅くて5年程度。木が根付いて生長したかどうかは法務局が確認するので、自分で早合点しないことだ。もう少し待つか、近くで貸家を見つけて、許可が出るまで田舎暮らしの準備をするという手もある。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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この記事を書いた人
山本一典
田舎暮らしライター/1959年、北海道北見市生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、85年からフリーライター。『毎日グラフ』『月刊ミリオン』で連載を執筆。87年の『田舎暮らしの本』創刊から取材スタッフとして活動。2001年に一家で福島県田村市都路町に移住。著書に『田舎不動産の見方・買い方』(宝島社)、『失敗しない田舎暮らし入門』『夫婦いっしょに田舎暮らしを実現する本』『お金がなくても田舎暮らしを成功させる100カ条』『福島で生きる!』(いずれも洋泉社)など。
Website:https://miyakozi81.blog.fc2.com/
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