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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

産前から義務教育まで、まちを挙げて子育てをサポート! 子どもたちの笑顔が地域を元気に【福岡県田川市】

福岡市や北九州市など、福岡県内主要エリアへのアクセスがよい田川市は、自然豊かな環境でのびのびと暮らせる地域ながら、生活に便利なスーパーなども多い。子育て世代にうれしい田川市独自のサポートが充実していることから、若い世代の移住者が増加し始めている。

掲載:2023年6月号

福岡県田川市 たがわし
福岡県のほぼ中央に位置し、人口は約4万6000人。明治時代から1960年代まで炭坑のまちとして栄え、『炭坑節』発祥の地としても知られている。その歴史は田川市のシンボルでもある二本煙突や石炭・歴史博物館など、今もなお息づいている。福岡空港から車で約1時間10分、小倉南ICから約30分。

 

手厚い支援で「子育てしやすいまち」へ

子育てや移住・定住をサポートしてくれる田川市役所の皆さん。子育て世代の声に耳を傾けながら、さらに子育てしやすいまちづくりを目指している。

 豊かな自然環境に恵まれた田川市。炭坑のまちとして栄え、閉山後は急激な人口減少を経験したが、近年では「子育て世帯にやさしいまち」として若い世代の市外への流出抑制が利き、市外・県外からの移住者が増えてきているという。2022年度からは、「子どもは無限の可能性を秘めた将来を担うこのまちの宝」を掲げる「田川市子どもの権利条例」が施行され、地域全体で元気な子どもを育てるまちづくりを宣言している。

 子育て世帯支援の1つが、0〜2歳の子どもがいる世帯に配布される、総額10万8000円の「田川市子育てクーポン券」の支給だ。子育て世帯の経済的負担を軽減するためにスタートした田川市独自の支援事業で、2016年度のスタート時には0〜1歳児のみ、総額4万8000円だった対象年齢と支給額を2020年度から大幅に拡大した。地域の子ども用品店やドラッグストアなど利用できる店舗が多いこともあり、利用率はほぼ100%を達成。子育て世代の経済的支援のみならず、地域経済の活性化にもつながっているという。

 「出生や転入の届け出の際に把握できるので、申請など面倒な手続きもなくしました」

 と子育て支援課の吉永課長が話すように、忙しいパパ、ママにうれしい体制も喜ばれているという。

 全国に先駆けてスタートした、福岡県内の市としては初の取り組みである「0〜5歳の保育料の無償化」も手厚い子育て支援の1つ。さらに3〜5歳の副食費(給食のおかずやおやつ代)まで無料に。市内全20の保育所で、待機児童ゼロを実現している。

 「以前は保育料を賄うために働いているようなもの……と感じている親御さんも多かったのですが、保育料が無料になったことで経済的な不安がなくなったという声を多くいただいています」

 保護者アンケートでも、田川市内に家を建てた人が50世帯、市外への転出をやめた人が52世帯、転入・移住をしてきた人が40世帯(複数回答)と、保育料完全無償化が移住・定住促進につながっている。

 今年3月に大野城市(おおのじょうし)から移住した村上美咲さん(25歳)は、ご主人と息子さん2人との4人家族。田川市はご主人の出身地であり、同じ福岡県内出身の美咲さんにとっては身近な地域ではあったが、「保育料無料が移住の決め手でした」と話す。大野城市で暮らしているとき、1人目の妊娠を機に仕事を退職。2人目を出産してからパートに出ることも考えたそうだが、「2人分では月の保育料とパート代が同じくらいになってしまうから……」と、預けることを悩んでいた。子育てクーポンについても、「なにかと出費が重なる時期に受け取れて助かりました」と、移住直後に手厚いサポートを実感したという。

 田川市での暮らしについて、「子どもたちと出かけると、必ず誰かが声をかけてくれます」と、地域全体で子どもを見守ってくれる温かさを感じるそう。近隣には小さな子どもと出かけられるスポットも多く、「同じ公園でもいろんな遊具があるので、子どもたちも飽きずに遊んでくれます」。

 2人のお子さんは間もなく保育所へ入る予定で、村上さんも新たに仕事を探そうかと検討中だという。田川市のサポートによって、子育てと仕事の両立が早めにかなえられそうだ。

田川市のママさん移住者/村上美咲さん
福岡県大野城市出身、25歳。2023年3月にご主人の地元でもある田川市へ移住。現在1歳の旺士朗(おうじろう)くんと、5カ月の琥大朗(こたろう)くんの2人の子育ての真っ最中。田川市に住む義父母の手も借りながら子育てを楽しんでいる。「以前より車での移動が増えましたが、近距離にいろんなお店があるので困りません」。

「川渡り神幸祭など、地元伝統の祭りや行事がすごく盛り上がると聞いています。まだ参加したことがないので楽しみです!」

田川市で元気に成長中の旺士朗くん。小学校、中学校と、田川市の恵まれた教育環境を受けて、個性を伸ばしてくれることだろう。

「多世代交流ひろばそだちの森」では、送り迎えや一時預かりなどサポートを必要とする「おねがい会員」と、サポートする「まかせて会員」をつなぐ子育て支援を行っている。

 

家族でリフレッシュできる楽しい施設がいっぱい

 子育てのメリットとして、公園が多いのも田川市の特徴。約150haもの広大な敷地を有する「田川中央公園」には、大型遊具やウォーキングロードがある。周辺にはバスケットコートやテニスコート、陸上競技場などもあり、休日ともなれば多くの家族連れでにぎわう人気のスポット。また、隣接する「田川市市民プール」には、流れるプールやウオータースライダーなどワクワクする設備が揃っている。

 ICT教育に力を入れている田川市ならではの施設といえば「としょも」だ。ものづくりとアートの創造・実践の場として開設されたラボには、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル機器が備えられ、田川市民は無料で使える。小さいころから遊びのなかにデジタル技術を取り入れることで、創造力が自然と育まれる環境だ。

 また、子育て世帯のサポーターとして頼れる施設も多い。子育ての悩みを相談できたり、パパママ同士のつながりをつくる場になったりと、困ったときに頼れる存在や場所があることも心強い。

シーズンには多くの人でにぎわう「田川市市民プール」。流れるプール、スライダー、巨大バケツ、カメさんプールなど、家族みんなで楽しめる人気スポット。

高台にある「田川中央公園」。すべり台やトランポリンなどの大型遊具を完備しているほか、イチョウの木やサクラの花などを楽しむことができる。

田川市立図書館2階にある「デジタルラボとしょも」は、ものづくりやアートを体感できる施設(利用には事前予約が必要)。

子育て支援センター、田川市立中央保育所、田川市立幼稚園が統合された多機能施設たがわこどもセンター『まいまい』。

親子で気軽に利用できる「子育て支援センター」。絵本の読み聞かせ会などのイベントをはじめ、子育て相談などを通じてパパママの不安をサポートしてくれる場でもある。

 

子どもの夢の実現を後押しする教育体制を整備

 田川市が取り組んでいるのが、小学1年生から中学3年生までの9年間のスパンで捉えた切れ目のない教育プランだ。「自分のよさや特性を生かし、自立し、進んで社会参画する子ども」の育成を目指している。2016年から行政と学校現場が一体となって学力向上のための教育改革に着手していて、標準学力調査の結果では年々学力が向上している。

 小学校入学時には1人に1台タブレットを支給し、早い段階でICTに触れられる。徹底反復学習などで目標値を設定することで自身の成長を実感できる指導法や、青山学院大学との連携による外国語教育の推進など、独自の施策を進めるなかで、「県内外から視察に来ていただくことも多いんです」(教育委員会の青木課長)と、全国的にも注目を集め始めている。

 田川市内に7校あった中学校は統合され、今年4月に田川東中学校と田川西中学校の2校を新設。

 「田川市の教育をさらにステップアップさせるチャンスだと捉えています」

 とは、田川東中学校の佐藤校長。教職員の力はもちろん、外部講師や地元の大学などと連携しながら学校という枠を超えた教育によって、「テストで高得点を取ることだけではなく、それぞれの個性や長所を伸ばし、自信を育む教育をしていきたいです」と佐藤校長。社会で活躍できる人材を育成しながら、子どもたち一人ひとりの夢をかなえるための教育を目指している。

 「田川の人は地元が大好きです。地元の祭りもとっても盛り上がるんですよ!」

 と田川市の暮らしの楽しさも教えてくれた佐藤校長と青木課長。地域への情熱が教育体制にも注がれ、田川市で育つ子どもたちの環境はますます豊かになっていくことだろう。

新設された田川東中学校。完成後の内覧会には900人もの見学者が訪れたそうで、地域の人の注目度の高さも感じられる。

各教室に電子黒板を完備。デジタル教科書などを取り入れた教育のDX化によって地方教育のデメリットを払拭し、子どもの可能性を広げる。

図書館を囲むように教室が配置された田川東中学校の内部。木の温かみが感じられる空間でのびのびと学習に励むことができる。

小学校入学時には1人に1台タブレットを支給。小中学校9年間を通して、着実にステップアップできるカリキュラムを整えている。

「保護者や地域の皆さんを巻き込みながら、学校のファンを増やしていきたい!」と、今後の抱負を語ってくれた田川市教育委員会の青木課長(左)と、田川東中学校の佐藤校長(右)。

田川市内のもう1つの中学校、「田川西中学校」の全校生徒は約500人。校区の教育理念「自立・共生・創造」の実現に向け、地域と連携しながら子どもたちを育成する。

 

スゴイ! 田川市の子育て支援

➀総額10万8000円! 「田川市子育てクーポン券」
0歳児4万8000円、1歳児3万6000円、2歳児2万4000円を支給。年度途中の転入であっても受け取ることができ、転入手続きなどの際に市役所で受け取れるので、申請手続きは不要。写真館、ベビー用品店、ドラッグストア、スーパーなど、使えるお店も増加中。

こんなお店で使えます!

  • くすりのコーエイ
  • アートスタジオすぎやま
  • オモチャハウスなかしま
  • 西松屋
  • ドラッグコスモス
  • ミスターマックス
  • 萬平浪漫 ほか全79店舗(2023年3月時点)

おむつ、粉ミルク、離乳食、衣類など、子育てに関する用品購入に使えるほか、写真館や美容院など利用できる店舗が増加中。

 

②0~5歳の保育料が完全無料。さらに3~5歳の副食費も無償化!
世帯所得や子どもの年齢に関係なく、保育料が完全無料。3~5歳の副食費(給食のおかずやおやつ代)も無償化を実現。全国的にも先駆けた取り組みで、子育て世代移住のきっかけにつながっている。

③一時保育でパパママを応援。仕事と子育ての両立をかなえる
仕事だけでなく、資格取得、病気、出産時や育児のリフレッシュなどの際にも、一時的に子ども(0歳~就学前)を市内2カ所の保育所で預かってもらえる(4時間以内1000円、4時間を超える場合は2000円/1カ月の利用上限あり)。

④頼れる子育て支援施設がたくさん。まち全体で子育てをサポート
たがわこどもセンター『まいまい』にある田川市子育て支援センターや、田川市ファミリーサポートセンター、そだちの森など、子育て支援施設が点在。子育ての悩み相談や、親同士のネットワークを広げる場としても活用できる。

まだある! 田川市の子育て支援

  • 乳児家庭に助産師や保健師が全戸訪問
  • 母乳育児相談
  • 産後ケア事業
  • 病児病後児保育無料
  • 定期健診( 4カ月、8カ月、1歳6カ月、3歳児)
  • 親子ふれあい教室(発達相談)
  • いっぽ講座(第1子の子育て講座)
  • 中学校卒業まで医療費無料

 

田川市 移住支援情報
田川で働き、田川に定住! 子育てと仕事の両立を支援

市内に定住し、市内の事業所に就職するなど、要件を満たした場合に支援金を交付。また、空き店舗を活用し新規開業を目指す企業や個人には補助金を交付する。ほかにも、移住・定住等住まい助成や、田川市内の施工業者を活用した住宅リフォームに対する住宅改修工事補助など、田川市で働きながら子育てする世帯を応援する制度が充実。

問い合わせ/経営企画課 
☎0947-85-7101(直通)✉kikaku@lg.city.tagawa.fukuoka.jp
田川市移住定住ポータルサイト https://www.joho.tagawa.fukuoka.jp/ijuu/

田川市の情報は、移住定住ポータルサイトをチェック!

子育てを楽しみながら「ちょうどいいまち」で暮らしませんか?
田川市総務部地方創生統括監 千々松(ちぢまつ) 裕治さん

 

文/黒木ゆか 写真/衛藤フミオ 
写真提供/田川市、田川市子育て支援センター

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