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田舎暮らしの本 12月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 12月号

11月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

日本プロ野球選手会から始まった「たすかる一歩プロジェクト」とは?“助かる”を考えると“助ける”が生まれる!|防災・災害の意識を高めよう

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日本プロ野球選手会が発案した支援プロジェクト

 きっかけは、野球普及だけでなく、社会貢献活動も積極的に行う、現役日本人プロ野球選手の集まりである一般社団法人日本プロ野球選手会が、災害が起きた際の支援金の寄付だけでなく、もう一歩進んだ取り組みができないかという想いから、災害時の初動に特化した公益社団法人シビックフォースと連携し「選手会ファンド」を立ち上げたことに端を発します。

 選手メッセージなどの伝えるチカラを“その日の備え”に生かすような活動として、現役選手による啓発メッセージ映像の作成や選手愛用グッズを出品したオークションなどの資金で同団体を支援。そして両者は野球イベントと防災啓発を組み合わせたイベント「みんなDE防災」も企画しています。

 秋田県大館市(おおだてし)で行われたそのイベントでは、自然エネルギーで発電し、トラックなどで被災地に移動可能なコンテナ収納移動型電源ユニットのN³(エヌキューブ)を開発したNTN株式会社が出展協力しています。都心でも同様な展示を実施し、さらにさまざまな分野で災害有事に備える意識を高めていこうと考える有志団体を集めて、急遽シンポジウムも実現することになったとのことです。

停電時の携帯電話大量同時充電も可能。移動型自然エネルギー発電機N³(エヌキューブ)登場


自然エネルギーで発電するN³(エヌキューブ)は、非常時に救援本部や授乳室など、プライベート空間としても機能します。

 会場となったのは東京・代官山にあるT―SITE。蔦屋書店を中心に、カフェなどの商業施設でにぎわうエリアの、書店の入り口脇にひときわ目を引くコンテナが早朝に出現しました。

 コンテナ備え付けの太陽光パネルと風車を展開し、さっそく発電を開始。事前告知で展示を知って来訪した行政の防災担当者だけでなく、一般客も足を止め、支援物資や、自然エネルギーで充電する電動キックボードなどが搭載されたコンテナ内部を興味深くのぞき込んでいました。

 災害時にどこでも駆け付けられる発電機であることを知った方からは、「これ、どうやって運ぶの?」「携帯電話は同時に何台充電できますか?」といった質問も。スタッフの方に聞いたところ、展示のコンテナは小さめの10フィートサイズ。普通免許で運転できるトラックに搭載可能なサイズから、さらに大きなコンテナにも応用でき、太陽光や風によって起きる電気の蓄電量もカスタマイズ可能とのこと。さらにはベースがコンテナとは思えない形状に改造でき、電源不要のワーケーション用のオフィスとしても活用できるそうです。


展示当日は一般来訪客にも充電ステーションとして開放。晴天時の太陽光、曇天時の風力によって生まれたエネルギーは蓄電池によって、天候に関係なく供給されます。

 現在は、赤ちゃんのミルクなど温度管理が必要な非常用物資も備蓄・供給できる防災倉庫としての活用、また静岡県吉田町(よしだちょう)では津波に備えるための水防センターへの設置や、普段は空調や自動販売機に電力を供給できるバス待合所として活用しながら、有事には住民に電力を供給するスペースとして活用するモデルが設置されているということです。


自販機や電動キックボードなどへの電力供給は、災害時だけでなく平時の観光利用も期待されます。

 防災施設は使われない方がいいには決まっていますが、お守りのようにそこに置いてあるものに、予算はかけにくい現実もあるなかで、平時の使い道が、命を救う施設を増やしていくキーワードになります。現在も電動キックボードのライドシェアサービスの企業との連携が進んでいて、観光案内所兼電動キックボードの充電・レンタルステーションへの展開も構想されており、平時はキックボードで街を散策し、有事は担いでも移動できる救助隊員の移動手段にもなる。こうしたことが、災害大国が観光立国になっていくための知恵だと感じさせられました。

カスタマイズ事例である静岡県吉田町のバス待合所。コンテナゆえの改造しやすさで平時へのさまざまな用途も広がるハイブリッドな施設です。
カスタマイズ事例である静岡県吉田町のバス待合所。コンテナゆえの改造しやすさで平時の用途もさまざまに広がるハイブリッドな施設です。

 さらにはこの技術を応用した、トイレモデルもあり、観光地など電気や水道のインフラに乏しい場所でも、循環型エコトイレによって、水を運ぶ、掃除をするなどの手間をかけず、またパウダールームも備えた清潔なトイレとしての機能を実現。女性にとっては深刻な外出時のトイレ問題にも対応することが可能となりました。実際、花火大会などのイベントでは、「花火は見たいけど、トイレが……」と仮設トイレにストレスを感じ、二の足を踏むという女性の声も少なくありません。観光地やイベント会場では特に、“トイレなんてありさえすればいい”という発想を変えていかなければならないのです。このトイレの設備に関しては、すでに三重県桑名市(くわなし)の多度山上公園などに設置されています。側面にサイネージを取り付けることもできるため、観光案内だけでなく、付近の店舗情報やクーポンも表示可能。リピーターを増やすトイレとして期待に応えているとのことです。こちらも有事被災地への移動が可能とのことでした。

インフラのない三重県桑名市の多度山上公園に設置のエコトイレモデル。水の運搬不要、メンテナンスの手間も激減。かつ清潔さでリピーター獲得に貢献。
インフラのない三重県桑名市の多度山上公園に設置のエコトイレモデル。水の運搬不要、メンテナンスの手間も激減。かつ清潔さでリピーター獲得に貢献。

 ↓↓ 次ページ「シンポジウムを通じて、“たすかる一歩”へ知恵を結集」 ↓↓ 

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