長野県佐久穂町に教育移住した木田拓也さん一家。経験ゼロから「リエゾンプロジェクト」に参加し、ベーカリーをオープン。現在は「安心素材を使った焼きたてパン屋さん」として知名度が上がり、客足が絶えない人気店となっている。
家族でパン屋を開きたい5日の研修で開業を決意
10月の取材時、ハロウィンの衣装でお出迎え。右上から時計回りに木田拓也さん、次女陽奈(はるな)ちゃん、長女莉央奈(りおな)ちゃん、三女瑛麻(えま)ちゃん、妻の友美(ゆみ)さん。
八ヶ岳に抱かれたのどかな田園風景が広がる長野県佐久穂町(さくほまち)。小海線八千穂駅のはす向かいに立つベーカリーがオープンすると同時に、次々とお客さんがやってきた。店内には焼きたてパンの芳香が漂い、「バタール焼きたてです」のかけ声にお客さんのトングを持つ手が伸びる。
この小さなパン屋の名は「タミーベーカリー」。店主の木田拓也さんは株式会社おかやま工房のパン屋開業支援事業「リエゾンプロジェクト」に参加し、パンづくり未経験から開業した。
木田さんは富山県高岡市出身。財務系コンサルタントとして独立し、長女が小学校へ入学する2020年3月に佐久穂町へ教育移住した。しかし、コロナ禍で仕事が半減してしまう。
「そのとき実感したのは、コンサルは他人のビジネスありきの仕事であるということ。それで自分で何かを生み出す仕事をしたいと考えるようになりました」
当時の木田さん一家の楽しみはパン屋さん巡り。コロナ禍でもパン屋は賑わっており、パンを選ぶ人びとは楽しげだった。
「家族でパン屋を経営している姿を想像したら、楽しく幸せなイメージが浮かびました。当時、町内にパン屋はなかったので、地元にも貢献できるかなと」
築90年の元店舗物件をリノベーション。扉を開けるとバターと小麦のおいしそうな香りが。約30種類のパンを製造販売。
ポップなどの展示のアイデアは、「町の繁盛パン屋ネットワーク」でもシェア。「ベーカリー同士、横のつながりがあると励みになります」と木田さん。
店名「タミーベーカリー」の由来は、拓也さんと友美さんの母の名前が偶然同じ「たみこ」さんだったことから。
ネット検索し、見つけたのがリエゾンプロジェクトだった。
「うちは子どもがまだ小さいので、国産小麦を使った安全安心な無添加生地であるということに魅力を感じました。それから『5日間の研修でパン屋を開業できる』とあったので、それなら自分にもできるのではないかと」
木田さん夫妻は別々に5日間研修を受け、「やっていけそう」と意見が一致。地元の人から物件を紹介してもらい、おかやま工房社長の河上祐隆さんに物件の調査を依頼。社長自ら視察に訪れた。
「幹線道路から少し離れた住宅街で、社長もいいねとおっしゃいました。契約はそれからです。じつは、リエゾンプロジェクトでは5日間で経営と製パン技術のノウハウを教えてもらい、それから物件と店舗レイアウトを決めて最後に契約という流れなんです。つまり研修を受けてから開業するかどうかを決めていい。契約を急ぐ業者が多いなか受講者に寄り添った考え方をしてくれる会社だと思いました」
開業から2年。地元を中心に常連客が増え、リエゾンプロジェクトのサポートを利用してパンのバラエティも増えてきた。
「焼きたてパンがこんなにおいしいなんて知らなかった」と、毎日のように近所のお年寄りも来店する。それはまさに、リエゾンプロジェクトの理念でもある。
「まちのパン屋が減少傾向にあるなか、焼きたてパンを食べたことがない人も地方にはいます。『窯から出したばかりのパンが近所で買える』という喜びを、開業支援によって増やしていきたいのです」(河上さん)
人気ランキング上位のパン。地元の酒蔵とコラボした「甘酒メロンパン」や特産の信州サーモンを使ったパニーニなども人気。どちらも商品開発はリエゾンプロジェクトに依頼した。
株式会社おかやま工房の河上社長からクロワッサン成形の指導を受ける木田さん。少しの工夫で見栄えがぐんとアップする。
家庭用コンセントで使えるベーカリー機器は、おかやま工房がメーカーと共同開発したもの。小型だがこまめに焼くことで、いつも焼きたてパンが店頭に並ぶ。
学校が休みの日、子どもたちは販売のお手伝い。
TUMMY BAKERY タミーベーカリー
☎0267-78-3279 ●住所/長野県南佐久郡佐久穂町穂積1431-1 ●営業時間/11:00~16:00
●休業日/木・日曜、祝日 ●交通/小海線八千穂駅よりすぐ ●Instagram/@tummy_bakery
↓↓ 次ページでは、「5日間でパン屋になれる!」研修内容をご紹介! ↓↓
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする