東出昌大はなぜ、一人で俳優活動を続けるのか
――話は変わりますが、映画『WILL』にもたびたび出てくる東出さんの愛車、プリウスですよね? こう言うのも失礼ですが、かなりオンボロで……。あれ、大丈夫ですか?
「いやいや。走行距離は11万㎞ぐらいなので、まだまだ全然走ると思いますよ。見た目がね、ちょっと悪いですけど。でも、車は中身なので(笑)」
――そういうことも含めて、今の日本では相当珍しい俳優さんですよね(笑)。今後も今の形で、つまりマネージャーや代理人をつけたりせず、一人でやっていくとおっしゃっていますが、本当に大丈夫なんですか?
「今は誰かと組むことは、まったく考えてないですね。たとえば仕事のオファーが来て台本をもらったとしても、自分ではなく誰かがそれを読んで、僕のところに来る前に『面白くない』と切り捨てちゃったりするのはもったいない。スケジュールに関しても、『僕のスケジュール、いついつは空いてますか?』って、以前はいちいちマネージャーに聞いていたんですけど、それが結構ストレスだったんです。自分の知らないところで、いろいろ決まっていくことが。それにバディを組むと、しっかり働いて稼がないと、みんなが食えなくなるでしょ。そうすると、休むというのが悪いことかのような強迫観念に囚われてしまう。一人だと、そういうことがないので」
――じゃあ、一人体制が完全に成立してるんですね?
「いや、正直に言うと実は成立してないんですけどね。まだ、他力本願な部分も多くて。請求書なんかは、いろんな人に作ってもらってます(笑)」
――あー、確かに請求書作りはめんどくさい。それはしょうがないかも(笑)。
不躾な質問に対しても嫌な顔ひとつせず、真剣に考えて言葉をひとつひとつ紡ぎ出す東出昌大。多くの人が魅了される、その人間性の一端が垣間見られたロングインタビューだった。
類稀なる行動力によって、自分にとっての理想の暮らし、生き方を追求し続ける彼の“田舎暮らし”。今後もいろいろなエピソードが生み出されていくのだろう。
東出昌大主演 ドキュメンタリー映画『WILL』
©2024 SPACE SHOWER FILMS
俳優・東出昌大は猟銃を持ち、山へ向かった。電気も水道もない状態での暮らし。狩猟で獲った鹿やイノシシを食べ、地元の人々と触れ合う日々は、彼に何をもたらしたのか――。
残酷すぎる世界で生きる意志(WILL)を呼び起こす、魂の140分。
『WILL』
出演:東出昌大
服部文祥、阿部達也、石川竜一、GOMA、コムアイ、森達也
音楽・出演:MOROHA
監督・撮影・編集:エリザベス宮地
プロデューサー:高根順次
2024年|日本|カラー|ビスタ|140分|DCP|映倫審査区分:G
製作・配給・宣伝: SPACE SHOWER FILMS
公式HP:https://will-film.com/
公式X:@WILL_movie0216
撮影:大村聡志 取材・文:佐藤誠二朗
この記事の画像一覧
この記事のタグ
この記事を書いた人
佐藤誠二朗
さとう せいじろう <編集者/ライター、コラムニスト> ●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000~2009年は「smart」編集長を務める。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』(集英社)はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。その他、『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物も多数。最新作『山の家のスローバラード 東京⇄山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』(百年舎)が好評発売中。
Twitter:@satoseijiro
Instagram:@satoseijiro
Website:https://www.satoseijiro.com/
田舎暮らしの記事をシェアする