スラリとした長身に甘いマスク、その華やかな存在感で、デビューから40年以上も第一線で活躍を続ける俳優の村上弘明さん。
10年前、長崎県佐世保市に別荘を建て、家族との時間を楽しんでいます。精神的、肉体的にも過酷な俳優業の合間、自然との触れ合いのなかで思うこととは? 村上さんに聞きました。
掲載:2020年10月号(※年齢および内容は本誌掲載当時のものです)
義母の暮らす佐世保に建てた、山中の別荘
「せっかく別荘を建てるなら景色のいいところで、休みには自然のなかでリラックスしたい、ずっとそんなふうに思っていました。ここはデッキから平戸の先まで見通せ、奥に夕日が沈みます。夕日を見るためにあるような場所なんです」
俳優の村上弘明さん(63歳)が長崎県佐世保市に別荘を構えたのは2010年。奥さまである都(みやこ)さん(52歳)のお母さまが近くに住んでいたこと、毎年5月に開催される陶器市に通い続けて街をよく知っていたことなどが決め手になった。
「市内から車でずっと山を上り、トンネルをくぐったところにあるので、日常から異空間へ入るよう。夏でもクーラーはいらないし、夜は毛布をきちんとかけないと寒いくらい。買い物で街へ出て猛暑に驚いて、それで山へ上がると27〜28℃とか。季節が違う、そんな感じで」
湿気がひどいから高床式にしよう、自然になじむよう木造で。知り合いだった地元の大工さんに頼み、理想の家を現実のものにしていった。室内の階段脇に滑り台をつくり、消防隊のように2階から棒を伝って下りられるようにした。小さかった子ども向けに遊びの要素を入れ、見晴らしのいい浴室から広いデッキに出られるようにするなど、基本的な設計は都さんの担当。
「涼しいからヤブ蚊も少なく、夏はデッキでバーベキューをするといいんです。大工さんに可動式の、木造の浴槽をつくってもらって。デッキでお風呂にも入れます、露天風呂ですね」
陶器市目当ての5月と夏休み、そして冬と年3回ほど利用する。
「別荘を持つときは四季を通じて気候や環境に問題が生じないかを見なきゃいけないですよね。本当のところは住んでみないとわからないけど、その点ウチはお義母さんに聞けばよく、留守中の管理もお任せして。いずれもクリアできて助かってます」
川遊び、陶芸、乗馬で別荘ライフを楽しむ
「僕もカミさんも田舎で生まれ育ちました。都会に出て、失って改めて、自然の美しさやそのなかで過ごす心地よさに気づいたんです。だからこそ、子どもにも自然を感じてもらいたくて」
16歳から27歳までの男女2人ずつ、4人の子どもも別荘での生活がお気に入り。周辺の山を散策したり海水浴場へ車で出かけたりして自然を満喫する。
「車で5分のところに川もあって、岩の上からジャンプできるんです。僕も海育ちですから子どものころはそうした遊びをしましたが、その岩場は怖くて。でも子どもたちは平気で、どんどん飛び込んでました。いつ大きな岩が流れてくるかわからないから、ちゃんと水中メガネで飛び込む先を確認してからやらないとダメだぞ、と教えて。水がキレイで、冷たくてね」
村上さん自身は朝や夕方に周辺をジョギングするのが日課。
「道すがら〝いらしてたんですか!〞などと地域の人たちから声をかけられます。子どもと陶芸もやりますよ。知り合いの陶芸家のところで作陶させてもらうと、土に触れて気持ちが穏やかになり、無心になれるのがいい。それから僕と長女は馬が好きで、乗馬もします。おじいちゃんが1人でやっている手づくり感ある馬場ですが、海外の大きなレースに出場するような騎手が何人か出ているんです。そこのおじいちゃんが80代なんですけどシャキッとしていて、どこか凛とした感じでね」
かなりアクティブな別荘ライフのよう。また木だけで3000種類も知っている、自然に詳しいご近所さんとも知り合いになり、泊まりがけで九州各地を
訪れて里山遊びを楽しむことも。
「子どもも連れて一緒に山へ入り、〝あの鳴き声はオオルリ〞などと教えてもらったりして、自然教室みたい。夜はお酒を飲みながら、いろいろと語り合うのもいい。ふだん東京でそんな余裕はないし、そうしたことを味わう感性も働かない。やっぱり人間ってのは気候や環境に影響されるんだなと。そんなことを感じるのも面白いし、自然との触れ合いというのは人間に欠かせないものだと実感しますよね」
(後編につづく)
むらかみ・ひろあき●1956年生まれ、岩手県陸前高田市出身。1979年『もう頬づえはつかない』で映画デビュー。NHK大河ドラマ『春の波涛』『武田信玄』『炎立つ』『秀吉』『元禄繚乱』『八重の桜』ほか、『必殺仕事人Ⅴ』シリーズ、『柳生十兵衛七番勝負』シリーズなど、出演作多数。
文/浅見祥子 写真/樋渡新一
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