田舎で自給自足的暮らしをするなら、ヒツジやウマなどの生活に役立つ生き物を飼ってみたい。そのためにはどんな物件を選べばいいか? どれくらいの広さの土地が必要か? エサや飼育にかかる費用は? 注意することは? みんなが気になる動物の飼い方を教えます。
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ヒツジを飼うことは手芸家の夢
ヒツジは性格がおとなしく、とても扱いやすい動物。群れで行動する習性が強いので、2頭以上の複数飼いがオススメです。除草に役立ち、上質な羊毛は毛糸を紡いだり、フェルトに加工したりして利用できます。
| 群れる習性があり臆病なため、複数飼いが理想的
ヒツジは、ヤギと同じく草を主食とする草食動物。放牧だけでエサを賄おうと考えた場合、青草の生えるシーズンで1頭当たり150坪(約495㎡)程度の放牧地が必要です。倍の広さがあれば、冬の間の乾草も確保できます。市販の粗飼料を利用すれば、そこまで広い面積はなくてもOK。100坪程度の放牧地があれば問題なく飼えるでしょう。
小屋の広さは1頭当たり1坪が目安。雨が吹き込まないように3面を壁で囲い、床にはワラなどを敷いておくのがベター。小屋のまわりを高さ1mほどの柵で囲って、柵内を自由に動けるようにしておくのが理想。
除草や荒れ地の再生にも役に立つヒツジ。イギリスでは「黄金の蹄(ひづめ)を持つ家畜」といわれ、蹄耕法(ていこうほう)という草地の造成法が古くから行われています。ヒツジに雑草を食べさせた後、牧草の種を蒔いて再び放牧すると、蹄で地面を踏んで種を定着させ、フンが土地を肥やす。そうやって山林や原野を牧草地にすることができるのです。
草丈15㎝以下の短い草を好み、長く伸びた草はあまり食べません。リードをつけて杭につないでおけば、動ける範囲をきれいに除草してくれます。
性格はおとなしく、従順で人間にもよくなつきますが、臆病なので、日常のなかで驚くことや暴力的な行為があると警戒心が強くなり、扱いにくくなることも。そのため、飼育には騒音のない静かな環境が求められます。また、非常に群れたがる習性があり、1頭だとストレスを受けるので、できれば2頭以上で飼育するのが理想的。何か要求や不満があると鳴きますが、ヤギほどうるさくはないです。
モコモコの毛で覆われていることから想像できるように、寒さには非常に強く、一方で暑さや湿気は苦手。ヒツジが快適に過ごせる温度は10〜20度で、28度以上になると呼吸が浅くなり、飲水量が増加します。近年の猛暑を考えると、温暖な地域より、夏でも比較的涼しい冷涼地が飼育には向いているでしょう。
ヒツジのコットン(4歳♀・雑種)と飼い主の藤田陽子さん。古い牛舎をセルフリフォームした自宅に暮らし、犬、猫、ニワトリも飼っています。環境教育活動にも積極的。
| ヒツジの毛刈りはどうする?
ヒツジは、多くの動物のように自然に毛が抜けて生え替わったりしないため、人の手で刈ってやらないといけません。通常、毛刈りは年1回春に行いますが、2カ月程度でかなり伸びるため、藤田さんは猛暑対策として夏にもう1回刈っています。
毛刈りには専用のバリカン、またはハサミを使います。慣れないうちは一度にすべて刈ろうとせず、ヒツジが疲れたら一度休んで、時間をおいて再度刈るようにすれば、お互いストレスが少なくなります。刈り取った羊毛は毛糸を紡いだり、フェルトに加工したりして利用でき、空気をいっぱい含んでいるため断熱材としても有用。すぐに利用しない場合、羊毛は保管することができます。汚れた部分を取り除いて、湿気の少ない場所で保管しましょう。
毛刈りには専用のバリカン、またはハサミを使います。写真は毛刈りバサミ。
すぐに利用しない場合、羊毛は保管することができます。
羊毛の繊維を整えたり、紡いで糸にしたり、フェルトに加工したりするための道具。
ヒツジ飼育DATA
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