「田舎もん」が夢見る高知での田舎暮らし
話に聞き入ってしまい、田舎暮らしの話を聞かなくては!と焦る。奥田さんと田舎、そこに接点が?とも思うが、「興味あるよ、だって田舎もんだもの」とケロッと答えが返ってきた。
「生まれは愛知県と岐阜県の間で。今でも姉弟は愛知県瀬戸市に住んでいるけど、戦後は進駐軍の基地があったりして。チューインガムチューインガム!なんてやっていた。一般的にまだ家庭に冷蔵庫のない時代で、親は駅前で氷屋を営んでいました。冷蔵庫が大きいから、氷と一緒に牛乳を運ぶ牛乳屋でもあって。少年時代は休みになると、車で20分くらいのところにある、おじいちゃんおばあちゃんが暮らす茅葺きの家に遊びに行った。イノシシも出るし、マムシなんかしょっちゅう、そんな環境でしたよ」
するといつかは自然に囲まれた環境に、などと終の棲家について考えるのだろうか。
「8年ほど前、縁あって富山にアトリエをつくろうと思い、大黒柱があるような古民家を何軒か見に行きました。それでまずは市内のマンションにしよう。さあ改装だ!というとき、かみさんがど〜にも賛成してくれなくて。私に内緒で話を進めてしまって!って(笑)。20年ほど前には京都の有名なお寺の近くに一軒家を借りようと手付けを打ったら、それもかみさんにバレて……。全部内緒なんです、僕の人生(笑)。初めて映画監督をやったときもそう。内緒にするつもりはないんだけど、事後承諾になってしまう」
何事も、猪突猛進であるらしい。そうして映画監督にも挑戦。そんな父親の影響か、長女の安藤桃子さんは映画監督に、次女の安藤サクラさんは俳優に。それぞれが大成している。
「それで田舎暮らしの話だよね。東京に拒否反応はないけど、渋谷の交差点なんかを見ると、ううむ……と思ってしまって。それならいわゆる里山に一人で住んだら? 夫婦なら?と考えたりします。車の免許はないけど、〝明日街に出るんだけど連れていってくれる?〞と近所の人にお願いすれば行ってくれるかなとか。長女の移住先である高知のことはよく知っているから、第一候補かも。海より、山のほうがいい。昔は仕事が終わったら外へ飲みに行ったけど、今は近所の商店街の飲み屋にしか行きません。歩いて帰れるところだけ。里山暮らしでも、そういう店がほしいかも。焼酎も日本酒もおいしく、ジビエがあって、野菜もめちゃくちゃおいしい。そんなカウンターのある店に月2回くらい行ければ。あとは古民家に暮らし、火事にならないようIHに替えて……。そんなことを考えたりもしますね」
『かくしごと』
(配給:ハピネットファントム・スタジオ)
●脚本・監督:関根光才 ●原作:北國浩二『噓』(PHP文芸文庫刊) ●出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向芳、木竜麻生、和田聰宏、丸山智己、河井青葉、安藤政信、奥田瑛二 ほか ●TOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほかにて全国公開中
絵本作家の千紗子(杏)は、認知症を発症した父、孝蔵(奥田瑛二)の暮らす山里の家へ。「しばらくの間」と世話をするも、父は自分のことも忘れている。旧友の久江(佐津川愛美)とも居酒屋で再会するが、その帰り道、久江が運転する車で、少年(中須翔真)をはねてしまう。千紗子は記憶を失っていた少年に自分が母親だと噓をつき、「拓未」と名付けて父と3人で暮らす。そこに、少年の父親(安藤政信)が現れる。
©2024「かくしごと」製作委員会
https://happinet-phantom.com/kakushigoto/
文/浅見祥子 写真/鈴木千佳 ヘアメイク/田中・エネルギー・けん
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする