映画『空の港のありがとう』は、空港で働くスタッフのリアルな日常と、そこに潜む人間ドラマを描いた作品。新型コロナによって深刻な打撃を受けた成田空港を再び盛りあげるために、「成田空港地域映画製作委員会」によって製作されました。田舎暮らしの本 Webでは、この映画で主演を務めた清水美砂さんと、この作品が映画デビューとなった20歳の片岡凛さん、さらに成田空港の代表取締役社長である田村明比古さんにインタビューを敢行。作品が生まれた背景や、映画で地域を創生する思い、さらに“田舎暮らしへの憧れ”などを伺いました。
『空の港のありがとう』 成田空港のグランドハンドリング(地上)勤務の女性を主人公に、空港で勤務する人間の「おもてなしの心」と家族愛を描いた短編映画。地域活性化を目的とした吉本興業の「地域発信型映画プロジェクト」と地元の有志がタッグを組んで製作している。 監督・脚本は、『おっさんずラブ』(テレビ朝日)などで知られる、地元千葉県成田市出身のYuki Saitoが担当。米国アカデミー賞公認の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2024『BRANDED SHORTS』」では、第13回観光映像大賞を受賞した。今後はANAやJALなどの機内で上映されることを予定している。 |
『空の港のありがとう』公開記念スペシャルインタビュー
地域発信型映画「空の港のありがとう」に出演している清水美砂さん(中央)と片岡凜さん(右)。成田国際空港株式会社[NAA]の代表取締役・田村明比古社長(左)
地域発信型映画『空の港のありがとう』の見どころ
――本作は、米国アカデミー賞公認の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2024『BRANDED SHORTS』」で第13回観光映像大賞を受賞するなど、高い評価を受けています。まずは、この作品の見どころについて教えてください。
清水 この映画は、成田空港で働いている人々の「おもてなしの心」の美しさを伝える作品です。また、若い世代が成田というまちの魅力を再発見する過程も描かれていて、身近なところに新たな可能性があることを伝える作品にもなっています。
――観終わった後に、自然と成田空港や成田というまちが好きになるような作品でした。役作りで心掛けたことはありますか?
清水 私はハンドリングスタッフを演じたので、まずはその仕事の特徴を丁寧に伝えることを肝に銘じていました。スタッフの方々が持つ「おもてなしの心」を表現することを意識しましたね。
片岡 私は自分と同じ二十歳の役を演じたので、この年齢ならではの将来に対する不安や葛藤を繊細に表現しようと思いました。また、ラストシーンでは、母親としてではなく、一人の人間として母への尊敬が生まれたことを表情などで表現しようと心掛けました。
――片岡さんはこの作品が映画デビュー作とのことですが、清水さんは共演して片岡さんをどう感じましたか?
清水 本当に感情豊かで繊細な、素晴らしい女優さんだと思います。ラストシーンで美空(片岡)が「ありがとう」と叫ぶんですけど、あのシーンは台本では泣く予定ではなかったんですよ。でも、感情が溢れて涙を流されたのに、私も感動しました。
片岡 あのシーンは清水さんの母親としての温かな感情がストレートに伝わってきて、本当は泣く予定ではなかったんですけど、思わず泣いてしまいました。
清水 こんな素敵な女優さんと共演できて私も幸せでしたし、映画デビュー作とは思えないくらい完成されています。将来絶対に大きくなる人だと思うので、あとは突っ走ってほしいです。
――田村さんは、お二人の演技を見てどのような感想を抱きましたか?
田村 清水さんは、本当に我々の空港で働いているのではないかと思うほど自然に演じられているのが、印象的でした。空港スタッフはこの国の第一印象を決める重要な役割を果たしていますが、それが演技から感じ取れると思います。
また片岡さんは、空港で働く母親の姿を見て、自分の将来を見直したり地元の魅力を再認識したりする変化を見事に演じられていました。お二人の親子関係が本当に素晴らしかったと思います。
映画で地域を盛り上げることへの思い
――改めて、この映画が生まれた背景についても教えてください。本作は「成田空港の人手不足を解消する」ためにつくられたと伺っていますが。
田村 成田空港は、空港の中が1つのまちのような規模になっていて、コロナの前までは4万3千人が働いていました。しかし、コロナの影響でその数が3万6千人まで減少し、現在は少し回復して4万人くらいになりました。
――まだコロナ前の人員数まで戻っていないのですね。
田村 ええ。さまざまな自動化や効率化の取り組みも進めていますが、やはりフェイストゥフェイスのおもてなしはロボットにはできません。ですから、そういう接客をできる方々に戻ってきていただきたいという現実的な問題を抱えています。
――片岡さんは、ご自身の出演した映画がそうした空港の人手不足の問題を解決したり、地方創生につながったりすることについては、どのように感じますか?
片岡 女優の仕事をしていても、直接感謝されることって意外と少ないんです。でも、この作品では、「映画をつくってくれてありがとう」と現場で様々な方に声を掛けていただいて、地元の人々と協力しながらつくりあげていく感覚がありました。それが私の中ではすごく大きくて、女優という仕事の素晴らしさに改めて気づくきっかけになりました。
――この映画は「小中高校で見せるようにしてほしい」という地元の声が上がっているようです。本当に地元で愛される作品になりましたね。
清水 成田空港と成田のまちを映画で盛り上げることができたのなら本当に嬉しく思います。そうやって地元から広がり、世界に向けて発信される映画になってほしいですね。これから航空会社の機内でも上映される予定ですし、この映画はまだまだ遠くに羽ばたいていくと思います。
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