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田舎暮らしの本 7月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 7月号

6月3日(月)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

生産性ブルース/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(54)【千葉県八街市】

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 今回のタイトルは生産性ブルース。これだけ見ると、何やら美川憲一、あるいは森進一の歌みたいであるな。しかし、77歳の老人だからといって、懐かしのメロディーでうっとりしましよう、そんなわけではない。畑から見る昨今の世間は何かとかまびすしい。みんな懸命に生きている。生きてはいるが、ボクシングに例えると、相手に向かって懸命に繰り出したパンチが、フックもストレートも、すべて相手のディフェンスでうまくかわされている。のみならず、踏み込んだ体勢の左顔面あたりに返しのパンチをもらったりしている・・・。

 物価、特に食品は相変わらず値上がりを続けている。たしか6月使用分から電気代と都市ガスもかなり高くなるらしい。長期予報では今夏は猛暑。電気代節約のために暑さに耐えるべきか。それとも、えーい、1万、2万、どうということもない、エアコンの効いた部屋で心地よく夏を乗り切るぞ、そう意を決するべきか。それが問題である。僕が今回書こうとしていることは、6月3日に発売された『田舎暮らしの本』」7月号に書いた「自給的農業は究極のサバイバル術だ」、その姉妹編とでも言うべきものである。僕の畑は1500坪。近隣では農家の数がだんだんに減少しているのだが、残っている農家の畑はどこも、少なくとも5000坪、多いところは1万坪近い。そこでの栽培は少品種に特化される。我が家からすぐ近い、僕から見るとうんと若くて働き者のNさんは毎年、トウモロコシ、ブロッコリー、大根、人参、それだけに限定した耕作を続けている。対して僕は、Nさんの5分の1ほどの広さで、大雑把に数えて年間100ほどの野菜を作る。5月末現在、畑にあるのは、生姜、セロリ、ナス、ピーマン、トマト、大根、人参、カブ、ピーナツ、大豆、キュウリ、ゴボウ、ジャガイモ、ニンニク、玉ネギ、ゴーヤ、トウモロコシ、インゲン、エンドウ、カボチャ、メロン、マクワウリ、ソーメンカボチャ、長ネギ、イチゴ、ブロッコリー、カリフラワー、ウド、サトイモ、オクラ、ズッキーニ、ヤーコン、キクイモ、アスパラ、フキ、アシタバ・・・・。読むとくたびれるほどの数だが、くたびれついでに書き足せば、プラム、柿、栗、ジューンベリー、シークワーサー、ポポー、クワ、ブルーベリー、ミカン、キウイという果物があり、ニワトリも飼っている。大規模の「普通の農家」から見れば、これは農家じゃあない、半分は遊びだ、そうなるかもしれない。言うまでもなく、限られた畑でこれだけの品を作るのだから、1品、1品はみな少量である。この上の写真はニワトリに食われないようにブルーネットを掛けた大根だ。ざっと数えて100本。このようにして春と秋に2回ずつ作るので僕の年間収穫の大根は400本ほどになる。対して、先ほど紹介したNさんは千本単位の大根を一気に作る。この例だけでも、専業大農家と「自給的小農家」の違いがおわかりだろう。

 千本単位の大根を抜き取り、洗い、出荷するという作業は想像を絶する。Nさんは毎年1月、機械を使ってマルチを張り、トンネルを掛けて種をまき、5月半ばには一気に収穫するのだが、この栽培法は市場で高値がつく。しかし朝のランニングでその奮闘ぶりを見るにつけ、大変な作業だなあと僕は感心する。ひるがえって、大根のみならず、どの品物もNさんとは一桁違う我が農法、小なりとも、逆にそれなりの苦労がある。山手線のダイヤと言えばわかりやすいか。なんとも出入りが細かいのだ。収穫が終わったAの後にBを植える。同時に、Bの後には何を植えるか、CにしようかDにしようかを考える。連作障害のこと、野菜によって投入する肥料の種類も変わる。そうしたことを念頭におきながらちょこまかとした栽培を続けるのだ。Nさんのような大規模農家には秋の収穫が終わってから正月明けまで農閑期があるが、僕にはない。エンドレスだ。つまり、小農家には小農家ゆえの苦労というものがある。しかし、どうやら、この暮らし方が僕には合っている。世にあるものは何でも経験してみたい。そういう欲張りな性格が理由の第一。それに加えて、自分自身の食生活に視点を置いた場合、少しずつではあるが、日々の食材には困らないという利点が少量多品種という農法からは得られる。

 円安にせよ物価にせよ、年金問題にせよ自然災害にせよ、我々の将来への不安材料は数多い。その不安をどうにかして突破しようじゃないか。突破の手段とは何か。自前の食料と電気と水を作って暮らすことである。生活の基本を自給することで現金出費を抑えられる。じつはメリットはそれだけではない。『田舎暮らしの本』7月号に、僕は医療費がゼロであるとのエピソードを加えた。風邪ひとつ引かず、365日、休みなく働ける。健康自慢をしたかったわけではない。自給生活のためには否応なくカラダを使う。強烈な太陽光にさらされ、冷たい雨にも打たれる。それが人間の免疫力を高め、骨や筋肉、心肺能力を強化する。結果、病気をしないカラダを生む、そのことを強調したかったのだ。食生活もそこに加わるだろう。先ほど、小規模農家はちょこまかと何でも作ると書いたが、それは同時に何でも食べられることをも意味する。つい昨日の3食で僕が口に入れたものは、人参、エンドウ、ニンニク、サツマイモ、ソラマメ、イチゴ、クワ、ジャガイモ、ピーマン、タマネギ、卵だった。これにスーパーでカネを出して買ったパンとチーズと肉と魚が加わって我が日常の食生活が出来上がっている。

 病気を寄せ付けない二本柱は運動と食べ物だ。これに「隠し味」としての自然環境がある。田舎暮らしをする人で部屋にこもってばかりという例はあるまい。外に出る。光があり、風があり。いま現在ならばあふれんばかりの新緑がある。それらは黙っていてもメンタルに好影響を与える。人間にクヨクヨするひまを与えない。かくして、もちろん僕だけでなく、都会から田舎に「引っ込み」、さりとて家にはけして引っ込まず、エネルギッシュに行動する人は誰でも病気を遠ざけることが出来る。大病をするとカネがかかる。のみならず、それまでの日常生活が継続できなくなる。病気せず暮らせるというのは人生を安上がりにしてくれる大いなる土台。

 かつて都会にいて、今は田舎に引っ込んで、その田舎から外を眺めている男の目には、都会は活気と変化と欲望に満ちている。上に書いたように、人々は懸命に働き、労働の場で「たまったモノ」を吐き出し、精神の「収支」を整えるために懸命に遊ぼうとしている。どれをとっても、僕には全く手の届かない豊かさと激しさがそこにある。同時に、我が田舎暮らしにはない圧迫感らしきものもどうやらそこにはあるようだ。以下、モノとしての「生産性は低い」、現金収入も少ない。でも不思議と精神面では不足感がなく、ベッドに入る時のココロはほぼ充足し、目覚めた時のカラダは日々の労働で足腰こそ痛いが、でも軽い・・・そんな田舎暮らしを、自給的生活の日常を、記していく。

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