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田舎暮らしの本 1月号

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田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

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生産性ブルース/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(54)【千葉県八街市】

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 5月31日。「カボチャ栽培にかかる時間は、会社員が月給6回もらう時間に等しい」。

 もう5月も終わりである。雨の朝だ。夜の間の雨量はかなりのものだったことが、昨日の仕事で使った庭のバケツを見るとわかる。気温も低い。暑いのがトコトン好きな僕はヒンヤリした雨の朝は気分のノリにちょっと欠けるが、そんなことは言ってられない、やるべきことがいっぱいある。まずはカボチャのハウスで授粉作業をやる。雌花は8個。開いた花びらの中に雨水がタップリたまっている。花びらの一部を優しくちぎり、水を流してから雄花の花粉をこすりつけてやる。4週間ほど前に咲いた初花はこの下の写真のような大きさの実になっている。完熟まであと1か月。先にトウモロコシの売値は150円と書いたが、カボチャはどうするか。Mサイズ350円、Lサイズ500円くらいで消費者は納得してくれるか。

 カボチャ栽培も長丁場である。1月にポットに種をまいた。夜は部屋の中に電気カーペットを敷き、ガラスケースに並べたポットをそれで保温する。昼間はそのガラスケースを外に出して太陽光に当てる。10センチ余りに育った苗をビニールハウスに植えたのは3月初め。夜はまだ冷えるので、とんがり帽子型のプラスチックのカバーで寒さを防いでやった。ツルが伸びてきたら、重なって絡み合わないよう誘引し、花が咲いたら今日みたいに授粉してやる。雌花は草に巻かれると活力を失うので草取りは頻繁にやる。完熟となるのは授粉から50日以上。つまり、この上の写真のカボチャが食べられるのは7月に入る頃だ。種をまいてから6カ月・・・カボチャ栽培とは、会社員なら6回の月給がもらえる時間に等しいのである。そのカボチャの下の写真はソーメンカボチャ。中が麺状になっている。輪切りにして茹でて、麺を取り出し、暑い日にはよく冷やして食べると美味。

 雨は上がり、さあ晴れるぞ、ソーラーシステムが発電するぞと期待したのだが、期待外れだった。午後から再び小さな雨が落ちて来た。今日はもうダメかもな・・・残念。しかし、雨が多かった3月に比べると今月は大いにグッドである。3月の東電への支払い電気代は5890円だった。そして今日届いたばかりの5月分の請求金額は1215円だ。お日様さえ出てくれるならやっぱり太陽光発電サマサマなのである。エアコンこそないけれど、うちは冷蔵庫だけでも3つある。普通の家庭なら1万数千円から2万円を要しよう。それが1000円ちょっとですむのだから立派なものだ。

 荷物発送を終え、ネギ、セロリ、ゴボウなどの草取りをやる。邪魔するのはブヨである。あいつらは蚊とは比較にならないほどの痛みとわずらわしさをもたらす。目の周辺、あるいは、頭髪が薄くなったてっぺん部分を集中攻撃してくる。うるせえんだよ、オレにちゃんと仕事をさせてくれ。午後6時25分、そろそろアガリとしようか。台所の裏口で、泥水を吸い込んだズボンと靴と靴下を脱ぐのにひと苦労する。僕が雨がキライというのは、このわずらわしさ、そして洗濯物が増えることとも関係あるかもしれない。

 濡れて硬く締まった靴と靴下を苦労して脱ぎ、白くふやけた我が足を見て、唐突に思い出したのは、昨夜テレビで見た美容医療クリニックのことだった。美容医療のクリニックはどんどん増えているという。豊胸、薄毛、二重瞼、肌のくすみ、男ならば脱毛。どうやら美しくなりたいとの願望が世間にはあふれているらしい。男でも日焼け止めクリームを塗り、日傘を差すと聞いてからもうかなり久しい。オレとはだいぶ違うなあ・・・。もちろん、ダイレクトに人と接することがゼロに等しい僕とは違い、世間の人は勤め先などでの交わりがある。自分をきれいに保ちたいとの気持ちは自然だろう。ただ、あまりに受け身の姿勢が強すぎるようにも感じられる。人間、外見より中身だよ、なんてことを言ったらキビシイ視線を浴びるだろうが、百姓暮らしのよさは、なんたって、見てくれを全く気にせず生きられること、それゆえに健康に生きられることだ。

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