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田舎暮らしの本 2月号

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田舎暮らしの本 2月号

1月5日(月)
990円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

生産性ブルース/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(54)【千葉県八街市】

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 6月3日。「円安・物価高。今年の家計負担増は10万円超だという」。

 起床時、雨は止んでいた。空はいくらか明るかった。しかし、いかに激しい昨日の雨であったか、土に埋まったピーナツやネギの姿でわかる。それをひとつずつ、埋まった土の中から救い出すことから今日の仕事は始まる。そしてマクワウリの定植にとりかかる。商品ではあるが、自分で食べたいという願望の方に比重がかかる。35度という暑さの中で、ドバッと汗を流した後に食べるよく冷えたマクワウリは贅沢品だ。包丁で皮をむく僕の足元でニワトリたちが首を長くして待っている。彼女たちも、甘いトロトロの部分、そして種が大好きなのだ。

 マクワウリ、もっと早く植えてやりたかったが場所が出来なかった。昨日、3か所あるソラマメの1か所が収穫終了したのでそこに植えるのだ。ソラマメといえば、ちょっと思い出したこと。スーパーのソラマメ、高いと思ったことはないか? 値段も値段だが、量があまりに少ない。ソラマメは図体が大きい。その図体のわりには中身が少ない。「3粒莢」とうたっている品種でも3粒入っているとは限らない。グリンピースや黒大豆と比べてみると外見と中身の落差が大きいことを長く栽培してきた僕は知っている。そのソラマメ、5月初めのスーパーでは発泡スチロールのトレイに乗ったものが350円。莢数にして10くらい。1莢3粒入っていたとしても30粒。夫婦ふたりだと夫と妻それぞれ15粒。子供ふたりいたならば、1人当たり7か8粒。それじゃ食べた気がしないのじゃないか。でもって僕は、お客さんにはドバッと送る。少なくとも60莢、多い人には80莢。スーパーの金額を当てはめると2000円分。これで利益が出るだろうかと思案する以前、ほんの1か月しか味わえないソラマメだもの、どうせならたらふく堪能してもらいたい。そんな思いで大袋にして送るのだ。僕自身の好みはスープ。人参、ニンニクなどとともに、この下の写真のように、商品にならなかったソラマメを拾い集め、100粒くらいをじっくり煮込んだものが好き。

 マクワウリの定植を終え、ポットまきのナスの分割作業をやり、黒大豆を定植して午後4時半。またもや頭上で雷鳴が響き始めたので畑仕事はそこでアガリとし、しばし大工仕事に励む。濡れては困る品の保管場所を作りたい。ここは頭上にソーラーパネルが設置してある小屋だが、残念ながら強い雨が降ると雨漏りする。雨よけのため大きな箱状のものを作り、厚手のカバーで覆うようにしたい。畑仕事に負けず劣らず、大工仕事にかかる時の僕の心はルンルンとする。ルンルンしながら思い出す。今日、ポストに「あなたの街の便利屋さん」のチラシが入っていたことを。料金表があった。庭木の剪定1本3000円。草刈り1平米200円。建物・物置の解体は坪1万5000円。フローリングの張替えは坪3万円。いずれの項目にも「より」が付いているので、実際はこれよりいくらか高くなるのだろう。その料金表を見て思った。ふだん自分のやっている大工仕事、草刈り、木の剪定などは業者に頼むといくらくらいになるのだろう。野菜栽培それ自体に費やすのとは別に、これらの作業に僕は1日平均3時間くらいかける。時間単位1000円と仮定して、月額で9万円だ。便利屋さんは草刈り1平米200円としているが、僕は半日で50平米くらいやることもある。つまり1万円だ。すごいなあ。全く我が稼ぎの表面には出ないけれど、「何でもやります」の僕は、野菜販売とは別に月に少なくとも10万円分の仕事をしていることになるじゃあないか。

 午後6時半、そろそろアガリとしようか。手早く晩酌のつまみを鍋に仕掛けておいて風呂に飛び込む。風呂から出て、テレビで「クローズアップ現代」を見ながら一番搾りを飲む。つまみは、ソラマメ、マグロのあら煮、タマネギと人参とニンニクと豚肉のカレー味。この上に掲げた写真、1枚目は朝食で、ピーマンとバジルに梅酢をかけ、スクランブルエッグを添えた。2枚目はランチで、売り物にならないチビのジャガイモを茹で、めんたいこドレッシングをかけたもの。今日の3食、よそから買った物と自給の物、その比率は3対7だった。

 今夜の「クローズアップ現代」は、専門家ふたりをまじえ、円安の背景と影響を分析するものだった。食品の値上がりは6月以降、何百種も見込まれ、今年末まで、家計負担の増加は10万円超になるという。円安を別の言葉で表現すると「買う力の低下」になるという。驚いたのは、例えば牛肉。これまで輸入肉は安く、国産肉は高い、それが常識だったが、今ではアメリカ産の牛肉の方が日本産より高くなったらしい。もうひとつ驚いたこと。それは、日本人の1日の賃金でビッグマックは何個買えるか・・・かつては58.5個買えた。しかし今は37.4個しか買えないという。さあ困ったものだ。どうする、アナタは? 今日、『田舎暮らしの本』7月号が書店に出たらしい(僕は町に出ないので、らしい)。僕のブログを読んでくれている読者の女性が、早速買って読みました。中村さんの言う通りです。これからの時代、自分の力で乗り切るしかありませんね・・・そんなメールをくださった。彼女61歳、夫68歳。マンション暮らし。きびしい状況を少しでも打破したいと貸農園を借りて野菜作りに励んでいるそうだ。さらにもう一歩踏み出したい、本格自給の暮らしを実現したい、そんな願望があるそうだ。会ったことはない方だが、僕はひそかに応援したい。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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