山梨県外からの移住を検討している人の間ではそれほど有名な候補地ではないが、県内の他市町村からの移住、特に子育て世帯から熱い視線を集め、人口は緩やかな右肩上がりを継続。そんな昭和町の魅力とは?
掲載:2024年7月号
昭和町河東中島区を流れる山伏川(やんぶしがわ)の両岸およそ600mに植えられた桜並木。遠くに見える富士山と桜のコントラストが美しい。見ごろは例年3月下旬〜4月上旬。
山梨県昭和町(しょうわちょう)
山梨県のほぼ中央、甲府盆地の中心に位置する昭和町。釜無川(かまなしがわ)と笛吹川(ふえふきがわ)の中間にある平坦な地域で、面積は約9.08㎢と県内最小。また、山梨県で唯一「山のないまち」でもある。昭和46年の町制施行時から国勢調査で一度も人口が減少したことがない。令和2年の調査人口は2万909人で、5年前と比べて人口増加率は7.2%。東京から中央自動車道経由で約1時間30分。
生活利便施設の充実と教育への関心の高さ
山梨県甲府盆地のほぼ中央に位置する昭和町。この町には移住に関する相談窓口がなく、補助金などの移住支援施策もほぼ行われていない。それにもかかわらず、人口動態は20年以上にわたって社会・自然の両要素で増え続け、人口推移のデータでは、平成時代より増加率は減ったものの、近年でも毎年1%前後で増え続けている。
その理由を環境経済課の志村優さんは次のように話す。
「主に山梨県内の他市町村から、家を建てるなどのタイミングで転入して来られる方が多いようです。背景にあるのはイオンモールやイトーヨーカドーなど、町内の大型商業施設。コンパクトな町域で移動しやすく、生活の利便性が高いことも理由だと思います」
ショッピングモール「イオンモール甲府昭和」。日用品、グルメ、ファッションなどの専門店のほか、山梨県最大級のシネマや、家族揃って楽しめる「キッズパーク」もある。(写真提供:イオンモール甲府昭和)
また近隣自治体の総合病院へも近いうえ、町内でクリニックを開業する医師も増えているそう。確かに子育て世帯にとって安心して暮らせる要素が多い。
「本町では、子育てを応援するため、保育料について他の自治体と比較しても早くから手厚い支援を行うなど、子育てや教育環境を充実させる施策を行ってきました。現在も子どもの人口は増えており、小・中学校は増築しました」
このような行政サービスの財源として大きかったのは、昭和50年代に町で誘致した2つの工業団地だ。豊富な地下水に恵まれ、団地内の企業もほとんど入れ替わらない。町の税収は安定し、昭和町は現在も国からの地方交付税を受けていない不交付団体の1つである。
ここ数年、町内の土地の価格は上昇傾向だが、町のビジョンでは2035年ごろまで人口が緩やかに増えると予想している。
「区画整理事業の積極的な実施や工業団地の誘致、教育支援など、先輩たちが行ってきたまちづくりの施策が実を結んでいるのだと思います。こうした施策を今の時代に合うようにカスタマイズしながら、これからも住んでいる方たちに寄り添ったまちづくりを続けたいと思います」
明治から昭和にかけて県内にまん延した地方病(日本住血吸虫症)の研究と治療に生涯をかけた医師・杉浦健造・三郎父子の業績を伝える「昭和町風土伝承館 杉浦醫院」。
親水広場、芝生広場、ビオトープ、グラウンド、ウオーキングロードなどを備え、幅広い年代に親しまれている押原公園。富士山や八ヶ岳、南アルプスが見渡せるのも魅力。
昭和町が人気のポイント
- ショッピングモールなどの大型商業施設がある
- 近隣自治体の総合病院へ近く、町内には個人医院も多い
- 甲府市など近隣市への通勤がしやすい
- 公園が多く、遊ぶ場所に困らない
昭和町の移住の問い合わせ
昭和町には移住相談窓口や空き家バンク制度がないため、土地や建物に関しては民間の不動産業者へ問い合わせを。気候風土など、地域に関する一般的な問い合わせは昭和町環境経済課へ。
お問い合わせ:昭和町環境経済課 ☎︎055-275-8355
「子どもから高齢者まで、暮らしやすさナンバーワンを目指しています!」
(昭和町環境経済課の志村 優さん)
文/はっさく堂 写真提供/山梨県昭和町
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