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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(月)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

消滅可能性自治体/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(55)【千葉県八街市】

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 7月2日。「なぜ女性は地方を去るのか」。

 光はさほど強くないが、蒸し暑さはすさまじい。今日も大豆定植予定地の草刈りに励む。畑の水分はかなり多い。土が乾いていると作業効率は良い。しかしカラッと乾く日はまだしばらくやって来そうにない。ドロドロの中で頑張る。途中休憩のおやつはラズベリーとブルーベリー。ラズベリーはブルーベリーに比べてひと味落ちる。ガジガジと歯に当たるものがあり、糖度も落ちる。だからまずラズベリーを食べる、その後でブルーベリーを食べる。

 しばらく前、NHKのクローズアップ現代で「なぜ女性は地方を去るのか」という番組を見た。女性がいなくなることは、“人口減少や地方衰退の原因であると言われている”そう番組では言う。ある自治体で行われた婚活で、集まった45人のうち女性は3人だけ。農業をやっている40歳の男性が、これではどうにもなりません、そう苦笑いする場面があった。男は残り、女性は出ていく。なぜなのか。地方では、古くからある女性としての「役割」を求められる、その息苦しさから逃れたい、好きな、やりがいが感じられる仕事に出会いたい。これが地方を去って都会に向かう理由なのだという。

 では、例えば東京では、女性の夢と理想が実現できるのか・・・。夢がかない、充実した日々を過ごしている女性はきっと多いことだろう。その一方で払う代償のようなものもある。今は仕事に全力を傾けたい。子どもを産むのはしばらく先にしたい。そう考え、卵子の凍結保存をする女性が増えているのだと聞く。その費用は、採卵のために50万円、凍結保管料に月々1万円かかる・・・そう聞くと、僕は正直驚く。それでも卵子凍結の実数は確実に増えているらしい。今まさに知事選挙で燃えている東京。現職の小池知事は少子化対策を公約の前面に押し出しているが、これまでもすでに東京都は出産から子育てまでさまざまな経済支援を実行してきた。そこに今月初め、衝撃的な数字が伝えられた。2023年の合計特殊出生率が0.99。人口の維持に必要な出生率は2.77だというから、地方からの流入の多い東京でも2030年以後は人口減少に転ずることになるらしい。総務省によると、東京都内での子育て世帯の平均家賃は11万3000円で全国平均の1.6倍、教育費は月額2万4000円で全国平均の2.4倍。地方から東京へ。夢と理想を実現するために払う代償はどうやらここにもあるということになる。

 僕自身はどうだったか。安月給だったくせに妻となる女性に専業主婦を強いた。モヤシづくめの夕食を作らせた。男は仕事、女は家庭・・・古臭い思想に僕も汚染された男の一人だったのかも知れない。しかしそれだけではなかったように今思う。会社勤めから身を引かせ、「自由」にしてやりたい・・・そう考えた。はたしてそれが彼女の望みであったかどうか、ちゃんと話し合ったことはないので今でもわからないのだけれど、会社があんまり好きではなかった若い僕は、勝手に、彼女の幸せのためだと考えた。そして、二人の子を産んだ彼女は幸せそうに僕には見えた。ミニスカートが日本に入って来た時代、真っ先にそれを履いたらしい彼女だが、それはもう過去のこと、今は良き母となり、母親としての幸せをいっぱい味わっているように僕には見えた。しかし、我が判断が正しかったのかどうか。気持ちがぐらついたのはそれから20年、子供たちの手が離れ、外に出て働きたいと言った時だ。建設会社に応募して採用された。僕と違い図形や数学的な才能に優れる彼女は一級建築士の資格を取った。勤めに出るようになった彼女は生き生きしていた。もしかしたら若いオレのやったことは間違いだったのかもしれない・・・。

この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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