7月4日。「蚊で吸血するのは産卵前のメスだけ。そのメスがこんなに賢いなんて」。
文字通りの猛暑である。東京とその周辺で何百人か熱中症で搬送されたとのことだが、高湿度で35度となれば無理もない。何度も書く。雨に比べたら猛暑の方がずっといい・・・そんな僕は勇んで畑に向かう。まだ梅雨明け宣言もない今、僕はすでに秋のデザインに取り掛かっている。上の写真は1か月前までソラマメのあった場所。ソラマメはマルチをして作ったが、そのマルチを生かし、白菜とキャベツを植える。今日はその下準備。モーレツな草を撤去、かつ、カラカラ、真っ黒になった莢から来年の種になりそうなソラマメを拾い集める。
休憩時の水分補給はプラムである。今年のプラムは大不作。木は10数本もあるのに、なった実は探すのにも苦労するくらいわずか。それでも、完熟してふんわり柔らかくなったプラムはほどよい水分があり、糖分もビタミンシCもいっぱいだから暑さの中でのエネルギー補給には最適だ。いつもの荷造りを終えてから、ナスやトウモロコシに水やりし、さらに、ポットで発芽した大豆とピーマンに土増しと水やりして、午後6時半、さて、ようやくお楽しみ時刻だ。仕事を終えて、曲がった背中を伸ばしつつ夕刊を読む。なんとささやかなお楽しみかと自分でも思うのだが、1日の締めくくりにゼッタイ欠かせないお楽しみアワーなのである。
今日の夕刊で面白かった記事は、「血を吸うのは腹八分目」という蚊の話であった。人の血を吸うのは産卵前のメスだけ。自分の体重が2倍になるほどの血を吸って、素早く皮膚から離れる。その理由を追跡したのが理化学研究所と慈恵医大のグループ。一定量の血を吸うと、蚊は満腹になる前に吸血をやめる。それはなぜか。満腹になるまで吸血したほうがエネルギーをたくさん得ることが出来るが、長い時間をかけると違和感に気づいた人間や動物が追い払ったり叩き殺したりする。そうされないために、これ以上の吸血はダメと、抑制信号を送る作用を持つ「フィブリノペプチドA」という物質を蚊は体内に秘めているらしいのだ・・・僕は感心したね。なんと賢いのか、蚊という生き物は。ストレッチしながら夕刊を読む僕の腕にもいま何匹もの蚊がくっついている。
蚊の話のついでに、もうひとつ虫の話を。「オスはメスがいれば危険より繁殖を優先」という見出しが付いた、半月ほど前の、同じく朝日新聞夕刊で読んだ記事だ。アリモドキゾウムシという昆虫は体長6ミリで、クモや鳥に襲われそうになると触覚を折りたたみ、身を守るために死んだふりをするらしい。琉球大学農学部の日室千尋さんは、この死んだふりから元の覚醒状態に戻るプロセスを調べた。死んだふりをしたオスの半分は、何もしないでいると10分以内に目覚めるが、なかには2時間も動かないままというオスもいた。さてここからが面白い。死んだふりをしたオスの近くに性ホルモンを出す成熟したメスを置くと3分以内に半数、10分以内に8割が目覚めた。触覚をパタパタと動かし、メスを探しているそぶりを見せた。しかし、成熟前のメスを近づけた場合には反応しなかった。そしてさらに面白い。死んだふりをしたメスに別のオスやメスを近づけても目覚めるまでの時間は、何もしない場合とほとんど変わらなかった。日室さんは言う。
オスは、襲われるリスクと繁殖をてんびんにかけ、メスがいれば危険を冒してでも「死んだふりしている場合じゃない」と繁殖を優先することがわかった。
さらに日室さんはこうも言う。
なかにはメスを同じ容器に入れても、20分以上目覚めない、こわがりなオスも1割弱いて、性格が出ていた点も面白い。
死んだふりをしたメスが、周囲の条件には反応しない(男には目もくれない)のに対し、オスが、性ホルモンを発生するメスに敏感に反応するというところに、同じオスとしての僕は驚き、かつ笑う。今うちには生後1年、人間でいえば20歳くらいに相当する若いオスのチャボが2羽いる。この2羽が一日中、ほとんど休まずメスを追いかける。ヒヨコを連れた育児中のメスには手を出さないのが男としての仁義だが、彼ら2羽はおかまいなし、泣いて嫌がるメスにのっかる。困ったヤツらだ・・・僕はそう思いながら見ているのだが、でも、この男のガンバリがあればこそニワトリ社会の存在が維持される。もしそうでなかったら、うちのニワトリ社会も「消滅可能性自治体」となるかもしれない。
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