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田舎暮らしの本 12月号

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11月1日(金)
890円(税込)

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消滅可能性自治体/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(55)【千葉県八街市】

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 7月7日。「中心集落に移住者が来ても、周辺集落の問題解決にはなりません」。

 昨日の天気予報通り、モーレツな暑さである。午前の仕事を終えて、畑からランチに戻った時の室温は33.7度。ガールフレンド「フネ」は、それでもエアコンなしで暮らす男なんて馬鹿だ、バカだ、アホだ、勝手にしろ、死んじまえ・・僕をそう罵倒するのだが、やると決めたらやる・・・他には能がない、自分にあるのは農だけ、そんな男の唯一の取柄はこの一徹さである。あるいは決断の素早さである。目の前に生じた事柄にすぐ反応する、体が動く。しばらく前にテレビで「情報過多時代」という特集を見た。スマホが手放せない現在、現代社会で人間を取り巻く情報は増大し、なんと、決断すべき事柄は1日最大3万5000回もあるらしい。それでもって決断疲れを起こす、それが問題なのだという。なかには、何を食べるか考え、決断するのが面倒くさく、毎日同じものを食べている、栄養が偏るのでサプリメントで補っている、そんな38歳の男性も登場した。3万5000回もか・・・僕の決断回数はせいぜい1日35回ほどだろうが、迷わない、すぐやる。本当はA地点での草取りをするためにスコップ片手に通りかかったB地点。そこに草に埋もれかけたカボチャのツルがあればすぐ膝をついて草を取ってやり、ヤブカラシに絡みつかれたミカンの木があればすぐさま取ってやる。あとで・・・ということはよほどでないかぎりしない。

 バカ暑さの中で荷造りしつつ、朝日新聞の「耕論」、『女性減って自治体消滅?』という記事における、慶大教授・小熊英二氏の論を僕は不意に思い出す。小熊氏は他の論者とは違う視点から、消滅可能性自治体という問題に解説を唱えている。小熊氏によると、明治時代には7万以上の町村があったという。それが明治から平成に至るまでの大合併で現在は1741までに減った。この数は国際的に見て日本は少ないらしい。さらに小熊氏は、日本には公立小学校が2万ある。ひとつの小学校区をひとつの地域と考えたら、自治体数は2万とするのが適当だと言う。なるほど。八街市には小学校が3つ。最も大きいのは街の中心にあり、次に大きいのは新興住宅街の近くにある。3つ目がうちの娘が通った130年くらいの歴史を持つ小学校である。小熊氏は続けてこう語る。

しかし現実には7万が1741に減ったのだから、ひとつの自治体には数十の集落がある計算になります。役場がある中心街や中心集落より、周辺集落の高齢化や人口減少が激しい。中心集落に移住者が来ても周辺集落の問題解決にはなりません。今の過疎問題の焦点は周辺集落です。例えば平均年齢が75歳を超えた山間集落にいつまで上下水道や道路の整備を続けるか。住民を中心集落に集約するなら新住居や移転の費用を誰が負担するか。移転で体調不良や認知症が増えたら、むしろ人権面でも経済面でもコストが高くならないか。中心集落で若年女性が増えても、こうした周辺集落の課題解決には直結しません・・・。

 なるほどと僕は思った。ひとくちに人口が減り、衰退する地方だと言っても、同じ自治体の、中心部とそうではない地域とでは大きく事情が異なるのだ。「中心集落で若年女性が増えても課題解決には直結しない」という小熊氏の論は、田舎暮らしの推進に関わる人、いつか田舎暮らしをと考えている人は、ちょっと耳を傾けておくべきことではないかと僕は思う。我が家はJRの駅まで6キロある。市役所はそのJRの踏切を渡ったさらに先にある。田舎の中の田舎。中心部に家がある人は駅まで徒歩で行ける。はるか昔、駅前に置いた自転車を盗まれ、僕は暗い道を徒歩で帰宅したことがあるが1時間を要した。僕の暮らす村のこれが現状である。人口が急激に増え始めた20年前、我が村にはうちから徒歩20分の範囲にコンビニがなんと3つも出来て驚いた記憶がある。でも、いつしか3つのうちの2つが姿を消した。人口増加のピークから10年くらいたった頃だったか。あのコンビニ消滅は人口減少の前触れだったのかも知れない。

 荷物を出し終え、午後5時、再び畑に向かって草取りを始めた。今日もやはりブヨがいる。しかし、思いがけない他の敵に苦しめられた。腹ばいになっての草取り作業。そのどこかにアリの巣があったらしい。かなりの数のアリがシャツの中に侵入したらしい。仕事にキリをつけるため痛みをがまんし、初めはシャツの上から叩いたりこすったりしていたが、それで間に合う数ではどうやらない。引き上げることにした。いつものストレッチをやる前にシャツを脱いだ、そのシャツで上半身をゴシゴシとこすった。

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