なにかと勝手が違う田舎。ベテラン田舎暮らしライターが、さまざまな「困った」の対処方法を教えます。今回は、不動産の表示や価格の疑問にお答えします。
インターネットで物件探しを始めました。広くて安い土地が希望で、「眺望抜群。反200万円で相場より3割安い格安物件」というデータが目に留まりました。現地を訪ねると山の眺めが美しく、すぐに契約。小さなログハウスを建てて移り住み、ご近所とも親しくなりました。いくらで買ったのと聞かれたので、600万円と答えたら、「高いなあ。地元相場の倍くらい」と言われてしまいました。
山梨県在住 古沢さん●47歳
広告ルール違反の業者は信用するな!
不動産は高額な商品で、仮に失敗しても買い替えが難しい。消費者を守るために、不動産広告は紙媒体やネットを問わず、表示に関して厳しいルールが設けられている。 公正取引委員会の認定を受けた自主規制基準「不動產の表示に関する公正競争規約」がそれで、「完璧」「抜群」「最高級」「格安」などの表現は使わないことになっている。真面目な不動産業者なら、このルールに敏感になっているはず。
古沢さんが資料で見た「眺望抜群。……相場より3割安い格安物件」は、明らかにルール違反。こういう広告を平気で出す業着は、最初から信用すべきでない。
都会の人が地元相場で買えるわけではない
ただし、相場については少し冷静 に考える必要がある。じつは、「田舎物件に相場なし」と話す業界関係者は多い。相場の基準となる売買実例が、極端に少ないからだ。
それとは別に、地元相場と呼ばれるものがある。農村内部で通用する目安で、価格は驚くほど安い。地元農家が田畑を拡大したり、公共事業を進めるうえで支障が出ないようにするためだ。それを無視して高く取り引きすると、「地元相場を崩した」と非難されることもある。
しかし、それはあくまで地元の人同士が取り引きするときの話。都会の人に販売する場合は業者やブローカーが介在するので、地元相場の2 倍くらいは珍しくない。別荘地帯に近い農村では、数倍に達するケースだってある。古沢さんはたまたま地元相場を耳にしたのだろうが、その価格で誰もが買えるわけではないのだ。田舎物件市場にも相場に近い目安は あるので、『田舎暮らしの本』の物件欄などで研究してほしい。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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