全国に広がっている住みます芸人の笑いあふれる地域協力活動にフィーチャーした、「47都道府県エリアプロジェクト(あなたの街に“住みます”プロジェクト)」をレポートする本連載。
今回は、大分県住みますランナーとして活躍する爆走SAKIさんをクローズアップ。移住先の国東市で、宇宙食を開発するプロジェクトについて伺いました。
CONTENTS
大分県住みますランナー
爆走SAKI
吉本興業とエージェント契約しているヨガ・フィットネスインストラクター。砂漠ランナーとしても活動。運動オンチ克服のため日本体育大学へ進学・卒業。電柱から電柱までしか走れなかったのに、わずか6ヵ月のトレーニングでフルマラソンを歩かず完走。100㎞ウルトラマラソンを経験し、さらに長い距離を求めて砂漠マラソン250㎞に挑戦。現在、即応予備自衛官として、年間30日間の訓練も行っている。趣味は、宝塚歌劇の観劇、宇宙研究。
住みますランナー歴:2022年3月~
活動拠点:大分県国東市
主な活動:砂漠マラソンチャレンジ。地元の名産タコを活用した宇宙食(携行食・防災食)開発。
「サハラ砂漠マラソン2018」7日間250km完走
「アタカマ砂漠マラソン2019」7日間250km完走
「北九州マラソン2019」アンバサダー
「森林セラピートレイルランニングinのつはる」ゲストランナー
「おおのがわsmileRUN」ゲストランナー
「東京オリンピック」聖火ランナー
X(旧Twitter):@bakusousaki
Instagram:@bakusousaki
HP:https://bakusousaki.jimdosite.com/
YouTube:爆走SAKI
【大分県国東市】 |
宇宙目指して人生爆走中! ヨガ・フィットネスインストラクター“爆走SAKI”の挑戦
爆走SAKIの誕生
大分県で活動する爆走SAKIさん。世界で最も過酷なマラソン「砂漠マラソン」で250kmを完走するという目標を掲げながら、移住先の国東市で地域貢献でも腕を振るう人物です。今回は、爆走SAKIさんの強い信念と絶え間ない挑戦について、話を伺いました。
「もともと運動音痴で、走るのも大嫌いで、運動なんかしたくないっていうタイプだったんです。その運動音痴を克服するために、日本体育大学に進学。案の定、落ちこぼれの毎日でした」と明るく切り出す爆走SAKIさん。
まずはマラソンを始めたきっかけを伺いました。
「マラソン雑誌の企画がありまして、そこに参加したのがきっかけなんです。どんな企画かって言うと、『無料でホノルルマラソンに連れてってあげるよ』っていうふれこみで、初心者が6ヵ月間でフルマラソン完走を目指すという内容でした。それを見つけて応募してみたら、見事合格してしまって……。
まったく走れなかったのに、半年のトレーニングをちゃんと続けたら、42.195kmを歩かないで走れるようになっていったんです! そこから、東京、名古屋ウィメンズ、京都、板橋シティ、下関海響、北九州、青島太平洋、鹿児島、神戸、ウィーンシティ・プラハマラソンなど、数々のマラソン大会にチャレンジして完走。毎週のようにフルマラソンに挑戦するようになっていきました。3週連続でフルマラソンを走ったときに『爆走SAKI』という名前が付いていました(笑)」
運動音痴から砂漠ランナーへ
爆走SAKIという名はフルマラソンのステージから、さらに先の砂漠マラソンにも届くようになったといいます。
「たくさんマラソン大会に出場していたら、どんどん走ることへの思いが強くなっていったんです。42.195kmでは飽き足らなくなったんですよ。そして、100kmマラソンという、もっと長い距離を走るようになりまして……。でも、なんだか物足りない……。その上って、なんだろうって思って調べたときに、250kmを走るっていうレースがあることを知って、『あっ、これだ』と思って参加したんです。それが、『砂漠マラソン』でした。
モロッコの『サハラ砂漠マラソン』の250 km、チリの『アタカマ砂漠マラソン』で250 kmをそれぞれ完走しまして、すっかり『爆走SAKI』という名前が定着していったんですね(笑)」
砂漠マラソンへの挑戦
砂漠マラソンとはいったいどういったものなのでしょうか?
「普通のマラソンや100kmマラソンは一日で終わるんですけど、砂漠マラソンは、なんと、7日かけて、砂漠や崖がある過酷な環境を走るサバイバルレースなんです。命懸けで戦い、野生に還る感じです。一週間分の食料や着替え、寝袋など、衣食住に必要な装備をリュックに全部詰め込んで走るんです。運営によって、睡眠のためにテントサイトや水は用意していただけるんですが、それ以外は、自分で用意します。『世界で最も過酷なマラソン大会』と言われていて、初めてエントリーしたときは、『ホントに地獄だ……』と思いましたね(笑)。
走っていても、ずっと砂が続く景色なんですよ。何も変わらない……。行けども行けども砂……。砂漠だから当たり前なんですけど(笑)。背負っている荷物も、15kgぐらいあるんですね。めちゃくちゃ重いし、砂の上を走るので、埋まったりして全然進まないし、昼は灼熱・夜は氷点下になることもある砂漠……。普通のマラソンと全然違うので、より疲れるので、精神的にやられてしまって、最初は大号泣でした」
大分県への移住と新たな挑戦
爆走SAKIさんは、あるマラソン大会での運命的な出会いを経て結婚し、夫の出身地である大分県大分市に移住したのだとか。
「実は、私、芸人じゃないんです! 『爆走SAKI』と名乗らせていただいていますが、本職は、ヨガ・フィットネスインストラクター。たまに砂漠ランナーだったりします。なので、『住みます芸人』ではなく、『住みますランナー』なんです。さらにいうと、即応予備自衛官としても活動しています。ちなみに、吉本興業とエージェント契約を結んだのは、2021年10月からですね」
住みますランナーに就任した矢先、コロナ禍が爆走SAKI夫婦に猛威をふるいました。
「新型コロナウイルス感染症の影響で、フィットネスの事業が影響を受けたり、夫が営んでいた飲食店が閉店するな、苦難がありました(泣)。それで、どうせなら好きなことをしたいと考え、仕事のために国東市への移住を決意しました」
非常食開発への道
移住について、決意した経緯を伺いました。
「話が戻りますが、2019年に走ったアタカマ砂漠は高度3000mの高地にあるため、高度順応という作業が必要でした。平地に慣れている人が、酸素の少ない高知環境に慣らしていく作業ですね。富士山五合目ぐらいから気をつけないと、リタイヤを余儀なくされてしまうアレです。私も入念に準備したつもりだったんですが、レース中に高山病に罹ってしまったんですよ……(泣)。フラフラになってしまって、なんとか頑張ったんですけど、動けなくなってしまって……。頭痛がすごくて、3日間ほど固形物を食べれなくなって、激痩せするなどの症状に苦しんだんです。なんとか7日間で250kmを完走することができたのですが、あのときは、辛かったですね。
そのとき、『どうせ死ぬんだったら、美味しいもの食べてしにたいなぁ~』って思いました。
で、話を戻すと、その『どうせ死ぬんだったら、美味しいもの食べてしにたい』って思ったことがきっかけで、おいしくて、元気が出て、自分の好きな非常食をつくることにしたんです」
地獄のレースのなかで求めた理想の食事。果たして、爆走SAKIさんはどんな非常食を作ろうとしているのでしょうか。
「『理想のパワーフードを作ろう!』って思ったときに、まず入ってきた情報が、『大分空港がアジア初の宇宙港に選定され、2022年中に小型人工衛星の打ち上げを目指す』というニュースでした。それを見て、すぐに大分空港がある国崎市への移住を決意しました。なんで?って思われるかもしれませんね。実は、砂漠ランナーがレース中に食べているものって、非常食や携行食なんです。宇宙飛行士が食べるものと同じ感じなんですよ。『じゃあ、宇宙食をつくろう!』」ってひらめいたんです。国東市の特産物で宇宙食を開発すれば面白いし、携行食や災害時の非常食にもなるので、一石二鳥だと思ったんです。後々聞いたんですが、防災のお仕事をしている方からも、非常食に困っていると伺ったこともあり、そういった面でも、お手伝いできればと思っています」
国東市での新生活をスタートした爆走SAKIさんは、地域おこし協力隊として地域に貢献することから始めたそうです。
「大分市から国東市に移住して、まずやったのが、仕事探しです。宇宙食開発につながる仕事を探して、『くにさきオイスター』の養殖に携わる地域おこし協力隊の募集を見つけたんです。牡蠣なら宇宙食がつくれるんじゃないかって思ったんです。仕事はいわゆる牡蠣の養殖ですね。干潟で、泥まみれにになりながら、2021年末まで養殖作業やPR活動に携わりました。くにさきオイスターは生食用。生で食べると最高に美味しい! でも、私が求める非常食として加工するには、難しい点もありました……」
宇宙食「宇宙タコ」の誕生
「そんなとき、同じく国東市の特産物である『タコ』が、私の理想の加工に適しているとわかったんです。さらに調べていくと、牡蠣にも匹敵するぐらい栄養素があることも! タンパク質の塊で、ミネラルに加え、疲労回復に役立つタウリンも多く含んでいるんです。『じゃあ、タコでいこう!』ってなりますよね。それから、地元のタコのお土産を手掛けていらっしゃる水産加工会社の方に『私、宇宙食が作りたいんです!』って頼み込んだんですね。最初は急な話でビックリされていましたが、なんとかOKをもらうことができました。何回も試作を重ね、できあがったのが、『宇宙タコ』というわけです」
こうして生まれたのが「宇宙タコ」。開発秘話を伺いました。
「宇宙飛行士が宇宙で食事を摂る場合、地上とは違い、少し味覚が変化するらしいんですね。なので、スパイシーで刺激があるものがいいんじゃないか?と思い、ちょっと味が濃い目のスパイス味に仕上げました。できあがった味は『宇宙タコ スペイシー味』。もちろんダジャレです(笑)。砂漠ランナーの私にとっても、塩分の補給になりますし、お酒のつまみになるとおっしゃっていただくこともあります。そのまま食べる以外にも、ごはんのおかずにそのまま白いご飯に乗せていただいたり、タコ飯にしたり、キャンプなどでアヒージョにしてもらっても、美味しいですよ。常温で保存できるように、真空加熱をして、アルミの袋に入れています。見た目も宇宙食っぽく仕上がって、満足しています」
宇宙食としてJAXAに認めてもらうためには、いくつかのハードルがあるといいます。
「安全性や品質面など、かなり厳しい検査を通過しないと、JAXA公認にはならないんですよね。
- ISO(国際標準化機構)を取得した、衛生管理の行き届いた施設で製品が作られているか
こちらは、製品がどう、というわけではなく、ものすごく厳しい基準で作らないといけないっていうことです。一般的な工場の場合、設備的にアップグレードしないといけないんです。セキュリティ面も含まれています。
- 賞味期限が1年半以上であること
商品開発からそれほど時間が経っていないので、まだ賞味期限の検査が到達していないのが現状です。しっかり保存を考えて作ったので、近い将来、ここはクリアされると思います。
- 粉が飛散しないこと
砂漠でレース中に、食感も美味しく食べたいっていう当初の願望もあって、なるべく乾燥させないように水分量を残して仕上げたのが、この商品の苦労したところです。しっとり感があるんですよ。宇宙空間で機械に粉が入って故障の原因にならないように、とのことですが、その点ではクリアできています」
「などなど、細かい基準をクリアしないといけないんです。近い将来、JAXAの認定をいただいて、『宇宙タコ』が宇宙デビューしてくれることを願っています」
現在、「宇宙タコ」は国東のお土産として大分空港で販売され、ふるさと納税の返礼品としても取り扱われています。
「ヨルダン砂漠マラソン」とその先に
最後に、今後の展望を伺いました。
「私は『住みますランナー』として、大分県国東市から世界に、そして宇宙に挑戦し続けたいと思っています。自分の限界を超えること、そしてその先に何があるのかを確かめてみたいんですよ」
「9月22日から28日の『ヨルダン砂漠マラソン』の250㎞にチャレンジしてきます。そのときに、自分が作った携行食を美味しくいただくという夢が叶うわけです。『宇宙タコ』を携えて、しっかり走ってきますので、みなさん、応援よろしくお願いします」
爆走SAKIさんの挑戦は、これからも続いていきます。彼女の歩む道は険しく、過酷かもしれませんが、その先にあるゴールには、彼女が追い求める新たな可能性が待っていることでしょう。彼女の未来を共に応援していきましょう。
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田舎暮らしの本編集部
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