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田舎暮らしの本 1月号

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田舎暮らしの本 1月号

12月3日(火)
890円(税込)

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異常気象―そしてパリ五輪/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(56)【千葉県八街市】

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 8月11日。「男子マラソン、川内優輝選手を走らせたら面白かったかもしれない」。

 昨日は午前中に雲が広がり、パラパラと雨が落ちる時間も、一瞬だが、あった。降ってくれるかなと期待したがハズレ、午後からはまたカンカン照りとなった。僕はガッカリした。野菜はもっとガッカリだろう。今日の蒸し暑さはそれ以上である。起きるなりのカンカン照り。目が覚めたのは6時半。蓄電器の電気がなくなり、扇風機が止まる。それでいつも目が覚めるのだ。300ワットのポータブル蓄電器。扇風機を強で回すと8時間で電気が尽きる。それが今朝の場合は6時半。とたんに僕は暑さを感じて目が覚めるわけだ。

 人参をまいた。最初の鍬を入れてから、30センチの深さまでスコップで反転し、小石を丹念に拾ってサラサラの土にするまで足かけ3日、通算で14時間の作業。やっと種を落とすところまできた。ちょっとばかり不安を感じつつ、作った溝に種を落としていく。不安とは何か・・・現状、例えばインゲンは、花は咲けども実にならない。カボチャはヤケドを負ったように一部が腐食する。キュウリのアガリは早く、秋から冬の収穫を目標として植えたピーマンはすこぶる成長が鈍い・・・。果物も、例年だと持て余すほど収穫があるポポー、そしてフェイジョア、それが数えるほどしか実の数はない。でもって、さて人参はどうなるだろうと少々不安に思うのだ。種を落としてから長いホースを引っ張り少し荒っぽいと思うくらい水やりした。さあ、みんな芽を出してくれよ・・・。

 昨日は人参の種まきをしながらラジオで男子マラソンの中継を聴いた。前評判通りアフリカ勢が圧倒的に強く、日本の3選手は6位が最高順位だった。ふと僕は思ったのである。補欠に甘んじた川内優輝選手を出していたら面白かったかもしれないなあ・・・。彼の真骨頂は限界を超えるところにある。見ている者に、もうダメと思わせない、やってくれるかもしれない。最後までそう感じさせるのが川内さんの魅力だ。カンカン照りの今朝は水やり仕事で始まった。昨日まいた人参、それと数回に分けて定植したキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー。見回ると、昨日は平気だったのにグッタリしているものが3割くらいある。やっぱりこの暑さはキツイんだなあ。ほどほどに雨が降り、気温も30度どまりなら何とか生き延びられるのだが。生き残った連中を励ましながら、息を荒くしながら僕は水やりに奮闘した。

 前に、競技の名前が思い出せず、マットに頭をつけて、グルグル回転させながらダンスする種目・・・などと僕は書いたが、それはブレイキンと言うのだと、テレビを見て知った。さらに知った、へえっーと思うことがあった。ブレイキンの発祥はアメリカ。ギャング同士の対立。力ずくではなく、ダンスの優劣で勝負しようじゃないか・・・それがブレイキンの元らしい。僕はそれを知って「平和」な解決法じゃないかと喜んだ。殴り合いとか拳銃じゃなく、激しい動き、アクロバティックなダンスで男と男が勝負する。ならばこの競技、平和の祭典オリンピックにまことにふさわしいではないか。

 覚えきれないほどあるオリンピック競技で、僕がいちばん真剣に見るのはマラソン、それに3000、5000、1万の長い距離のトラックレース。それともうひとつがボクシング。そのボクシングでちょっと気になることがある。女子のボクシングで、開始からわずか46秒、パンチをひとつ受けたイタリアの選手があっさり棄権した。このままでは命の危険がある・・・と。背景に性と体の問題がある。相手選手は先の世界選手権で参加資格なしと判断された。しかし今回IOCは問題なしと結論した。先に急いで書いておく。あんなパンチはこれまで受けたことがない、このままでは命の危険がある、そう言ってあっさり棄権したイタリアの選手だが、あとで、相手選手には悪いことをしたと謝罪の言葉を残している。

 相手のヘリフ選手が、もとは男性で、手術などで女性になった、いわゆるトランスジェンダーだというSNS上にあふれた怒りの見解は誤りらしい。性分化疾患というのがある。女性の染色体はXXだが、男性因子を含むXY染色体の女性もいる。生物学的にはけして稀なことではなく、ヘリフ選手はそれにあたるらしい。Y染色体が含まれると男性ホルモンが多くなり、筋肉の発達を促すという見解もあるとのことだが、僕が見た専門家の意見ではそれが否定されていた。

 あらゆる競技は男女別々であり、混合でなされることはない。男と女では、筋力をはじめとして全身のパワーに差があることは明確なことだ。まして、直接殴り合うボクシングとなれば、男女の区別は絶対に避けられない。僕はヘリフ対カリーニの試合をテレビで見たが、外見的には男性対女性の試合だと感じられた。ただし、ヘリフ選手は戸籍としては女性として誕生したことは明らかで、そのパスポートも持っている。途中で性別を変えるトランスジェンダーの人ではないことは明瞭だ。それでもなお、ボクシングが大好きな僕は、考え、悩むのだ。医学的な見地からもっと詳細、公平な立場での検討がなされるべきではないかと。今回の件に対し、世間で大きく分かれる賛否の意見は、LGBTへの擁護論と否定論とが背後で影響しているらしい。ただ、それはいわば社会的な問題だ。直接殴り合うボクシングという競技では、もっと厳密、公平な観点からの性の審査が必要であろう。カリーニ選手の、「あんなパンチはこれまで一度も打たれたことがない・・・」という言葉は、ボクシングが分かる人なら重要な意味を持つと思うだろう。

 全身燃えるほどの蒸し暑さである。しかし温度計が示す数字はせいぜい36度。これがいつの日か・・・このまま地球温暖化が進めば東京で43.3度、札幌でも40度になるという説がある。何十年と暑さに馴らした体にいくらか自信を持つ僕でさえ、43度ではたぶん働くのは無理だ・・・。そんなことを思いながらの荷造りで、今日のお客さんにはサツマイモを入れることにした。マルチの穴に深く手を入れ、探る。写真の大きさに当たるのは5回に1回ほどだ。そこで困ることがある。頭から流れ落ちた汗が目に入る。視界不良になる。メガネを外して目をこすりたいが、両手はマルチの穴に埋まり、泥だらけである。

 荷作りを終え、ラジオを持って大ヤブに向かう。秋ジャガイモを植える場所を作るのだ。すぐ近くにはサルナシがある。カナムグラの長くて頑丈なトゲを持つツル、サルナシはそれらに包まれ、抑え込まれている。その救出もヤブ退治の目的である。6時半に仕事を終えた。部屋に戻ってテレビをつけた。台風5号は宮城・岩手あたりに上陸し、日本海に抜けるコースがほぼ確実らしい。わずか2日で8月1カ月分の雨量が見込まれるらしい。テレビを見ながら思った、これも異常気象のひとつのケースかと。通常、東北地方に達する台風は日本列島に沿うようにして進む結果だ。しかし今回、太平洋の海上を北上した台風がいきなり左にカーブして上陸する。こんなケースを僕はこれまで見た記憶がない。

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