掲載:2018年8月号
家に巣をつくると縁起がいいといわれるツバメ。今年も巣ができた福島県二本松市東和地域の農家・大野さんの家を訪ねた。
スズメやカラスが嫌われ、ツバメが好かれる訳は?
広い田畑で米やトマトなどを有機栽培している大野達弘さん(64歳)の家では、10年ほど前からツバメが巣をつくるようになった。当初は母屋の軒下だったが、3年前から納屋の天井に変わったという。
「スズメに巣を乗っ取られちゃうことがあるんだよね。でも、天井付近でホバーリング(空中停止)しながら巣をつくる能力はスズメにはないから、場所を変えたみたい。納屋では私らも選別作業したりするんだけど、戸を開けっ放しだから頻繁に親鳥が入ってくるし、人前も平気で通っていくんだよ」
ツバメの営巣は夫婦の共同作業で、田植えシーズンに現れて泥を運び、ワラなどで整形していく。巣ができたら産卵、卵を温めてふ化、餌を与えながら子育て、そして1カ月ほどで巣立っていく。その巣は2次使用が可能で、再び巣に戻り、卵を産むことも珍しくない。営巣場所も巣の使い方もじつに合理的で、賢い野鳥だとわかる。
ツバメが農家から愛されるのは、容姿のかわいさもさることながら、田んぼの害虫イネドロオイムシを食べ、稲刈りが終わると南の空へ渡っていくからだ。ふんをするくらいで、人間には何も害を与えない。同じ虫を食べるスズメは稲穂もつつく、カラスはゴミを荒らすことから、人間には好かれないのだとか。
有機農業の指導者として通算で約20名の研修生を受け入れ、震災後に農家民宿も始めた大野家には、多くの人が出入りする。ツバメが巣をつくると縁起がいいのは、繁盛している家、宝くじが当たるという俗説まであるのだが、「いやー、宝くじは当たっても300円だな(笑)。でも、ツバメが来てくれるとうれしいし、幸せな気分にはなるね」とほほ笑む大野さん。
農家を幸せにするツバメは、素敵なパートナーだ。
文・写真/山本一典
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする