なにかと勝手が違う田舎。ベテラン田舎暮らしライターが、さまざまな「困りごと」の対処方法を教えます。ここでは、土地選びと直接取引について説明します。
旅の帰り道、きれいな雑木林を発見。地元の人に声をかけたら、「持ち主に聞いてあげる」とのこと。 その山林と隣の盛土した土地も購入することで、話がまとまりました。 翌年、雑木林を歩くとお墓のような石を見つけてびっくり。盛土部分に小屋でも建てようと近くの大工を訪ねたら、「昔、 何か埋めていたはず」と言います。産業廃棄物でも埋まっていないか、不安になってきました。
埼玉県在住 細川さん●55歳
見ただけではわからない田舎物件の要素とは?
農村をドライブすると、あちこちで空き地や空き家が目に入る。自分の感性で選べるし、業者に支払う仲介手数料もいらない、という理由で直接交渉を試みる人がいるようだ。地域 で人脈を築いてから行動するならそれも1つの方法だが、見知らぬ相手だとリスクが大きい。
不動産業者は、物件の販売前に調査をしたり、法的な問題を事前に解消するなど、専門的な立場で動いている。消費者にとって最大のメリットは、契約前に重要事項説明を受けられること。これは、物件および取引に関して重要な事項を宅地建物取引士が書面と口頭で説明するもので、消費者保護を目的にしている。細川さんが試みた農家との直接取引では、そういう厳しいルールもなく、墓の説明すら受けられない可能性があるのだ。
田舎物件には、見ただけではわからない要素がある。盛土もその1つで、産業廃棄物やゴミが埋められている可能性だってないわけではない。土を掘り返して中を見せろ、と要求しても交渉は難航するはずだ。
相手が業者なら、土壌・地下水汚染の恐れがあると知事が指定した区域は重要事項説明の対象。区域外でも埋め立ての事実が明日なら告知義務があり、「土の中のことまで知らない」と逃げることはできない。
物件に瑕疵(かし)があれば業者に告知義務が
似たような話で耳にするのが、過去に自殺者が出た物件。これも見学ではまずわからないが、現実にはけっこうある。その事実を知っていたら絶対に買わなかった、 という場合は隠れた瑕疵(買主が知り得ない欠点)と認められる可能性が高い。業者が売主なら責任重大で、営業停止や免許取消も。仲介の場合は微妙だが、事実を知っていて告知しなかったら行政処分の対象になる。不動産には瑕疵が潜んでいる可能性があるので、安易に地主と直接取引をすべきではない。
文・写真/山本一典 イラスト/関上絵美
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