「総合建設業を手がける株式会社リンクロノヴァの長野雅樹社長は、「ながの社長」として部下のケイタさんと軽妙な掛け合いをする料理のショート動画で大ブレイク。本業とは関係なさそうなSNS活用の経緯や、名文句「おいおいおい」誕生の背景などを伺いました。
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掲載:田舎暮らしの本 2024年9月号
インフルエンサー・ながの社長
長野雅樹(ながのまさき)さん
ながの社長●1977年7月生まれ、岩手県出身。東北工業大学工学部建築学科卒業後、総合設備会社に入社。2020年3月に仙台市で株式会社リンクロノヴァを設立。ラジオ、CM、セミナーなどでも活躍。『結果を引き寄せる 完全版 YouTube TikTokビジネス活用術』(KADOKAWA)をケイタさんと共著。
YouTube:ながの社長のハッピーチャンネル(登録者数 105万人)
TikTok:フォロワー 103万人 Instagram:フォロワー 15.6万人 X:フォロワー 2.5万人
会社の机で部下が突然料理!?
社長の人気が本業にも波及
ケイタは料理をつくるのが好きで、僕は食べるのが好き。だからこそ続けてこられたんだと思います。
本業の情報発信から離れ
遊びのコンテンツに転換
2020年3月に起業したタイミングで、新型コロナウイルス感染が深刻化。5月には仕事がなくなりました。人と会えなくなって思い至ったのが、SNSの活用です。「会社の経営が軌道に乗ればやろうか」程度に考えていたのですが、切羽詰まって始めることになりました。
その年の10月からユーチューブをスタート。動画編集は自分ではできなかったので、月70万円ほどで外注し、「ながの社長のハッピーチャンネル」として週1本のペースで投稿しました。内容は省エネ設備の紹介など本業関係のものばかりで、反響はほとんどなく、お金だけが消えていく状況でしたね。
それでも建設業界に本気でSNSを活用する会社はなかったので勝機があると信じ、資金がある限りは続けようと思いました。ただ、外注は予算的にきつく、動画制作専任のスタッフを入れることに。こうして知人からの紹介で21年1月に正社員として採用したのが、クリエイター志望だったケイタです。
最初は設備関連の動画の投稿を続けていましたが、あるときケイタから「ティックトックで何か違うことをやりたい」と相談がありました。それまでのことを思い返すと、建設に興味を示す人はたかがしれている。本業とは関係ないエンタメ系のコンテンツも面白そうだし、社長である僕の顔を売ることが本業の収益化にもつながると考え、21年4月から開始。部下のケイタが社長をいじる内容が少し受け、「小バズり程度」はたまに見られるようになりました。
社長のデスクで部下が突然料理を始める「会社で料理」シリーズの誕生は、22年4月。その2〜3カ月前にケイタから素案をもらいましたが、動画制作による収益はなく、ケイタの給料を建設業の利益で賄っている状況。このうえ料理の材料費が増えることに躊躇(ちゅうちょ)していたんです。ようやく覚悟を決め、予算があまりかからない弁当シリーズから始めてみると、手応えはまずまず。そのまま投稿を続けていたところ、「社長のデスクで天ぷら揚げてみた」が大バズり。その後もヒットを連発し、約1万2000人だったティックトックのフォロワーは2週間で10万人を超え、少し遅れて転載したユーチューブも2週間で600人から10万人へ。
お決まりのセリフ「おいおいおい」は、自分から仕かけたものではありません。たまたま出た言葉に、フォロワーさんから「面白い」「爽快」というたくさんのコメントをいただき、定着したような感じです。
SNSで出会いが増え
仕事が広がる好循環に
経営者の立場として意識していることは収益化です。バズって盛り上がっただけでは会社として意味がありません。非言語にしたり、外国語のテロップを入れたりすれば、再生回数はもっと伸びますが、重要なのは日本人にヒットさせること。実際、100万人超のフォロワーのうち99%が日本人です。だからこそ、日本のメーカーさんからPRを依頼される企業案件の獲得にもつながります。
僕の顔や名前が売れるにつれ、「長野さんの会社でリノベーションしてほしい」と声がかかるようになり、建設業の売り上げはここ2年余りで2倍以上に拡大。自分が工事を請け負った飲食店で食べ、「うまい」と発信して集客にまでつなげられるのは、全国の建設業者でも僕くらいのもんですから。昨年3月にはSNS部門を独立させて、株式会社リセンダーという新会社を立ち上げ、双方の相乗効果が図れる体制を強化しました。
ご縁がなかった人とお会いできるようになったのも、SNSでの成功があったからこそ。東北楽天ゴールデンイーグルスの方がたと仲よくさせていただき、一緒にゴルフができるなんて夢のよう。
今年からラジオのレギュラー番組を持たせてもらっていますが、倖田來未(こうだくみ)さん、相川七瀬(あいかわななせ)さんなど、テレビで見ていた方たちと目の前で話ができるんです。また、大阪で出会ったいろんな会社の社長さんたちと協力し、今年9月に新たな会社も立ち上げます。
本を出版したり、ラジオのパーソナリティをしたり、テレビに出演したり、多メディアにこだわるのは、SNSでの発信だけでフォロワーを200万人、300万人と増やすのは難しいから。今後もケイタと一緒にタレント的に取り組みながら、SNSを見ない人たちをSNS側へ呼び込む活動をしていきたいと思います。
左/どういう料理が映えるかなどはケイタにお任せ。2人の掛け合いに台本はありません。右/あくまでクリエイターファースト。ケイタがここまで伸ばしてくれたと思っているので、社長としてお金を出しても口は出しません。
会社のアカウントでやっているので、食べ方も下品にならないように気遣っています。
テーブルが汚れてしまったときには、ちゃんと掃除をするワンカットも忘れません。
部下のケイタの夏の新作「冷やしホタテラーメン」。
人気ユーチューバー・水溜りボンドのトミーさんとも!
バズった最初の年には、名だたるユーチューバーの方たちとも共演させていただきました。
昨年7月には東北楽天ゴールデンイーグルスの試合で始球式に登板しました。
今年6月からDate fm(エフエム仙台)でラジオ番組『MUSICおいおい!』がスタート。ゲストアーティストを招いて毎週月曜18:30〜18:45に放送中。radikoでも聴けます。
「会社でハニートースト」はYouTubeで再生回数1795万回(今年7月現在)。
SNSを活用した企業のブランディングなど、これまでの実績を踏まえたセミナーも各地で開催しています。
株式会社リンクロノヴァは、店舗の設計・施工やリノベーションなどを手がける総合建設会社。https://lincro-nova.co.jp
フォロワーに好評だったエビパンを改良して出品。約2時間で400食が完売になりました。
今年6月の「ほやっほー祭」に、ケイタがつくる料理のキッチンカーを初出店。
屋内外で子どもたちと遊べて
肉も魚介もとにかくうまーい!
「僕は県外への出張が多くて外から見るからこそよくわかるんですが、肉も魚もフルーツもやっぱり宮城はうまいなあって感じることが多いんですよ」と、ながの社長。中心部から少し離れるだけで豊かな自然が広がり、店主のこだわりが詰まった美食もたくさんあります。
「仙台にはおいしいものがいっぱいです!」と、ながの社長。
充実した遊び場から
食通も納得の名店まで
宮城県は仙台駅周辺こそ都会的な雰囲気ですが、周辺には海・山・川の自然があふれ、子育てもしやすいし、本当に過ごしやすいまちです。
家族一緒によく訪れるのは、川崎町(かわさきまち)の「国営みちのく杜(もり)の湖畔公園」。チューリップ、ポピー、ヒマワリをはじめ、季節ごとの花で彩られ、広い園内を子どもたちが走り回れるほか、夏には水辺で遊べます。
雨の日に重宝するのが、白石市(しろいしし)にある屋内型の施設「こじゅうろうキッズランド」です。ロープを使った半割り丸太登り、トンネルスライダーなど、たくさんの大型遊具で思いきり楽しめます。
仙台市内を流れる笊川(ざるがわ)沿いは、水辺でくつろげる、お気に入りの憩いのスポット。特にサクラの花が咲く春はとてもきれいで、花見に行くことも。
普段は仕事関係の会食が多いのですが、仙台市内にはおいしいお店がたくさんあります。その1つで全国的にも有名な牛タンの「利久」は、本町(ほんちょう)店のリニューアル工事をさせていただきました。名物の牛タンはもちろん、めちゃくちゃこだわってつくっているテールスープも大好きです。
今年3月に開店した「肉刺しとホルモン トラコ」も、当社で設計・施工しました。「仔虎(ことら)」という高級焼肉店の新業態で、若い人でも気軽に入れる居酒屋感覚のお店がコンセプトですが、「この価格でこんなに上質なお肉を出すの!?」というくらいリーズナブル。食材へのこだわりを聞くと感動すら覚えます。
うまい海鮮料理が食べたくなったときには、大好きな「鮨 吉金(よしきん)」へ行きます。宮城県内にある有名すし店の店長が独立し、今年5月に仙台駅前にオープンしました。地元の新鮮な魚介類を使った創作ずしは、ほかではなかなか食べられません。
これらのお店はオススメのほんの一例で、仙台市にはおいしい海産物がたくさんあるのはもちろん、お肉の質のよさも負けていません。さらに、笹かまぼこなどのサブグルメやフルーツも本当にうまいですよ。
オーナーとも仲よくしている「焼肉 泰山(たいざん)」。上質な仙台牛が食べられ、仕事の会食などに利用しています。
「牡蠣小屋 仙台泉」には動画の撮影で2022年秋にケイタと一緒にお伺いしました。
牡蠣だけじゃなくて海産物がいろいろ。新鮮なものを焼くんでめちゃくちゃおいしい。
おでんに笹かまは、ぜひ皆さんも試してみてください。想像以上にいいですよ。
会社のデスクで食べた大粒の揚げたてカキフライ。かなり本格的でした。
「鮨 吉金」では、三陸の旬の魚介類を江戸前の洗練された技で食べさせてくれます。一品料理も手の込んだものばかり。
仙台の人気焼肉店「仔虎」の姉妹店「トラコ文化横丁店」。居酒屋感覚で使えるオープンキッチンのお店ですが、お肉は本格的です。
今年5月にリニューアルオープンした「利久 本町店」。名物の牛タンはやっぱりうまい。
「宮城最高!」
「国営みちのく杜の湖畔公園」は子どもたちがのびのびと遊べるお気に入りの場所。
春はサクラ並木がきれいな笊川べり。花見をしながら散策できるスポットです。
雨の日には「こじゅうろうキッズランド」へ。子どもの好奇心を刺激する遊具がいっぱい。写真提供/施設長あきらちゃん
文/笹木博幸 写真提供/株式会社リセンダー
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