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田舎暮らしの本 11月号

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田舎暮らしの本 11月号

10月3日(木)
890円(税込)

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森の中の古民家カフェを引き継ぎ、理想の暮らしを実現【北海道幕別町】/北海道の「いいまち」Pick Up! 【北海道七飯町】

夏は緑に、冬は雪に覆われる森の中にたたずむ古民家カフェ。昨年春に前の店長からここを引き継いだのは、常連客だった27歳の女性だ。「今の私にとって、ここが理想の暮らし」と話す彼女に、仕事のこと、暮らしのこと、北海道のことなどをお聞きした。

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掲載:2024年9月号

北海道幕別町の「パークゴルフ場サーモンコース」。幕別町はパークゴルフ場発祥の地とされています

北海道幕別町(まくべつちょう)
北海道の十勝中央部のやや南に位置し、人口約2万5400人。三方を標高200~300mの山々に囲まれ、南北に細長い町内は主に幕別・札内・忠類地区に分かれている。パークゴルフの発祥の地とされ、ナウマンゾウの化石骨が1頭分まるごと発掘されたことでも有名。上の写真は、「パークゴルフ場サーモンコース」。
とかち帯広空港から幕別町市街地まで車で約30分。帯広駅から幕別駅まで根室本線で約15分。

十勝の強くて温かい女性に憧れて移住を決意

「自然に囲まれた古民家で、カフェを開きたいと思っていたので、今の暮らしは理想的です」

 そう話すのは、2023年4月に幕別町忠類(ちゅうるい)で「Café 森の音こ(もりのねこ)」をオープンした但馬望里(みのり)さん(27歳)だ。店は、忠類のまちなかから4㎞ほど離れた林の中にある。もともとここは、坂井友子さんが「森カフェTomono」を営んでいた。

「カフェ巡りが好きで、ここにもよく訪れていたんです」

 坂井さんとプライベートでも会うようになったとき、「お店を閉めようと思っているのだけど、引き継いでやってみない?」と提案を受けたという。

 但馬さんは、「もちろん不安があり、悩みました。でも、こんなチャンスはないと思ったので、引き継ぐことにしました」と当時を振り返る。

北海道幕別町で「Cafe 森の音こ」。農家だった古民家
昔は農家だったという北海道らしい古民家。木々が生い茂る庭の一角には、サイロが残っていて撮影スポットになっている。

北海道幕別町で「Cafe 森の音こ」を営む但馬さん。看板猫「てんちょう」とともに
看板猫の「てんちょう」と但馬さん。てんちょうの出勤は気まぐれで、会えないときもある。

北海道幕別町で「Cafe 森の音こ」を営む但馬さん。オリジナルブレンドのコーヒー豆を自家焙煎
コーヒーをドリップする但馬さん。オリジナルブレンドのコーヒー豆を、その日のおやつメニューや気分に合わせて焙煎している。

北海道幕別町で坂井さんから但馬さんへとカフェが引き継がれました
「森カフェTomono」の店長だった坂井友子さん(左)から店を受け継いだ但馬さん。坂井さんは、「自然のなかで生きる」ことを目指し、現在は沖縄で暮らしているという。

 但馬さんは東京出身、高校在学中に進学も就職もイメージができず、日本一周の旅に出た。電車やバス、自転車、徒歩での移動だ。アルバイトで資金を稼ぎつつ約6年かけて47都道府県を踏破した。

「めぐったなかで北海道が一番よかったんです。特に十勝で出会った女性は皆さん、強くて温かくて輝いていました。なので、暮らすなら十勝と移住を決めました。もちろん雄大な自然や風景もよかったんですよ(笑)」

 そんな自立した女性への憧れから、女性一人でカフェを切り盛りしている坂井さんと仲よくなり、引き継ぐ話になったのだ。食器や調理器具など、店内の資材はほぼすべてを譲り受け、改修もしなかった。新たな看板は、ものづくりが好きな但馬さんの手づくり。

メニューは変更し、自家焙煎珈琲や和紅茶などのドリンクに手づくりおやつ、オムライスやパスタなどの軽食を用意。なんとドリップも焙煎も料理もすべて独学だという。

「『友達を自宅に招くような、ゆったりできる店』というのがイメージなんです。だから、日によって味が多少変わるぐらいの気軽な感じがいいと思っています」

北海道幕別町「Cafe 森の音こ」の店内
店内のレイアウトは、引き継いだときに変更した。薪ストーブがあり、ゆったりのんびりとできるスペースになっている。

北海道幕別町「Cafe 森の音こ」の「自家焙煎珈琲くろねこブレンド」
「自家焙煎珈琲くろねこブレンド」はホット500円、アイス600円。カップは前の店長の坂井さんがつくったもの。

北海道幕別町「Cafe 森の音こ」のスイーツ
人気のもっちりプリンのほか、月替わりで焼き菓子やケーキなどを提供している。

 以前からの常連さんも応援してくれ、近所の人も様子見がてら訪れてくれる。だが、幹線道路に面しておらず、観光地でもない店では、お客さんはぼちぼちだという。

「ここの家賃がとても安いからできていますが、のんびり過ごしたかった私にとっては理想の暮らしです。常連の方も近所の方も優しい素敵な人たちに囲まれて幸せです」と笑う。

「Café 森の音こ」を開業してもうすぐ1年半、最近では夜の読書会をはじめ、ものづくりの会など、イベントも少しずつ行うようになった。

「冬は除雪や薪割りなどがあり大変ですが、やはり北海道の雪景色は本当に美しいです」

 今後、余裕ができたら新しいことにチャレンジしていきたいと話す但馬さん。「まだまだ先になりますが、お茶や柑橘の栽培にも興味があるので、夏は本州で生産者、冬は北海道でカフェという二拠点生活もいいですね」。夢がさらにふくらむ。

北海道幕別町の「Cafe 森の音こ」の庭に訪れるシマエナガ
冬になると庭にやってくるシマエナガ。こうした小動物や野鳥を眺めている時間もお気に入り。

北海道幕別町で登山を楽しむ
登山やキャンプ、サイクリングとアウトドア好きな但馬さん。写真は、高山植物の大群落があり、頂上からの見晴らしがいい大雪山系緑岳に登ったときのもの。

但馬さんからアドバイス

 やはり森の中のカフェでは、稼ぎは必要最低限です。今の私が1人で営業するにはちょうどいいですが、きちんと稼ごうと思うなら立地は考えたほうがいいと思います。また北海道は場所によっては豪雪地帯もありますので、気候なども事前に調べることをおすすめします。

Café 森の音こ
北海道中川郡幕別町忠類東宝93
☎090-6948-9668
営業時間:10:00~17:00
休み:金(土は不定期営業)
Home | Cafemorinoneko
Instagram:@cafemorinoneko

 

幕別町移住支援情報
おためし暮らしで移住前に町の生活を体験

「北海道の背骨」といわれる日高山脈が美しく見える幕別町。忠類白銀台スキー場のロッジを利用した「おためし暮らし」施設では、町の自然や気候、暮らしの様子を体験できる。また、町内に住宅を新築または購入した場合に補助金を交付する「マイホーム応援事業補助金」がある(条件あり)。

お問い合わせ:幕別町住民課 ☎0155-54-2288
移住・定住|幕別町 (makubetsu.lg.jp)

北海道幕別町では、忠類白銀台スキー場のロッジを利用した「おためし暮らし」があります
忠類白銀台スキー場のロッジを活用した「おためし暮らし」施設。2週間以上3カ月まで利用可能で、1日あたり1人1650円。

北海道幕別町のマスコットキャラクター「パオくん」と「クマゲラくん」
「町内には12コースもパークゴルフ場があって誰でも手軽に楽しめるよ」
幕別町のマスコットキャラクター「パオくん」と「クマゲラくん」

文/水野昌美 写真提供/Café 森の音こ、幕別町

 

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