「ナチュの森」は地元住民のための施設
ここまで工場建設までの小松社長と白老町の歩みついて触れてきました。その先のナチュラルガーデンや森の工舎というミュージアム建設ついて伺おうと思います。
——ミュージアム建設の動機は白老町への社会貢献からということでしょうか?
「はい。ですが、『観光客を呼ぶために作った』ということではありません。根底にあるのは倶多楽湖の水を使った化粧品を作りたかったためです(笑)。それとは別として、工場と併設した庭園や体験施設を完成させたのには2つ理由があります。1つは地元の方にも『ナチュラルな生活』を送ってほしいため、もう1つは『雇用』のためです。
1つめの『ナチュラルな時代』を過ごしてほしいとは、『自然と共存する時間』と『人として充実した自然体な時間』という意味が込められています。近年は、大災害が大きく報道されることもあり『自然は怖いもの』という概念が子どもたちに芽生えているような気がするのです。自然と乖離した生活は、健康や文化、教育等の面から大きな社会問題として世界的に認識されています。ナチュラルサイエンスではナチュの森を通して『自然に触れ合う生活』、そして、人間と自然が共存し、お互いが良い影響をもたらしあう『ありのままの暮らし』の生き方を提唱しているのです。
ナチュの森に来ていただくことで『自然とともに生きる』という暮らしのヒントを得られたり、自然や科学について新たな気づきや発見を得られたりできると考えています。そのようなサービスのもと『文化的で、自然とも暮らせる、学びもある生活(=ナチュラルな暮らし)』を送ってほしい、そのような願いのもとで『ナチュの森』を運営しています。
その他の特色として、ナチュラルサイエンスは『自然とともに生きる』というのが大前提のため、自然に配慮した事業に興味ある方が参考にしてもらえるような施設なのではないかと思っています」
さらに、「ナチュラルサイエンスの『ナチュラル』には、そのような深い意味が込められているんです」と小松社長は付け加えました。
——では、もう一つの理由である「雇用」には、どのような思いが込められているのでしょうか?
「私は、定住していたにしても移住したとしても、生きるには『働く場所』が欠かせないと考えています。ナチュラルサイエンスでは工場はもちろん、ガーデンの管理にも地元の方が中心となって働いています。工場のそばにある農園では障がい者の方々が活躍しており、地域の雇用の場としても機能しています。さらに、ナチュの森と地元企業が連携して、登別駅からの運行する無料循環バスも走行しています。
その地域に働く場所や誇りを持つ拠点があると、生活の中にゆとりが芽生え、『ナチュラルな暮らし』が実現しやすくなると考えています。
『首都圏での生活より、自分の時間・家族との時間が充実している』
『雪も少ない住みやすい所』
『文化・芸術が日常のすぐそばにある』
『子どもをのびのびと育てたい方におすすめしたい』
『人の温かさや繋がり、距離感がいい』
これらのコメントは私が移住した方々から聞いたものです。皆さん白老町で思い思いの心地よい暮らしをされているのがわかります。実際に、白老町の女性の方々がおしゃれになったり、内面からの美しさが見られたり、道路に落ちているゴミが少なくなったなと、私自身も感じています。
——「森の工舎」をはじめとするナチュの森の中で、自身のお気に入りポイントを教えてください。
「『森の工舎』自体も、もともとは中学校の校舎だったというストーリーがあって。この中学校は白老町虎杖浜エリアの3世代にわたって、漁師さんなど、地元の産業を支えているご家族の入学・卒業、そして何よりも、子どもたちの成長を見届けてきたという歴史があるんです。家族のパワーが詰まっている場所なんだと感じました。また、初めて建物に入ったときは、廃校にもかかわらず、いたずら書きも一切なく、驚いたのを覚えています。生徒たちも大切に使っていた思い出の場所なんでしょうね。
そんな想いが詰まった校舎を再生利用して、家族みんなで楽しめる『自然と科学のミュージアム』を作ろうとなったのです。
そのなかでもおすすめなのが、『ライブラリー』とナチュラルファクトリーの『工場見学』です。ライブラリーでは『自然』『科学』に絞った世界各国の本や絵本が置いてありますが、難しくなく『主婦目線・子ども目線』の科学を扱ったものを並べるように工夫しています。工場見学はどうやって化粧品を作っているか間近で見ることができますし、小さなお子さまから大人まで幅広い世代で楽しむことができるイベントだと思います」
——来場者からの反響は、どういったものがあるのでしょうか。
「ご来場の方には、『ナチュの森に来ると気がいい、元気になる』という声をいただくことが多いです。居心地の良い場所にしていきたいとは思っていますが、白老町の自然のパワーなのかと思っています。また、今年の3月から10月20日まで縄文展を実施してきましたが、来場者の声で『冬の縄文人は凍死していなかったのか?』などの質問をいただき、私たちもそこはぜひ知りたいと思い、専門家の協力のもと、冬の縄文人の暮らしに焦点を当て、11月1日〜2025年2月24日を目処として『ナチュの森で冬の縄文にであう展』という第二弾イベントを開催する運びとなりました。そのような来場者の疑問から新たに企画が生まれたのは『ナチュラルな生活』を提唱する私たちにとって良いムーブメントだなと思いました」
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