掲載:2021年7月号
「指圧院とカフェを開きたい」という夢があった井上さん夫妻。東京は好きだったが、その夢をかなえるのが難しい場所だった。夢の実現に向けて韮崎市(にらさきし)に移住した井上さんは、集合住宅に住みながら物件を探し、理想的な古民家と出合う。庭で遊ぶ子どもたちを眺めながら仕事ができる、そんな夫婦の夢が一歩前進した。
甲州街道と駿信往還(すんしんおうかん)が交わる交通の要衝の宿場町として栄えた韮崎市。山に囲まれているが土地が開けているため、日照時間が長く、ブドウや米などの産地として知られている。東京から中央自動車道経由で約1時間30分。
田舎過ぎず都会過ぎず、仕事も子育てもしやすい
南アルプスをはじめ、八ヶ岳や茅ヶ岳など日本百名山の山々に囲まれた韮崎市。まちの人から「かわらべさん」と親しまれている若宮八幡宮近くの住宅街に、凛としたたたずまいの古民家が立っている。2019年に家族で東京から移住してきた、井上達也さん(44歳)、有希さん(37歳)の自宅兼職場だ。
達也さんは長野県上田市出身。東京でシステムエンジニアや経理の仕事をしていたが、「会社員より一人ひとりに向き合う仕事がしたい」と指圧師の資格を取り転身。有希さんは東京都大田区出身で、都内でパティシエとして働いていた。
「指圧院とカフェをやりたいという夢があったんですが、東京では金銭的になかなか難しい。それなら、長男が小学校に入る前に移住しようということになりました」(有希さん)
お互いの実家に近いことと、ある程度の利便性がありながら都会過ぎないことを条件に移住先を探し、最終的にたどり着いたのは韮崎市。のんびりした雰囲気ながらスーパーや病院が近く、「バランスのいい、暮らしやすそうなまちだなと思いました」と、達也さん。駅前に子育て支援センターがあることも決め手になったそう。
最初は家が見つからず、市の定住促進住宅に住んでいた井上さん一家。ある日、いい物件が出たと聞いて内覧に行き、出合ったのがこの古民家だ。
「便利な立地で庭もあり、店舗スペースもある。しかも、縁側でお茶を飲む暮らしが夢だったのですが、縁側まである! 即決しました(笑)」と、有希さん。
築100年を超える家だが、人が住み続けていたため補修箇所は水回りのみ。韮崎で知り合った建築士さんにお願いし、タイルと木、理科室のシンクなどでおしゃれで機能的なキッチンにしてもらった。
奥の和室は達也さんの指圧院になったが、コロナ禍のため、現在は週に2日(水曜と土曜)完全予約制で施術、それ以外は訪問で施術している。夏にはカフェ用キッチンを新設し、有希さんのカフェをオープンする予定だ。
「赤ちゃんからお年寄りまで、ゆっくりできるカフェがいいな。お米や果物の農家さんの知り合いも増えたので、韮崎の食材を積極的に使おうと思っています」
移住して、家族みんなで過ごす時間が増えたと話す有希さん。
「家族の時間がさらに楽しく、濃いものになりました。韮崎は、起業するにも子育てするにも、とてもいい環境だと思います」
韮崎市移住支援情報
オンライン移住相談を随時受け付け中!
駅前の市民交流センター「ニコリ」にコワーキングとサテライトオフィス「Hir o Ba」がオープン。市に移住を考えている人が無料で利用できる「お試しシェアハウス」もある。定住促進住宅に入居した場合の家賃補助制度や、住宅取得時に助成金を交付する制度、市の空き家バンク登録物件の改修に最大100万円を助成する制度などの住宅支援も。
問い合わせ:移住・定住相談窓口 ☎0551-30-4321
http://nirasaki-iju.com/
文/はっさく堂 写真/尾崎たまき
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