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田舎暮らしの本 2月号

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田舎暮らしの本 2月号

1月4日(土)
990円(税込)

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貧乏暮らしは悪くない? 梅干しご飯からはじまる豊かな人生/自給自足を夢見て脱サラ農家37年(65)【千葉県八街市】

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厳冬期の挑戦と太陽光発電への情熱

夢を追う農家の日常

 正月10日から大寒に至るまで、暦通りに最もキビシイ天候が続いた。気温が低い、強烈な北風が吹く。荷造りなどの作業効率が悪いだけでなく、風にあおられたビニールのハウスやトンネルの補修にも走り回る。

 チキショー風のヤツめ……。

 いくらか舌打ちもするが、心の中では明るい希望の光の方が上回る。

 ものみな凍る、土まで凍る1月、ハウスやトンネルを仕立てて露地より2か月早く様々な野菜を収穫しようとする。なかなかの苦労だが、チャレンジングでもある。全力を尽くす、オレは生きている、そんな実感がしびれて動きの悪い手先を通して得られる。

 寒風の中で作業に励んでいるところに呼び声。佐川急便の馴染みのドライバーが注文してあったハウス用のビニールを配達してくれたのだ。7×20メートルで16500円。昨年12月から通算8万円ほどをビニール代に費やしたことになる。我が月収に比すれば小さな額じゃない。でも、先に書いたように、「夢と希望」のための必要経費、別な言葉にするなら投資。

 最近、投資という言葉を新聞などで頻繁に目にする。銀行に預金しても増えない。よって投資ということか。10代~40代の若い投資家が目を向けるのは海外株だと新聞が伝えていた。

イチゴのハウスである。クリスマスケーキを飾るイチゴは30度に保たれたハウスで栽培されるが、重油も電気も使わず2月の収穫をめざす。
イチゴのハウスである。クリスマスケーキを飾るイチゴは30℃に保たれたハウスで栽培されるが、重油も電気も使わず2月の収穫をめざす。

小さな投資、大きな夢

 僕は投資に回せるような持ち金はない。パソコンも算数も苦手であるゆえ、オンライン経由で世間の投資熱について行こうという気持ちにもならない。ただし、上に書いたように、ちっこいけれど、未来への「夢と希望」のための投資はやる。

 間もなく、夏野菜の苗づくりに取り掛かる。部屋の中で、電気カーペットの熱で発芽させるナス、ピーマン、トマト、カボチャなど。それが畑に定植可能となるのは2月半ば。それまでに今日配達されたビニールを設置する。曲がったりジョイントが外れたりしているハウスの骨組み修復には時間がかかる。仕上がりは1月末か。仕上がったビニールハウスの中にはビニールトンネルも設置。ハウスのビニール1枚では小さな苗は寒さを乗り切れない。ハウス+トンネルとすることで地温を上げられる。

 医療費も衣料費もかからず、外食も旅行もしないとなれば、「ナカムラさん、お金が余るんじゃないですか?」とジョークまじりにそう言う人もいるかもしれない。

 いや、余りません。

 そのワケは。まず食費にけっこうかかる。農村地帯のスーパーは魚が驚くほど高い。肉も高い。いくら自給生活でも野菜と果物だけじゃ体力がもたない。高いと承知しつつスーパーでは月に5万円くらい買い物する(このうち1万5千円はニワトリたちが飲む牛乳代)。

 それとバン代もかなり。僕は珈琲とパンがメシより好き。コメと麺類はほとんど食べず1日2食がパン。月に2万円くらいうまいパンを取り寄せる。朝食はご飯でなくパン。それを称して「ごパン」との言葉が以前あった。ならば朝食夕食がパンという僕は「ごパンパン」となるかな。

安かった理由はおそらく30キロ近い重さのせい。最近は女性でも運べますとのうたい文句で同性能で14キロも軽い製品が出ている。
安かった理由はおそらく30キロ近い重さのせい。最近は女性でも運べますとのうたい文句で同性能で14キロも軽い製品が出ている。

衝動買いの誘惑

 お金が余らないワケの極めつけは衝動買いである。この上の写真、シクラメンの後ろに見えるのは年頭に衝動買いした2000ワットのポータブル蓄電器8万9千円(これが部屋の床に電気カーペットを敷き、野菜の苗を作るのに活躍する)。僕はすでに同じものを持っている。2年前14万円。それがなんと、型式が古くなったかアマゾンの割引デーだったか大幅値引き。後で支払いに窮するクセに飛びついた。

 衝動買いの多くは太陽光発電がらみの品が多い。先に書いたように、東電への支払いは月額千円ほどだが、これまでの投資は200万円超で、費用対効果で言えばまったく割に合わない。

 しかし、いかなる天災が生じようとも我が家は電気で困ることがない。僕が太陽光発電に熱心なのは、そんな実利とともにホビーであり健康法ゆえだ。頭も手先も使うからボケ防止になる。かなり頻繁にメンテナンスするが、その手間が楽しい。小中学生の頃「子供の科学」という雑誌を愛読していた。その精神が今も引き継がれているのかも。

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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