教えて! 移住プランナー仲西さん vol.2
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。第2回のテーマは「二地域居住を成功させるコツ」です。
田舎にもうひとつの拠点を持って、平日は東京、週末を田舎で過ごす二地域居住に興味があります。そこで、二地域居住を成功させるコツを教えてください
(Aさん、東京在住、30代夫婦)
二地域居住の魅力って?
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
最近では、若い世代を中心に、二地域居住に興味を持つ人が増えていますね。テレワークの普及により、どこでも仕事ができる環境が整ってきたことで、就業時間や通勤の負担感から解放され、プライベートな時間も充実することができますね。
さらに、都会と田舎の異なる空間での生活を楽しむことで、異なる文化や自然環境に触れられます。とくに、自然と触れる機会が多くなり、ストレスを軽減し健康を維持することもできます。
ちなみに、二地域居住を考えるきっかけとなるのが、「サーフィンをしたいので海沿いで暮らしたい」など、趣味(ライフ)を重視した暮らしの実現が多いようです。
ここで、二地域居住の魅力をいくつか挙げてみました。
- 自分の好きな町に居住できる。
- アウトドアや趣味を満喫できる。
- ウェルビーイング(身体的な健康、精神的な健康、社会的に良好な状態)が向上する。
- モチベーションの向上や新しいアイデアの発案につながる。
- 家族で新たな体験を享受できる。
二地域居住はお金がかかる!
憧れの二地域居住ですが、そこには費用が関わってきます。こればかりは千差万別で、二地域目となる拠点での住まいや移動距離、訪問頻度などによって大きく変動します。まず、生活費はこれまでの1.5倍にはなると考えるべきですね。
一例としてご質問者のAさんのように、東京在住の方が週末移住を1カ月(4回)実施した時の費用を試算してみました。
夫婦で東京都から千葉県房総半島に週末移住をして様々な農業体験にチャレンジしながら、余暇では趣味のサーフィンも楽しむ。なお、宿泊施設はサブスクで利用できる別荘を想定しました。
このように、1カ月で約21.8万円の費用が掛かります。
もちろん、従来の生活費にそのまま加算されるわけではありませんが、大きな負担であることは間違いありません。
地域のコミュニティにどう馴染む?
二地域居住を実施するときに、もう一点気になることが地域でのコミュニティです。もしも、地域に溶け込みたいなら、定住を選択するほうが有利です。
地元のひとたちとっても、たまに顔を見せる「別荘族」よりも、地域に根を張ろうとする定住者の方が、親近感はわきますよね。
なお、ここで私が述べる「定住」とは、住民票の移動を指します。実は、週末だけ田舎に移住をしている人でも、住民票を二地域目に移している人は少なくありません。リモートワーカーなど居住地に捉われずに仕事ができる人は、住民票も移しやすい利点があります。住民票を移動することで、町内会に加入することができ、地域のコミュニティもグッと溶け込みやすくなります。週末だけの居住であっても、住民票の移動で大きく変わってくるのです。
私の知り合いには、平日は田舎に住み、週末は東京に戻っている人もいますね。
二地域居住には色々なスタイルがあるということですね。
二地域居住を成功させるコツは!
それでは、憧れの二地域居住を成功させるコツとして、3つお伝えしますね。
まず1つ目は、先述した通り、住民票を移動することです。例え週末だけの滞在であっても、住民票を移すことで地域の人とのコミュニケーションはグッと活発になります。また、地域に馴染むコツは聞き上手になること。地域の人の話にとにかく耳を傾けて、地域のことを学びながら仲を深めると良いでしょう。
2つ目は、経費をできるだけ低く抑えることです。とくに、宿泊費を抑えることですね。地域によっては自治体が運営する「移住体験住宅」というものがあります。自治体が自分の町に興味を持ってもらうために、お試し居住ができる施設です。
「移住体験住宅」は、一定期間、低料金で借りることができ、生活用具も揃っているのでとても便利です。
また、近年では、空き家を低額で購入する人も増えてきました。自治体が運営する「空き家バンク」では、多くの空き家情報が発信されています。また、購入した空き家を、万が一手放すことになっても、空き家の流通が以前よりは活性化しているので、買い手がつくことも期待でき、購入に対するハードルは下がっているといえます。
長い目線で二地域居住を考えるのであれば、格安空き家を探してみるのも面白いかもしれませんね。
最後に、3つ目は移動しやすい場所を選ぶことです。当然、遠方になるほど交通費がかさみ、移動の体力も要します。ちなみに、二地域居住に向いている人は、「旅行が好きな人」です。なぜならば、移動を苦にしないからですね。また、利便性の良い場所であれば、会社からの呼び出しや、身内の不幸など、急な事案にも対処がしやすくなるメリットもあります。
二地域居住を実現するには、それなりに資金の準備が必要となります。それでも、二地域居住を通して趣味を充実させられるなど、人生に彩りを添えることができますね。迷っている方は、まず一時居住からはじめて、自分に合う居住スタイルを見つけてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
仲西 康至
移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を始める。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2500組の移住相談に対応。著書「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」他
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