教えて! 移住プランナー仲西さん vol.4
移住プランナー、移住専門ファイナンシャルプランナー、空き家相談士など様々な顔を持ち、これまで約2500組もの移住相談に多角的な視点で対応してきた、仲西康至(なかにし・こうじ)さんが、地方移住についての疑問、質問に答える連載「教えて! 移住プランナーの仲西さん」。第4回のテーマは「田舎暮らしに向いている人と向かない人について」です。
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田舎暮らしに憧れていますが、都会で暮らしてきた自分にとっては、地域にうまく溶け込めるかが心配です。これまでの経験から、『田舎暮らしをしない方がよい人』はどのような人ですか?逆に『田舎暮らしに向いている』のはどのような人ですか」
(Aさん、神奈川県在住、35歳、独身)
皆さんこんにちは、移住プランナーの仲西です。
田舎への移住を考えるとき、不安があるのは当然ですよね。とくに、今回の相談者のように、これまで都会で暮らしてきた人にとっては、生活の環境が大きく異なりますからね。
では私のこれまでの経験から、「田舎暮らしに向かない人」についてお伝えしますね。
田舎暮らしに向かない人
① ネガティブな人
田舎に移住をするのに、マイナス思考では成功する訳がありませんよね。もちろん、田舎移住に不安もたくさんあるでしょう。「地域にうまく溶け込めるのか?」も心配でしょう。
しかし、これが会社の転勤であれば、そのようなことは言っていられません。仕事が優先されて、「地域にうまく溶け込めるのか」と気にしてはいられないのではないでしょうか。
「移住」という夢を達成するのですから、ポジティブな思考が大切ですね。
② 何も考えずに移住する人
「とりあえず、移住をしちゃいました」なんてノリの人。良いように捉えれば、行動力がありますね。
でも、なんとなく来ちゃった人は、すぐに何となくいなくなります。せっかく、「移住」という夢を実現するのですから、それに向けてしっかりとした準備をしたいですね。
③ 神経質な人
「細かいことを気にしすぎる人」は、田舎移住には向いていませんね。なぜならば、神経質な人はこれまでの生活を簡単には変えられないからです。
神経質な人は慎重になりすぎて、移住を実現できる人も少ないですね。そして、移住をしたとしても、「前の生活の方が良かった!」と思いがちになります。田舎の人は大らかな人が多いですから、神経質な人は田舎の人とトラブルになりやすい傾向にありますね。
田舎暮らしに向いている人
さて次に、「田舎暮らしに向いている人」の傾向をお伝えしますね。
① 目的がはっきりしている人
「どうして自分は田舎に移住をしたいのか?」「なぜ、自分は移住を考えるのか?」このような疑問に対して明確に答えられる人ですね。移住の目的がはっきりしている人は、移住を実現するのも早く、移住に失敗することも少ないですね。そもそも、移住には不安がつきものですが、その不安を払拭するには、移住への思いや目的を強く持つしかありませんからね。
そして、目的がはっきりしていると、地域の人に受け入れられやすくなります。地域の人は「どうしてこんな田舎に来たのだろう」と、誰もが疑念を持っていますからね。そこで、移住の目的を地域の人に伝えることで、「あの人は、○○をしたいみたいよ」と、地域の人も理解できて安心をします。
② コミュニケーション能力の高い人
移住相談をしていると、「都会は人が多いので疲れた」「人と話すのが苦手なので、人の少ない田舎に住みたい」と話す人がいます。
しかし、これは全く逆ですね。むしろ田舎の方が、コミュニケーションが必要になるからです。
都会のマンションなら、隣に住んでいる人の名前も知らないでしょう。しかし、田舎に移住すると、当面は周囲からの視線を感じますよ。また、町内会の寄り合いや行事もあるでしょう。都会と違って、田舎は「助け合い」の精神が高いですから。
③ 子育てファミリー
子どものいる家族は、地域に溶け込みやすいです。子どもを通して、周囲とのつながりができるからです。「子育て」という共通の目標があるのも大きいですね。
また、田舎は高齢化率が高くなっていますので、子どもは地域の宝として大切にされ、近所のお年寄りからも愛されるでしょう。
移住に失敗する人は多いのか?
SNSなどには、「移住先でトラブルに巻きこまれて都会に戻った人」の投稿を目にします。田舎に移住を考える人にとっては、こうした投稿を見ると不安を持ちますよね。
しかし、これらはほんの一部です。私はこれまで、300組以上の移住者を迎え入れるサポートをしましたが、「移住に失敗して、都会に戻った人」は、限りなくゼロに近いです。「移住者の3割が失敗」という記事を目にしたことがありますが、そんな統計はどこにもありません。
何故ならば、「移住者」の定義は、自治体でマチマチです。「失敗」の定義もありません。そもそも、「移住者が都会に戻った」ことを把握するなど、概ね困難といえるからです。根拠のない情報に惑わされないことが大切です。
地域に受け入れてもらえることが大切
皆さん、「地域に受け入れてもらえる人」とは、どのような人だと思いますか?
移住者を受け入れる自治体や地域も、移住者が集落に加わることに不安なのです。決して、移住者だけが不安なのではありません。
最近では、移住の窓口を設置し、専従者を配置する自治体が増えてきました。もしも、皆さんが地方の自治体に移住の問い合わせをした時、相手はどこをチェックすると思いますか。
それは、「この町に溶け込めそうな人かどうか?」です。
皆さんが、自治体に移住相談をした時や地域の人とお会いした時に、「この町に溶け込めそうな人かどうか?」をチェックされていることを忘れないでくださいね。
移住を成功させるためのチェックポイント
最後に、移住を成功するためのチェックポイントをお教えします。ぜひ移住を実行する前に、次の10項目をチェックしてみてくださいね。
1. 移住の目的は明確ですか。
2.家族や周囲の了解は取れていますか。
3.家族は田舎暮らしに向いていますか。
4.移住をするデメリットも考えましたか。
5.移住のための資金は準備できていますか。
6.移住後の収入は確保できていますか。
7.移住地の情報収集はできていますか。
8.新しい住居には満足していますか。
9.移住する先は移住者の受け入れに積極的ですか。
10.移住に向けて「準備リスト」は作成しましたか。
田舎に移住をしたいけれど、「地域にうまく溶け込めるのか」を心配する人は少なくありません。しかし、地域に上手に溶け込めるかは、地域の問題ではなく個々の問題です。
「仕事の転勤も移住も同じ引っ越しである」とお話をしましたが、移住だからと構えないことが大切です。
それでも不安ならば、古い慣習が残る町は避けてはいかがでしょうか。決して、古い慣習の残る町が悪いわけではありません。ただ、「地域に上手に溶け込めるか」を心配するような人には向かないということです。
田舎移住が素晴らしい経験になることを願っています。
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この記事を書いた人
仲西 康至
移住プランナー/移住専門FP/「一般社団法人移る夢」代表理事/空き家相談士 大阪出身。2006年国内初の移住専門FPとして独立。家族で北海道に移住し、「移住プランナー」として活動を始める。2022年には総務省「地域プロジェクトマネージャー」として鹿児島に移住。大阪・北海道・鹿児島の3拠点生活を実現。これまで18年間の活動で2500組の移住相談に対応。著書「移住を成功させる5STEP」「雪国に移住 住宅選びのテクニック20選」他
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