300万円以下でも広い農地付きの物件に出会えるのが田舎暮らしのいいところ。自給自足的な暮らしを求め、千葉県から山口県萩市へ移住し、ホームステイ型民泊を開業した笹瀬さんファミリーを紹介しよう。
掲載:2025年3月号
300万円以下の中古住宅平屋建てでホームステイ型民泊を始動
笹瀬さんの暮らす、宿場町の面影が残る萩市佐々並地区。地元有志の「ささラブ応援隊」が地域活性化に取り組み、同団体を通じて転入した移住者には米1俵を提供。
笹瀬智広さん(48歳)・香織さん(45歳)夫妻は、3人の子どもと共に2023年12月に千葉県から萩市へ移り住んだ。「会社員として働くうち、学生時代から思い描いていた自給自足の暮らしがしたいという思いが強くなったんです。
笹瀬さん夫妻は梨央さん(14歳)、悠ノ介くん(11歳)、三士郎くん(8歳)との5人家族。
萩市を選んだのは、美しい海と山があり、家のそばに田畑の付いた物件が充実していたから。幕末から明治維新にかけての萩市の歴史にもひかれました」と智広さん。
空き家情報バンクで見つけた物件は、築45年で田畑付き。価格は200万円だった。空間を広く使うため、キッチンの隣の和室と洋室をつなげ、6Kだった間取りを4LDKへ。
笹瀬さんが萩市に200万円で購入した平屋。
傷んだ床の張り替えや壁の塗り替えはDIYで行う一方、浴室の改修などは業者に依頼。合計330万円ほどを要したものの、最大200万円の萩市の改修費補助が活用できた。
萩市の平屋を購入して移住した笹瀬さん夫妻。リビングダイニングとキッチンも一体感のある間取りで、常に家族の気配が感じられる。
リビングダイニング。洋室・和室間の壁を撤去し、ゆとりある空間に。床や壁もDIYで改修。
和室の1部屋を使ってホームステイ型民泊を運営。仏間は改修して洗面台を設置。
玄関もDIYで漆喰を塗り、下足棚を設置した。
「平屋だと1階・2階の荷物の上げ下ろしがなく、洗濯物の出し入れの動線がスムーズで、掃除の負担も感じません。子どもたちが別の部屋にいても声が聞こえるなど、家族の気配が常に感じられるのもいいですね」
そう口を揃える笹瀬さん夫妻は、新居を整えるとともに農業に着手。
1年目の米づくりは近所の人に教わりながらだったが、今年は自分たちで手植えや無肥料・無農薬栽培に挑戦しようと計画中。野菜はひと足先に不耕起栽培などを実践している。
家の前に600坪(2反)の田んぼ、周囲に合計150坪の畑がある。
昨年夏には民泊を始動。香織さんは「ここ佐々並地区はお米がおいしいのでそのPRをして、人を呼び込むきっかけにもなれば」と、地域の米を使ったカップケーキの製造・販売も開始。智広さんは別の空家を借りてカフェも開業し、育てた野菜を使った料理などを提供していく。
「The 34Sassys(サッシーズ)」の屋号で民泊のほかに、グルテンフリーの生米カップケーキも販売。 Instagram:@the34sassyshome、@the34ricecupcake
300万円以下の中古住宅平屋建て物件に出会える山口県萩市
夏ミカンが彩る城下町周辺には、今も武家屋敷や維新の志士ゆかりの地が残る。
萩市の魅力について、豊かな歴史や自然に囲まれた環境があることだと言う、「おいでませ、豊かな暮らし応援課」の蛭子亜伊さん。
「多彩な施設が集まる市街地、須佐に代表される美しい海岸部、のどかな山間部など、暮らし方に合わせて選べるのが萩市の魅力です」と蛭子さん。世界遺産でもある萩城下町などの名所のほか、「千石台大根」「萩の真ふぐ」「長萩和牛」「むつみ豚」など美食も満載だ。
萩市移住支援情報
住まいや仕事のことから子育てまでサポートが充実
移住希望者の相談への対応や空き家案内などを行う「はぎポルト―暮らしの案内所―」を、萩・明倫学舎4号館に開設。移住就業コーディネーターを配置し、就業支援も行っている。そのほか、空き家情報バンク物件契約者向けの改修費や家賃の補助、子育て世帯応援誕生祝金事業、多子世帯応援誕生祝金事業をはじめ、移住・定住に関する幅広い支援を実施している。
(問)はぎポルト―暮らしの案内所― 。☎0838-25-3819 萩市空き家情報バンク https://hagiporto.com/banklist/
文・写真/笹木博幸
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