テーマパークを目当てに出かけて大分県の魅力を知った。県の相談会でぴったりだと紹介された職場に思いきって転職移住。海を眺める静かな町は、意外にもイベントが盛りだくさん。やりがいのある仕事と穏やかな人に恵まれて新生活を楽しむ。
掲載:2025年3月号
大分県日出町(ひじまち)
国東半島の南側、南は別府湾に面する。日出城の城下町で、本丸下の海に棲む城下カレイが特産。サンリオのテーマパーク「ハーモニーランド」があり、「ハローキティとくらすまち」を標榜する。人口約2万7800人、年平均気温約16℃。JR日豊本線小倉駅から日出駅は約1時間15分。大分空港まで車で約30分。
大好きになった大分県に、何とかなると勢いで移住
お気に入りの場所の1つ、豊後大野市の「沈堕(ちんだ)の滝」には原付バイクで2時間ほどの旅。
田中さん(仮名・30歳)
2024年4月に兵庫県西宮市から日出町に移住すると同時に、隣接する別府市のNPO法人BEPPU PROJECTに勤務。もともとテーマパークや舞台などエンターテインメントが好きで、大阪の服飾専門学校を卒業後、移住まで劇団勤務で裏方に就いていた。
田中さんが初めて大分県を訪れたのは、サンリオキャラクターのショーやアトラクションが楽しめる「ハーモニーランド」が目的だった。そして、せっかく来たのならと県内をあちこち巡り、温泉や別府湾の海、おいしい食べ物などを知って、すっかり大分が好きになった。
「なかでも住むならここと思ったのが日出町です。ハーモニーランドが一番の決め手ではなく。私はショッピングも興味はないし、お酒も飲まないので、近くにお店はなくていい。静かで海があって星がきれい。でも田舎過ぎずちょうどいいんです」
転職を考えはじめた時期に大阪で開かれた大分県の移住相談会。参加した田中さんは「大分の魅力をもっと多くの人に知ってもらえる仕事ができたら」と移住への思いを話した。そこでぴったりの職場だと紹介されたのが、別府市でアートイベントの企画・運営やアーティストの移住・定住に関する事業など、アートを活用した魅力ある地域づくりを行うNPO。数カ月後に募集がかかったと連絡を受けたが、車の運転ができる人という条件に、ペーパードライバーだった田中さんは躊躇(ちゅうちょ)した。けれども、ちょうど大阪で開催中の大分物産観光フェアに出かけて気持ちを動かされた。
「それまで実家を出たことがなかったのですが、何とかなる!と勢いで転職移住を決めました。移住支援の方にはリモートで履歴書のチェックから面接の練習まで助けていただいて」
いちばん好きな風景は、町の南側に広がる美しい別府湾。
別府湾から昇る2025年の初日の出は自宅のベランダから拝んだ。
穏やかな大分の人に囲まれ、忙しくも充実した日々
転職が決まって移住後しばらくは、50分に1本のJRを使って通勤した。車を持つと職場まで約20分。早速担当したのは別府市内で開かれる文化・芸術イベントを集めた市民文化祭の運営支援や広報で、2024年は128のプログラムをサポートした。
「一度通れば道を覚える特技を活かして別府を走り回ってます。残業のほか土日にもイベントがあって忙しいですが本当に楽しい。大分の人は穏やかで、お世話になってばかりですよ」
休日にはハーモニーランドや温泉のほか、景色のいい場所に出かけて編み物をしたり。別府には九州最古の遊園地のラクテンチもある。
「ラクテンチではお正月にジェットコースターから餠撒きをします。撒くといえば大分県の特産品は乾シイタケで、乾シイタケフェスタではシイタケを撒きます。発想が楽し過ぎますよ」
イベントはほかにも盛りだくさん。あちこちで開かれるマルシェにも出かける。花火は別府市で1万発が夏1日、冬2日間。日出町でも春と夏に楽しめる。
ハーモニーランドには全国からファンが集まるが、園外に出て日出町を巡る人がいないのは残念だと田中さん。
「日出町をはじめ大分県の魅力を知って、もっともっと楽しんでもらえたらうれしいです」
移住転職1年目は市内で開かれたさまざまなアートイベントのPRや支援に走り回った。
地元で年に何度も見物できる花火。仕事柄、同時に流れるBGMなど演出を気にしてしまうそう。
移住して変わったこと
昼休みに温泉に入る日もありますよ!
通勤時間が短くなってゆとりができました。職場はフレックスタイムなので、ハーモニーランドに行ってから出勤したり。企業や市役所、市民の方、アーティストの方などたくさんの人にお会いできるのも面白いです。逆に私のことを面白がってくれますし。穏やかな人に囲まれ、私自身とげとげしたところがなくなったと感じています。
日出町移住支援情報
海と山に囲まれた「ほどよい田舎暮らし」ができるまち
日出町は温泉で有名な別府市の隣にあり、海と山に囲まれたコンパクトシティ。温暖な気候や豊富な湧き水など、豊かな自然環境に恵まれている。自然の豊かさだけでなく、交通アクセスが良好で生活に必要な施設や店舗が揃っていて、不便過ぎない「ほどよい田舎暮らし」が送れる。
お問い合わせ:日出町まちづくり推進課 ☎0977-73-3158
https://www.town.hiji.lg.jp/
移住検討者向けの移住体験施設。利用期間は4日以内。
「日出町への移住をお待ちしております!」(まちづくり推進課の佐藤龍生さん)
文/新田穂高 写真提供/田中さん、日出町
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