茅葺き屋根に黒光りした太い柱や梁。田舎暮らしを夢見る都会の人にとって、野趣あふれる古民家に住むことは憧れの一つです。しかし、古い建築物だけに選び方や買い方には注意すべき点も少なくありません。そこで今回は、古民家を利用したい人のために、買い方のポイントをご紹介します。地域によって特性のある古民家の種類や茅葺き屋根の修繕レポートも参考にして、夢を叶える第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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失敗しない古民家の買い方
初めて古民家を見学すると、あまりにボロボロでびっくりしてしまう人が少なくありません。また、住んでから古民家の欠点に気がつき、後悔する人もいます。そういう失敗をしないためのノウハウを紹介していきます。
どれだけ傷んでいるか見学時にチェック
現代建築の中古住宅と違って、古民家で補修不要なものはほとんどない。見学するときは、傷みはあって当たり前と覚悟しておくべきだ。ただ、問題は傷みの程度。例えば、屋根材が腐食して雨漏りまで発生しているような民家は、構造体まで傷んでいる可能性がある。専門家に診断してもらうのが得策だが、基本的には避けたほうが無難だ。
伝統工法の古民家は、土台や柱の一部が腐って傾いているものが少なくない。ジャッキアップして補正することは可能だが、地盤沈下によるものは大規模な工事が必要になる。素人判断は危険なので、専門家の判断を仰ごう。
台所・浴室などの水回り、トイレも傷みやすい部分。特に屋外のボットン便所に耐えられる都会人は少ないので、現況をしっかり把握したい。
古民家で問題になりやすいのは、納屋や物置などの多さと、そこにあるゴミ。その処分費用だけで100万円単位になる場合もあるので、見学時にきちんとチェックしておこう。
安く住むには工夫が必要
安いから古民家と考える人もいるが、はっきり言ってその発想は間違いだ。現代風の快適な住まいを望めば、リフォーム費用は新築よりも高くつくケースだってある。コストを安く抑えたい人は、過疎地の空家バンクを利用する、できるところは自分でコツコツ直す、空家になってからの期間が短いものを選ぶ、移住者が住んでいた古民家を探す、といった工夫が必要。特に日曜大工はローコスト化の大きな武器になるが、基礎の補正や屋内配線などプロに頼まざるを得ない部分は出てくる。専門家または地元の工務店に相談して、大まかな数字をつかんでおくのが無難だ。
不動産業者の自社物件なら、買い手の不安は解消できる。宅建業法の瑕か疵し担保責任は最短2年で、この間に雨漏りやシロアリ被害などの欠点が見つかったら、契約解除や損害賠償が可能になるからだ。契約書に「現況有姿売買(現況のまま売るという意味)」という文字があっても売主の業者は責任逃れできない。そのため補修を要する古民家物件は、まず仲介物件と言ってよい。もし再生古民家が自社物件なら、実績のある会社から買うのが安心だ。
古民家に住むなら地域に入る覚悟を
古民家の大多数は、農村集落内にある。そこでは住民同士が冠婚葬祭を手伝ったり、清掃活動・道普請・堰普請といった共同作業が欠かせない。移住者を別扱いにしてくれる地域もないわけではないが、地元の人とともに行動するのが原則。古民家の取得は地域社会へ直接入っていくことを意味するので、誰にも邪魔されずに気ままに暮らしたいという人には向かない物件タイプなのだ。
この 20年で多くの農村で移住 者の存在は珍しくなくなり、過疎化と高齢化が進む農村の人た ちも寛容にはなってきた。それでも敷地を塀で囲んだり、「私有 地につき立入禁止」の看板を立 てたりすると、地域に背を向け た行為と受け取られる。古民家 の現地再生では地元の人と仲よくしておくと何かと助けてもらえるので、素直な気持ちで地域 に入ることを心得よう。
それはできない、でも古民家 の味わいもほしいという人は、 移築再生または古材利用という手がある。別荘地を手に入れ、 そこに古民家を移築するか、化 粧として新築部材に古材を取り入れるといい。日本民家再生協会のデータでは、建築予算は2000万円くらいから可能にな るようだ。このやり方なら地域 トラブルの心配はない。
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