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田舎暮らしの本 7月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 7月号

5月2日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

光に当たろう 風や光とともに ゆったりと生きていこう/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(68)【千葉県八街市】

執筆者:

忘れられない人々、筑紫哲也さんと小倉弘子さん。そして「光」を浴びる田舎暮らし

楽天的な生き方を

さて、もうひとり、僕には好きだった人がいる。2008年に亡くなった筑紫哲也さん。

朝日新聞の「一語一会」。そこに登場したのは、かつてその筑紫さんを上司として働いていた小倉弘子さん。50歳でTBSを辞めて目下のところ仕事なし。「何もせず家にいる。イコール収入ゼロ。忘れられそうで怖いです……」。そう言って笑わせる。筑紫さんはそんな小倉さんを「どんな時でも楽天的に渡っていく人」と評したそうだ。

 

筑紫さんは彼女の結婚式で、吉野弘さんの『祝婚歌』を朗読する。

立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には色目を使わず
ゆったりゆたかに
光を浴びているほうがいい

 

僕の仕事ぶりをそばで見たら「ゆったり」の言葉は当たらない、ビンボー暇なし。あくせく働いていると思うはず。午前の作業をすませ、泥だらけの作業着のまま部屋に入ってランチする。パソコンを開く。野菜のお客さんや業務上の連絡を確認し、ランチの皿を左手で持ちながら先方にすぐメール返信する。

加藤登紀子さんの言葉「光に向かって立つ」

田舎暮らしの10月の23
→田舎暮らしの10月の23

そして再び畑。しかし本人の心は「ゆったりゆたか」である。毎夏、裸になって光を浴びる。わざわざ裸……。バカじゃないか、そんな声もあるが、田舎暮らしの適正判断。ひとつは光が好きかどうか、光に貪欲であるかに関わる。我が心がガンガンの光に浮き立つのは島生まれ、夏休み40日を海で泳ぎ続けたせいか。日焼けやシミを心配する人に真夏の光は「ゆったり」を超え「酷」かもしれない。でも・・・。加藤登紀子さんは「ひらり一言」で書いている。

「光に向かって立つ。光を背負わない」。大きな後ろ盾に頼ると、あなた自身が影になってしまう。光に向かって行こうとするからこそ、あなた自身が輝く。

 

男性にもある更年期障害

光は心を明るくするのみならず、強い骨も作ってくれる。骨粗鬆症が増えている。「患者の9割が女性」という新聞の報道があった。閉経によって、骨が壊れるのを防ぐエストロゲンが急激に減る。骨密度が低下、骨がもろくなる。その対策は、食事からのカルシウム摂取、そして運動と日光浴。

ジョギングなど重力のかかる運動で刺激を受けることで骨は強くなる。カルシウムの吸収を促すビタミンDは日光を浴びることで生成される。世間ではいかに光を遮断するかというテーマには熱心、いかに多く光に当たるかを述べることはない。運動せず室内に籠ることが多く、外出の際も完全防備で光を遮る……。これでは骨の折れる老後だけが待っている。

一方、わりあい最近、男にも更年期障害があると知って驚いたが、こちらもやはりホルモンの影響。テストステロンの減少で疲労感、倦怠感、イライラ、性欲減退などを招く。引き金は職場でのストレス。テストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれる。他人から評価されると増える、逆に職場での人間関係や配置転換などで減る。

40何年か前。どうにも相性の良くない上司との日々。きっと僕のテストステロンは減少していたはず。しかし、幸い逃げ場を作った。ひとつは1回目の田舎暮らし、もうひとつはマラソン。サブスリーを目標に走り続けた。更年期障害の打開策は運動、筋トレ、リラックスできる時間だというから、偶然ながら、我が「逃げ場」である田舎暮らしとマラソンは効果絶大だったということになる。

「トカイナカ」に生きる男の緊張とエンタメ

相性の悪い上司との関係をどうにか耐えた6年間。会社を辞めて10年後、創業者が亡くなり、都内のホテルで開かれるお別れ会に招かれた。

ホテルのロビーで椅子に座っている僕にあの上司が歩み寄る。そして言った。あなたには悪いことをした……。

小さな笑顔とともに真心が感じられる言葉だった。今の僕には疲労も倦怠も性欲減退も当てはまらない。他人からの評価に遠い百姓生活。ストレスフリーということか。人間の体の多くはホルモンに支配されている。長く医学雑誌に携わっていた僕はホルモン名を覚えるのに難儀した。だから現在も多くが記憶に残っている。

筑紫哲也さんが朗読した詩の言葉……。「トカイナカ」に、ひきこもる男には、まさしく世間では、立派でありたい、正しくありたいとの思い、そして無理な緊張が溢れているようにも思える。その緊張をあつらえモノのエンタテイメントで相殺する。

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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