空き家再生への挑戦は、ワクワク感がたまらない
今回は土地の農地転用、未登記建物の登記手続きなども進めながら、草木を刈り、水路を清掃し、庭石や木の根を除去。初めての屋根の葺き替えでは、重いスレート屋根の解体に苦戦したほか、苦行のような土間打ちにも取り組んだ。こうして1年半で工事を終え、23年3月に開業した「AKIYA cornerstone(コーナーストーン)」は、イギリスのアンティークの建具を使った和洋融合のデザイン。宿泊客からの要望が多かった屋根付きのバーベキュースペースや大型犬対応のドッグランを設置し、人気のサウナも取り入れた。
20万円で購入してセルフリノベした「AKIYA cornerstone」は、建物裏側に広々とした芝生のドッグランを整備。傷んだ建物は解体し、バーベキューグリルやピザ窯付きの屋外ダイニングを併設した。
「AKIYA cornerstone」
2名1泊3万9000円~(食事なし)。小型犬1頭3000円~大型犬1頭4000円(頭数制限あり)。
【Before】
【After】
建物の形状や一部土壁の仕様を引き継ぎながら、窓、外壁、屋根を改修。外壁に焼き杉板を取り入れたレトロモダンな姿に生まれ変わった。
キッチンは吹き抜けにして、2階の一部をデザインとして活かした。アイランドキッチンやアンティークの建具が印象的。
生い茂っていた草木を伐採してドッグランの奥にサウナを設置する作業の様子。基礎から手づくりした。
薪ストーブサウナは、内装をヒノキ、ベンチをヒバで造作。クールダウン用の水風呂もある。
取り壊されてもおかしくない空き家を、あえて再生することについて夫妻はこう話す。
「そもそもお金がないのもありますし、見捨てられた空き家の可能性を確かめたい気持ちもあります。私たちにとって空き家の活用はビジネスではなく、あくまでもチャレンジ。ファッションでも何でも量産品があふれる時代に、一点ものの作品を残したいんです」
2軒目の宿の完成後、疲れきっていた2人だが、「またワクワクが欲しくて」と24年3月に新たな空き家を購入。今秋までの完成をめどにアトリエ兼ショップにリノベーションし、ファッションブランドをリニューアルして再開する予定だ。
「ずっと空き家のことばかり考えてきて、淡路島自体を楽しんでいない気はしますが、ここは都会に近いのに静かな環境が魅力です」と話す夫妻。最近は人生のバランスも大切だと考え、自転車に乗ったり、カヤックをしたりして過ごすこともあるという。
智哉(ともや)さん、シェリルさんに聞いた!
大変だったこと&楽しかったこと
●大変だったこと
「屋根の葺き替え中にシェリルが2階の屋根から転落したんです。幸いケガはなかったものの、初めての作業には多くの危険が伴うことを実感しました」(智哉さん)
「体力的にきつかったのが土間打ちです。コンクリートが固まる前に作業を済ませる必要があり、生コン車から30kgほどになるバケツを100回くらい運ぶ作業が本当に大変でした」(シェリルさん)
●楽しかったこと
「『もう価値がない』と言われた空き家が、自分たちの手で宿として完成したときには本当に感動しました」(智哉さん)
「どうなるかわからないほうが、やっていてワクワクします。見捨てられたような空き家を生き返らせていく作業は、クリエイターとしての作品づくりに通じる喜びがあります」(シェリルさん)
文・写真/笹木博幸 写真提供/智哉さん・シェリルさん
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