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田舎暮らしの本 9月号

最新号のご案内

田舎暮らしの本 9月号

8月1日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

なにんとかなるさマインドの利回りはNISAよりも高いかも/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(70)【千葉県八街市】

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「自分の存在意義」と仕事の情熱

仕事の「楽しさ」と金銭では測れない価値

さてしめくくりは30代女性の人生相談。なんと大学卒業後7回転職。転職の理由は自分の存在意義がわからない・・・。しかし回答者は優しい。転職が多くたっていいじゃないですか。ひとつの会社に長く勤めることが美徳だなんて、ただの固定観念だと思いますよ・・・。

でも、回答の後半、相談者に問いかける。少し本音が漏れる。あなたの好きなこと、趣味は何ですか?

とても昭和な考え方だと思いますが、私は人の情熱こそが物事を動かすのだと信じています。あなたがその仕事を情熱を持って出来るのであれば、その仕事が好きだと思えて夢中になって出来るのであれば結果はおのずとついてくるものだと思います。好きなことを仕事に出来ればそれが一番です・・・。

最近は転職が多いと聞くが7回とはすごい。田舎暮らし2回、会社勤めは1回きり。僕は驚くのだ。相談者は、会社の業績に貢献できているのか役に立てているのか、給与に見合った仕事はできているのかと自問する。責任感の強い女性なのかもしれない。

「仕事に行くのが楽しいと思えることが一番・・・」。回答者のこの提案は大切なこと。どなたの言葉だったか忘れたが、ある有名人が「好きなことを仕事にするな、苦労が多く、カネにはならないから・・・」そう言ったのを何かで読んだ。なるほど正解、僕自身の暮らしがまさしくそう。年中無休で働いて、必要経費を差し引くと月収は10数万円にしかならない。

人生にはゼニカネで測れないものがあるらしい。自分の仕事が好きか、職場に行くのが楽しいか。終日雨という日、肌まで滲みて寒い。手が白くふやける。でも淡々ノルマを果たす。明日のため、次の春のため。

でも不思議。人生にはゼニカネで測れないものがあるらしい。自分の仕事が好きか、職場に行くのが楽しいか。終日雨という日、肌まで滲みて寒い。手が白くふやける。でも淡々ノルマを果たす。明日のため、次の春のため。

暮らしには小さくても変化が溢れている

風呂から出て晩酌。たいてい8時頃。気温30度でドカドカ汗が出た日はビール。それ以外は(1.8リットル1000円の)安い赤ワイン。ワインを飲みながらアヴェ・マリアをパソコンで聴く。パンフルート独奏、独唱、オーケストラ、さまざまなバージョンがパソコンに貯めてあり、4つか5つ続けて聴く。

聴きながら、今日の仕事を振り返る、明日の予定をボンヤリ考える。田舎暮らしの良いところは何か。暮らしに、小さいけれど変化が溢れていることであろう。季節が変化する。風景が変化する。野菜も果物も変化する。部屋の電気カーペットで作ったキャベツの苗は3か月後の今ズシリと重く、ブルーベリーは群青色を、トマトは鮮紅色を深くする。

畑という名の「職場」へ

職場に行くのが楽しいか・・・畑という名の我が職場。そこに行って目にするあれこれの変化。それが生きる糧。堆肥投入、草取り、結束、防寒。今日の作業は明日の変化を期待してなされる。午後8時のアヴェ・マリア、今それがゆるやかに前奏する。明日対面するかも知れない様々な変化の調べ。それを甘く、静かに奏でてくれている。

田舎暮らしの良いところは何か。暮らしに、小さいけれど変化が溢れていることであろう。季節が変化する。風景が変化する。野菜も果物も変化する。部屋の電気カーペットで作ったキャベツの苗は3か月後の今ズシリと重く、ブルーベリーは群青色を、トマトは鮮紅色を深くする。

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  • 仕事の合間のおやつ。イチゴもクワも終わった。今はラズベリーの季節である。硬くプチプチとしたものが歯に当たる。それが難点という人もいようが、僕は気にしない。熟したものはさっと茎から離れる、そのまま口に放り込む。収穫期は1か月と短い。
  • 梅雨入りが近いと報じられている。今日が梅雨入り前の最後の晴天であるらしい。気温29度。しかし空気は乾いており肌に爽やか。気分よくランニングをすませ朝食の準備。上の写真の電気ポット。消費電力1000ワット、1リットルの水がたちまち熱湯になるところがいい。トースターでパンを焼き、モンカフェをカップにセットし、この風景を眺めながらお湯が沸くのを待つ。
  • 青い空。白い雲。気温は高いが吹く風は爽やか。空を見上げながら思い出す。森林で社員研修をする動きが企業に広がっているという新聞の記事。社員のストレス軽減、連帯感の向上、ひいては離職率の低下が狙いという。トレーナーの指導のもと、森林を散策してにおいをかぐ、足を水に漬ける、しばらく一人になってリラックスする。森林浴はウェルビーイング(心身ともに良好な状態)につながる・・・。
  • ついに雨の季節である。前にも書いた、雨がキライ。僕はどんなに忙しくとも晴天には必ず布団6枚を干す。雨だと不可。およそ1か月、湿っぽい布団で寝る。心もチョッピリ湿っぽい。
  • サツマイモ畑で足を止め、育ち具合を観察する。200本の苗を植えたのは5月24日(この下の写真)。活着し、根を伸ばし始めているが、高温を好むサツマイモは雨の中ではツルの伸びは鈍い。勢いを増すのは7月の半ば。そんなこんなでサツマイモを観察しているところで僕は便意を感じる。
  • サツマイモの苗を植えた時の奮闘について書いておこう。まず苗を刺しこむ位置を深く耕す、次に左右に深さ30センチの溝を掘る。掘った土は畝に盛り上げカマボコ状とする。ビニールを広げ、裾を溝に落として土で固定する。かぶせたビニールに苗を刺しこむ。1本の長さ20メートルを5本。どれほどのエネルギーを要したかおわかりだろう。
  • 機械を使えば早いし綺麗な仕上がり・・・近隣の農家はみなそうだ。僕は無料の筋トレジムに行ったつもりで半分楽しみながらこれをやる。
  • ミミズがいっぱいいる畑の野菜はよく育つ。作業中に枯草の下からにょろにょろ出て来るミミズ。手近にバケツがあればそれに、なければ作業ズボンのポケットに入れておく。水槽のウナギたちが美味しい食事を心待ちにしているのだ。
  • ウメは収穫後半になると木に登らずとも勝手に落ちて来る。前半は青梅だった。そして今は赤いウメ。ハチミツと合わせて煮る。すこぶる美味。朝食のパンによし、晩酌ワインのつまみによし。2時間で出来るところもせっかちの僕にはいい。
  • 僕がスコップ仕事を始めると必ず鶏が近寄って来る。知能はかなり高い。僕の手にあるスコップ=ミミズや昆虫、その思考が働くのだ。旧石器時代への旅、その連載第四回には「土に戻りつながる命」というタイトルが付いていた。まさにこの場面がそうである。
  • 今日は6時半で仕事を終えた。足をうんと後方に伸ばし、曲がった背骨を矯正しながら夕刊を読む。一面トップは知床半島でカラフトマスの遡上が激減という記事。かつて2000箇所あった産卵床がわずか6箇所になったという。気候温暖化、海水温の上昇が背景にあるらしい。
  • 梅雨入りからわずか10日。天気予報はずらり晴れマーク。今日の気温なんと35度。このまま梅雨明けかもとの予測がある。よっしゃ夏だぜ。今日バナナたちと喜びを分け合う。
  • エネルギー自給はどこまで可能か。始めは軽い気持ち、インバーターもたった300ワット。でも小さな成功が熱を帯びた。さらなる目標アップになった。今では小なれど立派な発電所だ。
  • 人生にはゼニカネで測れないものがあるらしい。自分の仕事が好きか、職場に行くのが楽しいか。終日雨という日、肌まで滲みて寒い。手が白くふやける。でも淡々ノルマを果たす。明日のため、次の春のため。
  • 田舎暮らしの良いところは何か。暮らしに、小さいけれど変化が溢れていることであろう。季節が変化する。風景が変化する。野菜も果物も変化する。部屋の電気カーペットで作ったキャベツの苗は3か月後の今ズシリと重く、ブルーベリーは群青色を、トマトは鮮紅色を深くする。

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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