「自分の存在意義」と仕事の情熱
仕事の「楽しさ」と金銭では測れない価値
さてしめくくりは30代女性の人生相談。なんと大学卒業後7回転職。転職の理由は自分の存在意義がわからない・・・。しかし回答者は優しい。転職が多くたっていいじゃないですか。ひとつの会社に長く勤めることが美徳だなんて、ただの固定観念だと思いますよ・・・。
でも、回答の後半、相談者に問いかける。少し本音が漏れる。あなたの好きなこと、趣味は何ですか?
とても昭和な考え方だと思いますが、私は人の情熱こそが物事を動かすのだと信じています。あなたがその仕事を情熱を持って出来るのであれば、その仕事が好きだと思えて夢中になって出来るのであれば結果はおのずとついてくるものだと思います。好きなことを仕事に出来ればそれが一番です・・・。
最近は転職が多いと聞くが7回とはすごい。田舎暮らし2回、会社勤めは1回きり。僕は驚くのだ。相談者は、会社の業績に貢献できているのか役に立てているのか、給与に見合った仕事はできているのかと自問する。責任感の強い女性なのかもしれない。
「仕事に行くのが楽しいと思えることが一番・・・」。回答者のこの提案は大切なこと。どなたの言葉だったか忘れたが、ある有名人が「好きなことを仕事にするな、苦労が多く、カネにはならないから・・・」そう言ったのを何かで読んだ。なるほど正解、僕自身の暮らしがまさしくそう。年中無休で働いて、必要経費を差し引くと月収は10数万円にしかならない。
でも不思議。人生にはゼニカネで測れないものがあるらしい。自分の仕事が好きか、職場に行くのが楽しいか。終日雨という日、肌まで滲みて寒い。手が白くふやける。でも淡々ノルマを果たす。明日のため、次の春のため。
暮らしには小さくても変化が溢れている
風呂から出て晩酌。たいてい8時頃。気温30度でドカドカ汗が出た日はビール。それ以外は(1.8リットル1000円の)安い赤ワイン。ワインを飲みながらアヴェ・マリアをパソコンで聴く。パンフルート独奏、独唱、オーケストラ、さまざまなバージョンがパソコンに貯めてあり、4つか5つ続けて聴く。
聴きながら、今日の仕事を振り返る、明日の予定をボンヤリ考える。田舎暮らしの良いところは何か。暮らしに、小さいけれど変化が溢れていることであろう。季節が変化する。風景が変化する。野菜も果物も変化する。部屋の電気カーペットで作ったキャベツの苗は3か月後の今ズシリと重く、ブルーベリーは群青色を、トマトは鮮紅色を深くする。
畑という名の「職場」へ
職場に行くのが楽しいか・・・畑という名の我が職場。そこに行って目にするあれこれの変化。それが生きる糧。堆肥投入、草取り、結束、防寒。今日の作業は明日の変化を期待してなされる。午後8時のアヴェ・マリア、今それがゆるやかに前奏する。明日対面するかも知れない様々な変化の調べ。それを甘く、静かに奏でてくれている。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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