田舎暮らしがもたらす矛盾と豊かさ
ボクシング好きの“ネクラ男”の矛盾
ずっと晴れと曇りと雨が入り混じる天気であったが、今日はどうやら安定、そして暑い1日になりそうである。爽やかな風を受けながらランニングに向かった。走りながら昨夜のボクシングの試合を思い出す。僕はサッカーもバスケットも駄目。唯一心躍るのはボクシングなのだ。暗く沈み込む音楽が好きな男。そいつが激しく殴り合うスポーツを好む。少しばかりの矛盾もあるが、それもまたよし。
KOシーンがなかったのは物足りないが、井上尚弥のテクニックは素晴らしかった。それ以上に僕がすごいと思ったのは最終ラウンドまでフットワークが軽かったこと。ボデーを打たれた相手選手の足の動きは徐々に鈍くなったが、井上にはそれがなかった。フットワークが変化しない。下半身が強い。田舎暮らしを途中挫折させないための条件でもある。
カボチャ畑が見せたアート
ツルが描いた自然の造形美
朝食をすませて畑を見回り点検する。作物Aが終わったらBに引き継ぐ。さらにC、Dと続く。少品種を大量に作る農家の畑には途中の休みがあるが、我がチマチマ多品種農法には休みがない。朝の見回りでまず気が付いたのはカボチャの葉がほとんど黄色になっていること。間もなく撤去である。
カボチャのアートを楽しむ
カボチャを撤去したら来月、ニンニク、タマネギを植えようか。そこで目に留まったのがこの上の写真だ。期せずしてアートになっている。冬の間に使用したビニールトンネルのパイプ。それを5月、わきに立てかけておいた。カボチャのツルは10メートル近くを這ってこのパイプにからまり、こうして実をならせたのだ。ざっと勘定してカボチャは畑に100個ある。すでに収穫したものと合わせると四畳半の床が埋まるほどになる。
保存食としてのかぼちゃと「まだ来ぬ秋」
カボチャは貴重な食品である。栄養的に優れているだけでなく、長期保存が可能。ネズミに齧られさえしなければ来年春まで食べられる。さて、9月も半分が過ぎた今は夏なのか秋なのか。気温こそ少しばかり下がったが、カラッとした秋の空気には程遠い。高い湿度は野菜を苦しめる。かつまた僕をも苦しめる。6月半ばから3か月、エアコンなし、2方向の窓を開け、扇風機を朝まで回して熱帯夜をしのいできた。長い時間「強」でフル稼働する扇風機は熱を持つ。この扇風機をも早く仕事から解放してやりたい。本物の秋は・・・まだか。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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