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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

10月31日(金)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

貧しさと豊かさと、その真ん中あたりにある田舎暮らし/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(76)【千葉県八街市】

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魔の悪い自分にイライラ

失敗も不便も暮らしの財産になる

寒さは募る。これでほんとに10月かよ・・・舌打ちする。ふだん舌打ちなんかしないけれど、朝は毛糸の帽子やマフラーまで必要なくらい冷えると、ちょっと舌打ちする。

ピーマンとナスに防寒を施す。すでに一度やってある。しとかしまだ足りない。ビニールを追加するのだ。ピーマンもナスもちゃんと整列した状態では植えられていない。かつ道路側ゆえハミ出すのはまずい。デコボコ。なんともひどい見てくれ。でも防寒の役目は果たすだろう。

気温低下に備えてビニールで防寒対策が施された畑のピーマンの株。秋冬の家庭菜園作業。

面白い人生相談を目にした。本人は真剣に悩んでいるのだろうが、笑いを取ろうとしているのかと思うくらい面白かった。70代のパート男性は経済的な心配はなく、家族、友人にも恵まれている。その彼はこう言う。

エレベーターにはタイミングよく乗れません。買おうと思っていたパンは最後の1個を目の前で他の人が取ってしまいます。ハトの糞が頭に落ちたり、誰もいないと思って歩きながらオナラをしたらすぐ後ろに若い女性がいたりしたことも。若い頃、たまたま無断で5分ほど早く退社しようとしたら、めったに合わない社長と玄関で鉢合わせしたこともありました・・・・

僕もしょっちゅう歩きながらオナラをするが後ろに若い女性はいない。ハトの糞が頭に落ちることはないが、泥だらけのビニールをヤブから力任せに引っ張りだそうとしたら土のかたまりが目に飛び込んだことはある。しかし最も間の抜けた話はこれだ。以前から調子の悪い太陽光発電のインバーター。ひどい雨模様だし、今日はこいつの点検修理をやろう。

固まってしまったボルトを外すのにまず苦労する。やっと開いたカバー。配線はとんでもない数。それを丹念にチェックし、ついでに内部のほこりも取る。さてこれでどうだ。プラグを差し込み、部屋の電気がつくようにセット。でもつかない。プラグの差込口は4つあるのでそのたび部屋と現場を往復するがダメ。

このインバーターはアウトということか。倉庫に入り長く使わなかった別のインバーターに交換してみる。通電するがOUTPUTのランプがつかない。うーん、困ったなあ。バッテリーとインバーターをつなぐケーブルを外したり、つないだり。このへんで我が頭と意識はだいぶ疲れてきた。

最初のインバーターは入電もOUTPUTのランプも正常に点灯する。もう一度トライしてみるか・・・ここで大きなミスをやらかす。現場にはあれこれのモノがあって見通しが悪い。天気のせいで暗い。バッテリーからのケーブルをつないだ瞬間、異音とともに煙が出た。なんと、めったにやらないミス。僕はプラスとマイナスを逆につないでしまったのだ。

このインバーターはアウトということか。倉庫に入り長く使わなかった別のインバーターに交換してみる。通電するがOUTPUTのランプがつかない。うーん、困ったなあ。

今日はもうダメか。電話が鳴ったのを機に作業を中止。ランチの支度に取り掛かった瞬間・・・あれっと思う。さっき、現場と部屋を何度も往復したケーブルだが、なんだよ、オレは違うやつにつないでいた、電気がつくわけないじゃないか。パソコンの部屋には5本のケーブルがある。数が多いとはいえ、アホな単純ミス。やっと点灯した部屋の明かりを喜びながら、人生相談のあの男性の間の悪さは笑えないなあと苦笑いした。

自然とともに暮らす知恵と循環

未来を見据えた植樹の考え方

木を植えるときは1本だけでなく3本植えなさい。日よけのためと、果物のためと、美観のために

朝日新聞「折々のことば」から。アフリカのことわざであるらしい。鷲田清一氏はこう解説する。

事を起こす時には、目下の関心に囚われず、広く世界のこと、はるか先のことまで考えるようにとの謂。思考と想像の地平を拡げてゆく力がひとを大人にする。

植樹という具体的行動とともに、もっと深い精神の働きについての導きの言葉であるらしい。そして、読んだ僕はまず、40年余り前の自分の行動を恥じた。これで百姓になれる・・・その喜びでもってひたすら果樹の苗木を買い、植えまくった。結果、我が庭も畑も迷路みたいになっている。ここまで大きくなるとは知らずに植えたヤマモモなんか、今や家の屋根をあっさりふさぐ、高さ10メートル近くにまでなった。

ここまで大きくなるとは知らずに植えたヤマモモなんか、今や家の屋根をあっさりふさぐ、高さ10メートル近くにまでなった。

アフリカの諺にはきっと笑われる。目下の関心にとらわれた40年余り前の僕は広く世界のこと、はるか先のことを考えていなかったのだ。でも今、プラスとマイナス、相殺すれば、いくらかおつりがくる。毎年4月から5月、新芽が芽吹き、若葉が広がる。春の光が降り注ぐ。目の前は楽園になる。冬枯れの寂しさ侘しさが募っていたぶん、新緑の季節は心が空を舞うほどに美しい。そして、柿、アンズ、キウイ、ミカン、イチジク、梅、ヤマモモ、フェイジョア、デコポン、プラム、栗、ポポー、ブルーベリー。好きなだけ果物が食べられるのである。

朝のハウス

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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