田舎暮らしとは、あえて孤独を選ぶことである
孤独は不便ではなく豊かさの形
10月も今日で終わる。雨続きに苦しめられたが、昨日までの4日間、太陽に巡り合えた。野菜も困るが、晴天なしで困るのは作業着も作業靴も濡れていないものがなくなることだ。よって、さあ晴れたとなると洗濯に邁進、物干し竿がいっぱいで、竿に乗り遅れたパンツやシャツは庭木の枝に引っ掛けたりする。しかし、晴れたからとて万々歳ではない。なんと朝の気温は8度まで下がる。
この上の写真の右は3日前に防寒を施したミカン。成木になれば零下の気温にも耐えるが、これはまだ植えて2年目の若木。この冷え込みは辛かろう。一方で、長期栽培を目論み、毎年12月になる頃までの収穫を目指してあれこれ手を尽くすナスとピーマン。残念ながらナスは元気を失った。しかしピーマンはナスより寒さに強く、元気。大収穫が続いている。
冒頭に掲げた話を再びここで。物価高で生活が貧しくなったと感じる、こう答えた人が61%・・・コメ5キロが4200円では高くて買えない、だから朝食はパンにしているという人もいるらしい。このエピソードで僕が感じたことを正直に。おそらくそういう人は、6枚切り180円とかの食パンを買って食べているかも。それなら、2枚食べるとしても月額1800円で済む。なるほどコメより安い。
そうした節約生活をしている人の心を傷つけてしまうかもしれないが、力を込めると握りこぶしの中に納まるような安い食パンを僕は食べない。他はケチっても、パン好きの僕は高いが美味しいパンを食べる。単に腹を満たすものなのではなく、うまいパンは珈琲とペアを組んで朝の幸福感を増し、働く意欲を高めてくれるのだ。
たしかにスーパーに行くと食料品が高くなったことがわかる。いちばん驚くのがおにぎり200円という値段だ。若い頃の100円という値段が頭にこびりついているせいか、そりゃあんまりだという気持ちでスーパーの棚の前を通り過ぎる。
暮らしが貧しくなったと感じる人が多い一方で、ボロ家暮らしの僕が腰を抜かしそうな話もある。首都圏の新築マンションが高騰しているという話は以前から耳にしているが、過日の新聞報道で、すごいと再認識した。場所は東京港区。4LDKで80平方メートルが1億6000万円。これを30代夫婦が40年のペアローンを組んで買った。夫婦の年収は合わせて2000万円だという。
おにぎりの値段同様、昔のことが頭に残っている僕は普通の勤め人が港区に住むという時代の変遷に驚く。港区といえば、各国大使館や歴史的な建造物が多く、そこに住んでいるのは遠い先祖の代につながっている人たちだけだ。
例えば、僕が携わっていた医学雑誌の印刷は凸版印刷だったのだが、その下請けの印刷会社が港区にあり、出張校正などで頻繁に出入りした。現在ほどではないが45年くらい前にも高層建築がポツポツと出現。そんな環境の中で、僕が出入りする印刷会社は父、息子、娘など10人が働く家族経営で、かなり古い会社兼自宅の平屋には印刷機械と金属製の活字がズラッと並ぶ巨大な棚があった。
コンピューターの時代に生まれ育った人には理解しにくいだろうが、原稿を左の手に持ち、アイウエオ順に並ぶ活字の中から1字ずつ拾ってつなぎ合わせ、文章を完成させる。気の遠くなるような作業だったのだ。
少し話がそれたが、50年ほど前の港区を知っている僕には、そこに40階もの高層マンションが立ち並び、しかも一般の会社員が何倍もの競争率を勝ち残って購入し、住む。驚き以外の何ものでもない。30代夫婦で年収が2000万円だ
とは。5キロ4200円のコメに躊躇する人たちがいる一方でこの事実。株価も5万円を突破して・・・ニッポンという国は豊かなのか貧しいのか。よくわからない。
今の僕は旅行も外食も全くしない、先にそう書いた。いわばレジャー費用はゼロという暮し。ただし遊ばないわけではない。この下の写真がその遊びの1例。パソコンデスクのわきでブロッコリースプラウトや大根、緑豆などのモヤシを作る。器は二重構造になっており、下に水が張ってある。並べた器の下は電熱マット。保温のために蓋がしてある。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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