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田舎暮らしの本 12月号

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田舎暮らしの本 12月号

10月31日(金)
890円(税込)

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田舎暮らしとは「ワーク・イズ・ライフ」である/自給自足を夢見て脱サラ農家40年(77)【千葉県八街市】

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ワーク・イズ・ライフ 苦役の労働 5割でもご免だ

田舎暮らしは働くことが生きること

コスパは他の野菜に比べるとあんまり良くないのに、この時期になると毎年イチゴに手間と時間とカネを僕はかける。広い面積を必要とする。なった実は地面に転がしたままゆえ傷むものがある。イチゴは単位面積当たりのコスパが悪い、でもやめられないのは、まだ霜や氷の張る2月に可憐な花が咲き、3月には赤いイチゴが味わえる、その喜びが忘れられないからであろう。

この時期になると毎年イチゴに手間と時間とカネを僕はかける。広い面積を必要とする。なった実は地面に転がしたままゆえ傷むものがある。

1週間前、そのイチゴのために新しいビニールハウスを買い(2万5000円)、設置した。ハウスの設置そのものも苦労だが、設置場所を準備するのが大変。枯れていながらなお地中の根っこはすさまじい、そんな夏草を5メートル×13メートル、完全撤去するには大いなるエネルギーを消費した。

そして植え付けた140ほどのイチゴ。今日はそれに受け皿サポーターを取り付けてやる。さっき書いたように、これまで僕はイチゴは地面に転がしていた。時間の許す限り赤くなりかけた実を回転させてやったりするけれど、なんせ数が多い。地面に接した部分を虫に食われたり、湿気で傷んだりする。

今年はその対策として受け皿サポーターをアマゾンから買うことにした。例によって、これも中国製で安い。何年も使える品で1個100円。トータルで1万4000円の出費。半円のものを組み合わせてパチっと留める。なかなかよく出来た品だが、同じ作業を100、200やるとなると手も腰もくたびれる。でも赤くて甘いイチゴを食べるためだ、頑張らねば。

いや、食べる楽しみだけにとどまらない。夢を描くのだ。収穫の時の喜びを思い描きながら仕事する、その湧き上がる気分がなんたって良い。出費の合計3万9000円は実益のために半分、レジャー費用として半分ということだ。

イチゴのために新しいビニールハウスを買い(2万5000円)、設置した。

便利さより手間を選ぶ理由

と、そんなところで思い出したのは近藤康太郎氏の「多事奏論」。これまでずっと近藤氏の肩書は朝日新聞編集委員であったが、最近は「本社コラムニスト」となっている。そして、イチゴの作業中に僕が思い出したのは「ワーク・イズ・ライフ 苦役の労働 5割でもご免だ」と題された文章であった。まず冒頭、今年の稲刈りは地獄であったと近藤氏は書く。続けて、「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて・・・」高市新総理のこの言葉に噛みつく。

自分から手を挙げ、総裁、総理になったのだから働くのは当たり前だ・・・そう言ってから、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が大嫌いだと近藤氏は言う。ちょっと長くなるが、田舎暮らしを漠然とながら夢見ているアナタにはきっと力強く背中を押してくれる言葉のはずだと思う。

ライフのために我慢してこなすワークなんて、たとえ5割でもわたしは真っ平ご免である。短い人生、そんな暇はねえ。学生も育児も介護も、いずれは終わる。仕事をしている時間がいちばん長い。ワークが我慢なら人生「詰み」じゃないか。ならばワークを楽しくするのが最重要で。そのための作戦を考えましょう・・・稲刈りで足腰が立たなくなった。ではつらいワークだったかというと、目の前の光り輝く米袋を眺めれば、暑熱地獄の記憶も蒸発する。人間のワークとは、もともと生きる悦びだったはずだ。生きる必要でワークするが、同時に生きる目的でもある。ワークが我慢すべき苦役になったのは、人間の労働力を”商品”として売る、売るしか方法のない社会になった、このわずか四、五百年くらいの<現象>だ。

イチゴのために新しいビニールハウスを買い(2万5000円)、設置した

僕の田舎暮らしにおける稼ぎは少ない。同じ田舎暮らしでも、飲食業とか宿泊業は違うのかもしれないが、10品目以上を詰めた1箱を3000円ちょっとで販売する百姓の稼ぎは少ない、夏は10時間、日暮れの早い冬でも8時間働くのだから、時給にすれば何百円にしかならない。それでも百姓をやる、やめられない。

ワーク・アンド・ライフ、そう分離独立させ、対抗させる関係なのではなく、自給自足を願う田舎暮らしとは、働くことがすなわち生きること、ワーク・イズ・ライフなのだ。ワークの中には時間を忘れて気持ちを打ち込めるライフが存在する。骨や筋肉はめっぽうくたびれるね。でもマインドが疲労するということはない。近藤氏の稲刈り同様、僕も腰に強い痛みを感じる。でも冷え込んだ秋の日に、数か月先の春を待っている。赤い実と甘い香りの時を待っている。ちょっとばかり心が躍る。田舎暮らしとは、やはりワーク・イズ・ライフなのである。

イチゴのために新しいビニールハウスを買い(2万5000円)設置した

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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