あったかくして、みんな、おやすみ
冬支度が生む安心とぬくもり
今日で11月が終わる。朝の冷え込みはかなりだった。しかし無風。日中の光はここ1週間で最も豊かであった。師走はせわしないが、世間では多くの人の心が、忘年会、クリスマス、帰郷、海外旅行と、ウキウキすることも多いだろう。そうした行事と無縁な百姓でも、ちょっとばかりはウキウキする。雨戸を開ける。窓越しに朝の光を見る。窓の向こうに、あふれんばかり黄色い実を付けた柚子ツリーが朝日に照らされているのが見える。ウキウキするのである。
今日はキウイの収穫に半日を費やした。すぐ下からもぎ取れるのが2割。あと8割は脚立で、さらに4メートルの梯子を立てて奮闘する。すでに少しふんわりしているものがある。梯子に乗ったまま口に入れてみる。ウン、甘い、合格だ。硬さが残っているものはバナナかリンゴかと一緒に袋に入れておくと熟す。
5時でもう暗くなる。ポータブル蓄電器を持ってバナナのハウスに入る。自分の腰に巻くために安物の電気毛布を買った。買って3日後、思いついたのだった。そうだ、もう1枚買ってバナナに巻いてやろうと。タイマーいっぱい。8時間をセットしてやろう。どうだい、あったかいだろ?
そして部屋に戻る。風呂に入って晩酌する前、パソコンデスクの隣にある電熱デスクを整える。鉢植えのイチゴ、カイワレ大根、それに新入りのリーフレタスが並ぶ。紫色のライトが灯っているのがそれである。ここでの電熱は、それまで古い電気座布団を2枚並べて使っていたが、水が浸みるのが気になり、濡れても大丈夫という電気カーペットを6500円で買った。
散らかり放題の部屋なのだが、この明かりの空間だけは部屋の汚れを打ち消す、美しい。さあ、みんな、あったかくしておやすみタイムだよ・・・。田舎暮らしには、ちょっとした工夫による楽しみ、ふんわりする心のくつろぎ、それがほどよく散りばめられている。いかがですか? ちょっとお疲れ気味のアナタも、田舎暮らしに一歩足を踏み入れては。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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