「ビジネスは都会でしかできない」――。そう思っていた松本さんは、地方で活躍している人に出会い、自分も何かしたいと新規就農を決意。農業で生計を立てながら、バイクの仕事やシェアハウスの運営にも挑戦している。
掲載:2025年11月号
鳥取県日南町/松本恭平さん
日南町出身、36歳。京都に進学後、自動車整備士や営業代行の職を経て、2019年、日南町地域おこし協力隊に就任。農業研修制度を利用して農業を始める。自宅は古民家を購入。シェアハウスとして入居者を募集中。
写真/4棟のビニールハウスで町の特産のブランドトマトを栽培する松本恭平さん。「新規就農する人の2倍の面積で取り組んでいます」。
農業を仕事の基盤に、地方で輝ける事業を展開
中国山地の真ん中に位置し、面積の約9割を森林が占める日南町。標高400~600m、準高冷地の豊かな自然のなか、酷暑の夏でも朝晩は涼しく、昼夜の寒暖差が農作物をよりおいしくしている。日南町出身で京都に進学した松本恭平さんは自動車整備士や営業代行の仕事を経て、2019年に地域おこし協力隊としてUターン。町特産の「日南トマト」を栽培するトマト農家に転身した。
「田舎は遅れているというイメージがあって、18歳で家を出ました。帰ってくるつもりはありませんでしたが、都市部で暮らしながら仕事で地方を回るうちに、田舎には田舎ならではのコミュニティーのよさがあることに気がつきました。田舎でも活躍している方がいて、自分も何か事業を始めてみたいと思うようになりました」
最初の2年間は農業研修制度を利用し、1年目はさまざまな農作物の栽培を見せてもらい、2年目は実作研修を受けた。トマトは町の特産なので先輩農家が多く、栽培に適した設備や情報が豊富にあると考え、トマト農家として就農する道を選んだ。
借りている約30アールの農地のうち、半分はハウスを新設し、もう半分はタイミングよく引き継がせてもらうことができた。就農して4年目の現在は、アルバイト4人と特定技能外国人1人を雇用し、年間20トン以上のトマトを出荷している。
「売り上げも順調に伸びています。安定してより多くつくるのが目標で、たくさんつくることで、糖度が高く味もおいしくなることがわかりました」
25年には自宅兼事務所として購入した築100年以上の古民家で、自分の部屋をDIYするシェアハウス「リバ邸鳥取」を開業。ガレージにはハーレーなど3台のバイクを所有し、冬は趣味のバイクや除雪の仕事にも携わっている。
「百姓的な暮らしを体現したいと考えているので、トマト農家の仕事を主軸に、季節に応じていろんな仕事をする新たなビジネスモデルをつくっていきたいです。今後、新規就農する人が増えたらうれしいです」
町の特産「日南トマト」は、トマト本来のしっかりとした甘み、酸味、香りが強いのが特長。きれいな水と空気に恵まれた環境で育っている。
2025年にはシェアハウス「リバ邸鳥取」をオープン。昨年結婚した奥さまと従業員も一緒に暮らしている。https://liverty-house.com/liverty/tottori/
1983年製のハーレーに乗っているという松本さん。最近はドラッグレースに出場できないほどトマト農家の仕事が忙しい。
利用した制度
・地域おこし協力隊
・農業研修制度
Advice
「異業種から農業への挑戦は、知らない用語も多くて大変ですが、何事も自分からインストールしていくことが大事。農業は形あるものをつくっているという実感があります」(松本さん)
文/田中泰子 写真提供/松本恭平さん
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