好きなものは力を与えてくれる・・・
作家・辻邦生氏が言う
うん、そうだな、汗を拭きながら思う
霜と氷で白く冷たい朝が続く
日中の光はその厳しさをいっとき忘れさせる
光を背中にし、スコップ仕事に励む
力仕事と背中への光が相乗、汗がにじむ
好きなもの 珈琲、パン、猫、朝の光とランニング
鶏、太陽光発電、暗い音楽、ワイン、夕暮れの空、畑仕事、それがもたらす起床時の全身疲労感も好き
1500坪の土地に生きる・・・小さな世界だね
朝のランニング以外、今日は1歩も出ず
老いたる男のひきこもりなんぞ・・・色気がないか
でも心の世界は小さくないし艶もあるから不思議
季節とともに、時刻とともに、勝手に
目の前の風景が変わるからか
好きなものの頂点、もちろんそれは田舎暮らし
混ざりものなし、小さな世界なれど、純度は高い
CONTENTS
『氷雨』。悲しく切ない歌なのに心が弾むのはなぜ?
冬の畑仕事が教えてくれる心の温度
12月に入って3日。強い降りではなく、シトシトと・・・今日は氷雨である。濡れながら秋ジャガを掘る。秋ジャガは例年小ぶりで期待が外れるが、今年は夏の猛暑が良かったのか、すぐ背後の山林からかき出した腐葉土と米ぬかを混ぜた元肥の効果なのか、良い出来である。
雨に濡れてスコップを使いながら、氷雨の日の定番である日野美歌の『氷雨』を僕は口ずさむ。傘がないわけじゃないけれど・・・♪ 男に去られた女の哀切な調べであるが、不思議とこの歌を明るく歌える。さあがんばれよ、しばれる手への励ましの気持ちも含まれているかもしれないが、ともあれ気分は冷たくも暗くもない、仕事がはかどるのである。
畑仕事にキリをつけ、太陽光発電のメンテナンスにとりかかった。分散していた同型のバッテリーを1か所に集めてパワーを上げることにした。12ボルトが6つ。2つのグループに分け、それぞれを並列つなぎとする。最後に連結して24ボルトとして完成させる。バッテリー1つの重さは30キロ。障害物いっぱいの通路をこれを抱いて移動するのは難儀ではあるが、これまた「氷雨」、心は明るく楽しいのである。
怒りが溢れる社会と畑にこもる生活
今年の言葉が映す現代社会
今日の夕刊にデジタル音痴の僕がちょっと学べる記事があった。オックスフォード大出版局が選んだ今年の言葉は「レイジベイト」日本語にすると「怒りのえさ」。例えば陰謀論のような、人々の怒りを引き起こすようなオンラインにおけるコンテンツのことであるらしい。また昨年の「言葉」はブレーンロット「脳の腐敗」。オンラインコンテンツの過剰消費による精神・知的状態が劣化することを意味しているらしい。
いま世の中には他人への怒りや揶揄があふれているなあ・・・日々畑にこもる我が印象である。チャンスで凡退した野球選手に死ねと言う。事故撲滅を訴える交通事故の被害者家族にカネが欲しいだけなんだろうと言う。さらには地震や津波、原発事故などの偽情報を流す。なんとも哀れでむなしいとしか言いようがない。
仕事に没頭すると他人が気にならなくなる
人間、目前の仕事に懸命で、かつ気持ちが満ち足りているならば他人のことなど(良い意味で)どうでもよくなると僕は前から思っている。不足感、精神の隙間、そういったものがあるから、いっときの怒りやヤジでもってそれを埋めようとする。この気持ちを簡便に満たしてくれるのがオンラインという世界なのではあるまいか。
朝からの雨が上がり、きれいな落日を目にしたのは3時半。当然ながら明日は晴天・・・そう思って寝床に入ったのが9時半。そしたらなんと音を立てて雨が降り出した。のみならず、目測ならぬ耳測だが、20メートルを超える強風が吹き荒れてきた。どうしよう。迷った挙句、午後10時半、パンツ姿で庭に出て、応急処置をした。
農業という仕事への誤解と現実
地味でお金を稼げず、汚い仕事はやりたくない・・・例えば農業なんか。
アイドルの一言が突き刺さる
快晴の朝であるが、冷え込みは強烈。気合を入れていこう。日中も10度そこそこの気温。でも、夜は電熱で、昼間は日光浴で。せっせと世話する鉢植えのイチゴが色づき始めたのを見て心がチョッピリ浮き立つ朝。
ふるさと納税の荷物が2つ。昼食をはさんで5時間の作業で売り上げは6000円。百姓はダサいのか、汚くて儲からない仕事なのか・・・突然かようなことを言うのにはワケがある。読売新聞の人生案内でちょっと異色の悩み相談を目にしたのだ。
相談者は30代の兼業農家の女性。いずれは農業だけで生活していけるよう努力しているそうだ。その彼女には「推し」のアイドルがいる。そのアイドルがこう発言したそうだ。
地味でお金を稼げず、汚い仕事なんてやりたくない・・・例えば農業。
不運なことに、アイドルのこの発言を耳にしたのは、育てた野菜の収穫量が少なく、収入が減ったため、農業で生計を立てるのは無理かもしれない・・・彼女がそんな気持ちになり落ち込んでいた時であったらしい。
汗をかく仕事の価値を手放さない
年寄りがこんなことを言うと、ある種ハラスメントだとお叱りを受けるかもしれないが、しょせんアイドルではないか。汗水たらして働くなんてことには無縁で、安っぽい芸を売って暮らしているんじゃないか。好きに言わせておけばいいさ。アナタはそんなこと気にせず、うまくいかなかった野菜は、何がどういけなかったのか考えて、挽回策を講じればいいじゃないのさ。
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この記事を書いた人
中村顕治
【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。
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