農業YouTuber黒壁の「誰でも手軽に家庭菜園」vol.28
YouTubeチャンネル「まるっと農業日記」を運営する黒壁勇人(くろかべ・はやと)さんが、誰でも気軽に家庭菜園を楽しめる方法をまるっとレクチャーする本連載。第28回のテーマは「農家が本当に困っている害獣」。
鳥に食べられた、獣に荒らされた――そんな野生動物による農作物被害額は、年間164億円。今回は、農家の現場で実際に起きている害獣被害のリアルを、黒壁さんがランキング形式で解説します。
CONTENTS
年間164億円……害獣被害の現実
164億円。これ、何の金額だと思いますか?
実はこれ、1年間で野生動物が農作物に与えた被害額なんです。
しかもこれは「報告された分だけ」の数字。実際の被害はこの3〜5倍と推定されることもあります。
害獣被害が一番ひどくなるのは、秋から冬。
動物たちが冬に備えて栄養を蓄える時期は、人間側はちょうど収穫期。農家が「やっと収穫だ!」と思ったその夜、動物たちは「ご飯の時間だ!」とばかりにやってくる。
活動のピークは夜中から明け方。朝、畑を見に行くと、何カ月もかけて育てた作物が、一晩で全滅……なんてことも。
「かわいそうだから殺すのは反対」「自然の動物なんだから共存すべき」「山を開発した人間が悪い」という声もありますよね。僕自身、動物は好きなのでその気持ちは分かります。
ですが、実際に被害を受けている農家の立場になると、生活がかかっているわけですからそんなこと言っていられない現実があります。今日はその現実を、数字と一緒に見ていきましょう。
農家が本当に困っている害獣ランキングTOP5
日本の農家が直面している「害獣被害」の現実を、数字で見てみましょう。
農林水産省がまとめた統計データをもとに、各動物による年間の農作物被害額をランキング形式で紹介します。
第5位|サル(年間被害額:7.1億円)
サルが厄介なのは、学習能力の高さ。一度「ここは安全」と覚えると、群れ全体で組織的に襲来してきます。人間の行動パターンまで把握していて、「明日収穫しよう」と思った翌朝にはきれいに食べられてる、なんてことも。
出産期を迎える春から夏は、警戒心が強くなってより組織的に行動するようになります。
主な被害作物は果樹で、リンゴ、柿、ブドウなどが狙われます。
関東より西の山間部で多く発生していて、農家は本当に苦労しています。
ただ、民間連携で捕獲機を導入して被害を半減させた地域もあり、適切な対策を取れば、被害を減らせる相手でもあります。
第4位|クマ(年間被害額:7.5億円)
クマは被害額以上に、安全面のリスクが深刻です。
果樹や飼料作物が狙われ、柿、栗、リンゴ、飼料用トウモロコシなどが被害に遭います。果樹は単価が高いので、少し食べられただけでも被害額が跳ね上がることに。
例年、冬眠に向けて食欲がピークになる秋から12月上旬頃までに出没が相次ぐ傾向があります。
クマに関しては、「作物の被害より、安全に作業できるかが心配」。僕も岩手の農業法人を手伝っていたとき、行き帰りでクマと遭遇したこともあるし、事務所前にクマのフンを見つけたこともあって、ゾッとしました。
第3位|カラス(年間被害額:13.3億円)
カラスは鳥だから大したことないだろうと侮ってはいけません! 鳥類全体の被害額は23.8億円。その半分以上をカラスが占めています。
厄介な理由は4つ。
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全国どこにでもいる
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学習能力が高い
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人間を恐れない
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仲間同士で情報共有する(コミュ力高い)
特にトウモロコシの被害が深刻で、収穫直前の甘くなった実を狙い撃ちされることも。かかしなんて全く効果なし。「あ、これ偽物だな」って理解して、平気で近くで活動します。
さらにやっかいなのは、食べるだけじゃなく、遊び目的で荒らすこともあること。
丹精込めた野菜なんだから遊ぶくらいなら食え!って思うよね(いやいや食うなや!)。
防護ネットを張っても隙間から入るし、本当に手強い相手です。
第2位|イノシシ(年間被害額:36億円)
イノシシの最大の特徴は、破壊力。体重100キロ超が時速40キロで突進してきたら、あぜ道は一瞬で崩されるし、ビニールハウスも突き破られます。
雑食性で、野菜、穀物、芋類、果実……何でも食べてしまいます。
秋の繁殖期から冬にかけて被害がピークで、山に食べ物がなくなると人里に降りてきます。根菜類を掘り返して荒らし回るので一晩で畑がまるで戦場みたいになることも珍しくありません。
対策は、電気柵が効果的ですが、設置費用や維持費は農家にとって大きな負担になります。
第1位|シカ(年間被害額:70億円)
そして第1位はシカ。年間被害額はなんと70億円。全体の43%がシカによる被害なんです。
特に北海道は被害が深刻で、全国のシカ被害の約70%(約51億円)が北海道に集中しています。
シカが厄介なのは、人間をあまり恐れないこと。車道をのんびり横断するので北海道では渋滞の原因になることもあります。
大型の草食動物なので、一頭あたりが食べる作物の量も膨大。また、農作物への被害だけでなく、シカは樹木の皮も食べるので林業への影響も深刻です。
捕獲による個体数調整も進められていますが、繁殖力が強くてなかなか効果が表れにくいのが現状です。
【番外編】統計に出ない“隠れた敵”がいる
ここまでが、農林水産省の統計にある害獣被害金額ランキングTOP5。
でも実は、このランキングには載らない厄介な存在がまだいます。
統計には表れにくいけれど、農家にとって身近な「害獣」。それは……ネズミです。
ネズミ編|「たかがネズミ」が一番厄介かもしれない
「たかがネズミ」と思うかもしれませんが、実はめちゃくちゃ厄介。にもかかわらずネズミが統計に表れにくい理由は3つあります。
理由① 被害に気づきにくい
種籾を食べられても「発芽率が悪かった」と思う。
貯蔵穀物の被害も「カビが生えた」で片づけられがち。
配線をかじられても「老朽化」として処理される。
実際はネズミの被害なのに、別の原因だと誤解しやすいんです。
理由② 年中無休で活動している
大型の害獣には季節性があるけど、ネズミは365日24時間。季節を問いません。
しかも繁殖力が高く、1年で6〜8回出産、1回に5〜6匹。あっという間に増殖します。
理由③ 侵入経路が無限にある
大型動物なら柵で防げるけど、ネズミは小さな隙間からどこでも侵入できる。
倉庫、納屋、ビニールハウス、どこにでも住み着いてしまいます。
統計に表れない隠れた被害を考えると、実はネズミが最も厄介な害獣かもしれません。
農家が開発したネズミ対策アイテム「チューBeyゴー!」

Screenshot
ネズミに関しては、農業の現場で生まれた対策アイテムがあります!。
農家が開発した鼠取り機、その名も――「チューBeyゴー!」。
これはうちの父ちゃんが作って、特許庁に登録済みの鼠取り機。
ネズミ対策というと、粘着シートを使ってる人が多いと思います。でも、長く使っていると、こんな課題を感じることがありました。
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ホコリで粘着力が落ちる
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強風でめくれて使い物にならない
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人や車が踏んでしまい事故の原因になる
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捕獲したネズミの姿を見るのが精神的につらい
特に最後の点。「捕まったネズミを見るのがしんどい」という母ちゃんの声をきっかけに、“見ずに、触れずに処理できる”ことを重視して作られたのが、この「チューBeyゴー!」です。
粘着シートを本体の中に入れて使う構造なので、雨風やホコリからシートを守りつつ、捕獲後はシートだけを袋に入れて処分できます。
使い方はシンプル
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従来の粘着シートを「チューBeyゴー!」の中にセット
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ネズミの通り道に設置
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捕獲できたら、シートだけをゴミ袋へ
我が家では、ガレージ、ハウス、屋外の栽培スペース、住居の周辺など、ネズミが出やすい場所に設置しています。
現在は、商品化に向けた第一歩としてクラウドファンディングを実施中。「同じようにネズミ被害で困っている人の声を聞きたい」そんな思いで取り組んでいます。
まとめ|害獣対策は“現実を知ること”から
害獣駆除はかわいそう? できるなら駆除したくない。僕もそう思います。
でも、大切に育てた農作物を守るためには、対策が必要です。自分の畑は自分で守らなくてはいけません。
家庭菜園でも、カラスやネズミ、地域によってはシカ・イノシシの被害が出ることがあります。まずは「どんな相手が、どんなタイミングで来るのか」を知っておきましょう。
写真提供:YouTubeチャンネル「まるっと農業日記」
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この記事を書いた人
黒壁勇人(農業YouTuber)
黒壁勇人(くろかべ・はやと) 登録者数8.7万人のYouTubeチャンネル「まるっと農業日記」を運営。 より多くに人に農業の魅力を知って欲しいと、YouTubeチャンネルでは、家庭菜園から野菜の植え方・育て方、そのコツまで誰でも簡単に農業を楽しめる方法を初心者にもわかりやすく紹介している。
Instagram:@kurokabe_farm
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