試作70台以上。安全を最優先にたどり着いた構造
100円ショップとホームセンターを巡る日々
開発はゼロからの手探りでした。
「最初は自宅の庭で、BBQコンロの上に内なべを載せて炊いてみました」
かまど構造を再現するために、パーツを探してホームセンターや100円ショップを何店舗も回り、使えそうなものを片っ端から買い集めたといいます。
「新聞紙では火力に不安があったので、ふたは金属製の内ぶたを二重にして断熱性を高めることを工夫しました。それでも5合まで水目盛りがある内なべで3合炊くのがやっとでした。その後、新聞紙の燃焼エネルギーをもっと効率よく内なべに伝えるために“かまど”をイメージし、市販品から加工して使えそうなものを探しました。
“かまど”で用いられる“羽釜”は上の部分が“かまど”から飛び出していますが、廃棄される内なべはそのような形ではないので、上を飛び出させるためには、なべを支える金具が必要でした、内なべの筒の部分の直径より少し大きな金属のリングを求めてホームセンターや100円ショップをひたすら探し回りました。金属製の洗濯カゴや植木鉢のスタンドでちょうど良いサイズのものを買い漁ったりもしました。内なべの上を飛び出させる高さを調整するために100円ショップを何店舗も買いまわっていたので、お店の人は驚いていたと思います」
なんと、かまど部分は、植木鉢を使っていたそう。
「最初は植木鉢を使って試行錯誤していました。ただ、なかなかうまくいかなくて……」
失敗の日々が続いたそうです。
「植木鉢は、新聞紙の燃え残りが空気の流れを妨げ、燃焼室の容量(=大きさ)が不足するという欠点があり、それを改良するのに時間がかかりました。最終的に行き着いたのが、バケツを利用すればよかったということですね。バケツの内側にウレタンで作った型をはめ込んで隙間にセメントを流し込むことで理想的な燃焼室のサイズを導き出しました。
試作して実験、その実験の結果を見て改良を続けて70台以上試作をしました。入社してから一度も開発部門の経験がないため、図面が描けない私は、試作モデルを外注する術がなかったのです」
結局なんと、すべて手作りで挑んだそうです。
燃え残りをなくすための2つの投入口
最大の課題は、安全性でした。
「燃え残りがあると、新聞紙が空気に触れて発火する恐れがありました」
これには本当に困ったそうです。
「最初は大きめの投入口が1箇所だけでしたが、新聞紙を入れる位置によって火力が安定せず、時には空気の流れが妨げられて燃え残ることもありました。投入の仕方の癖一つで、うまく炊けたり炊けなかったりする……。そんな試行錯誤の連続でしたが、左右2箇所に投入口を設け、新聞紙を交互に入れるという方法を思いついてからは、状況が一変しました。新聞紙が重ならなくなったことで燃え残りが解消され、ようやく理想的な炊き上がりを実現できたのです。
何より避けなければならなかったのは、燃え残った新聞紙が、お手入れの際に空気に触れて発火することでした。安全性にはとことんこだわり、試行錯誤を重ねた結果、新聞紙が一切燃え残らない構造を確立。すると、図らずもおいしく炊くために理想的な火力を得ることができたのです。安全を最優先に突き詰めた結果、神様がおいしさをプレゼントしてくれた——。今ではそんな風に感じています」
他人に頼らず、すべて自力で考え、安全を追求したことが、味の向上にもつながりました。試行錯誤と諦めなかった努力のお陰で『驚くほどおいしく炊ける』という魔法も唱えることができるようになったそうです。
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