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田舎暮らしの本 5月号

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田舎暮らしの本 5月号

3月3日(火)
990円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

本物の春を前にもうひとふんばりだ/自給自足を夢見て脱サラ農家42年(83)【千葉県八街市】

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AI万能の時代に失業者増加・・・なんぼAIといえども農家は無理だと思うが、どうなんか。

規則性のない畑仕事はAIにできるのか

降ってから3日。気温が低いままなので雪はまだ残っている。数日前に始めたのはビニールハウス2つの解体作業。解体後の整地作業に大きなエネルギーを費やしている。ジャガイモを植えたいのだが、しばらくナス科を作ったことのない場所を工面するのに苦心するのは毎年のことだ。解体を始めたビニールハウスの三方には長年、落葉が降り積もっている。ここならいける。

ただし鍬を入れたことのない土地ゆえ手ごわい。掘っても掘っても周囲から伸びる竹や木の根っこに当たるが、あきらめない、くじけない。トコトン、納得いくまでスコップを打ち込む。こんなこと、AIにできるかな・・・。

生成AIの広がりとメディア業界の変化

唐突な話だが、前置きはこうだ。昨日の朝日新聞が伝えるところによると、イラストレーター、漫画家、ライター、テレビCMの作曲家など、フリーランスのクリエーターがAIに仕事を奪われ、なかには、500万円ほどあった収入が以前の4割にまで減少、他のアルバイトをして生活をつないでいる人もいるのだという。

僕がいま取り組んでいる作業には規則性がない。スコップ1投ごとに判断する

「スマート農業」という言葉があるが、農業も人工知能の恩恵を受けている。ドローンを使って空中から消毒する、そして野菜の播種、収穫、選別、人間が直接手を使わずともできることは今や多い。だが、それは土地が広くて機械が自在に動ける平面ならではのことだ。僕がいま取り組んでいる作業には規則性がない。周囲にはフキやアシタバ、タラがあるが、これは残す、これは避けて通る・・・スコップ1投ごとに判断する。こんなことAIはやれるのか。ひょっとしたらAI全盛の時代にも、最後まで生き残れるのはマイハンドで、不規則性に臨機応変に対処できるミニサイズの農家だけではあるまいか・・・。

この朝日新聞の記事の数日前、読売新聞が伝えた「ワシントンポスト3割解雇」という記事にも僕は驚いた。どうやらこの背景にもAIが絡んでいるらしい。生成AIで時事問題を調べると回答は要約して表示される。多くの読者はそれで満足し、基となった記事までは確認しないのだという。

分解したビニールハウス周辺の耕起作業。いつもならそろそろ終わりにする時刻だが、気分が乗っている。エネルギーもまだある。照明を太陽光発電につないで本日は残業である。残業手当は出ないけれど、そんなことかまわない。

ああそういえば、働き方改革とかで、労働時間の規制があるという実感を最近持った。近所の親しい人の帰宅時間が以前より早い。今日は休みなんだと言って家にいる日も多いのだ。365日働くこの農家にはそんな公的圧力はないけれど、まあ、本質が違うんだから・・・。

フリーランスの農家として生きる実感

朝日新聞の言葉を借りれば僕もフリーランスのクリエーターだ。品物を気に入ってもらえばまた注文が入る。気に入らなければそれっきり。足元の不確かさは朝日新聞の記事の人たちと同じだが、使うのは頭か手足かという違いがある。文字通り「手応え」、あるいは足応え。食って、生きる・・・自分がそれと格闘しているのを実感する。そのことが、たぶん、長時間労働も悪天候による苦労も、この手足からの感覚がみな帳消しにしてくれる、いや帳消しどころか楽しい気分にさえしてくれる・・・のだと思う。

長時間労働も悪天候による苦労も、この手足からの感覚がみな帳消しにしてくれる、いや帳消しどころか楽しい気分にさえしてくれる

AIに負けない農家の誇り

朝日新聞コラムニスト近藤康太朗氏が昨日の「多事奏論」で強烈なAIアンチ論をぶっている。

AIにはオネスティ(発見、正確、体験)がないから。だから死ぬまでわたしが書く。書いて、生きていく。

僕はこの言葉を受けて言う。「だから死ぬまで、わたしが耕す、種をまいて、収穫して、食って、生きていく」。いつか人間は人工知能に負けるのだろうか・・・オレは負けないね。死ぬまでこの農家仕事を続けるぜ。太陽光発電につないだランプの明かりを頼りに今日は午後6時まで仕事した。零細農家の強がりがここで頭をヒョイともたげる。

AIは賢い、よく働く。暗い気持ちで生きている人を優しく慰めてもくれるらしい・・・AIは立派だ。だが、いくら働いても筋肉が発達するなんてこと、AIにはあるまい。そもそもAIには働いている喜びなんてあるのかい・・・負け惜しみだけれど・・・風呂から出た僕は今日もよく働いてくれた我が腕に目をやり、そう思うのだ。

いくら働いても筋肉が発達するなんてこと、AIにはあるまい

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この記事を書いた人

中村顕治

中村顕治

【なかむら・けんじ】1947年山口県祝島(いわいじま、上関町・かみのせきちょう)生まれ。医学雑誌編集者として出版社に勤務しながら、31歳で茨城県取手市(とりでし)に築50年の農家跡を購入して最初の田舎暮らしを始める。その7年後(1984年)の38歳のとき、現在地(千葉県八街市・やちまたし)に50a(50アール、5000㎡)の土地と新築同様の家屋を入手して移住。往復4時間という長距離通勤を1年半続けたのちに会社を退職して農家になる。現在は有機無農薬で栽培した野菜の宅配が主で、放し飼いしている鶏の卵も扱う。太陽光発電で電力の自給にも取り組む。

Website:https://ameblo.jp/inakagurasi31nen/

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