田舎暮らしをテーマにしたアニメ『のんのんびより』、石川県の湯涌温泉を舞台にしたアニメ『花咲くいろは』などでテーマソングを担当し、弊誌読者からも注目を浴びているnano.RIPE(ナノライプ)。8月23日に最新のミニアルバムをリリースするということで、ボーカル&ギターのきみコさんに話を伺いました。単独インタビューでお送りします。
nano.RIPE
ナノライプ
1998年に結成。 千葉の高校で同級生だった、きみコ、ササキジュンを主体に活動。 インディーズ時代には3ヶ月で全国63本のツアーなど数多くのライブを敢行。ライブバンドとしての実力をつけつつ、 2010年9月22日メジャーデビュー。『花咲くいろは』『のんのんびより』『バクマン。』『食戟のソーマ』『はたらく魔王さま!』など、 数多くのテレビアニメ主題歌を担当。デビュー後も47都道府県を巡るワンマンライブツアーやプラネタリウム公演など、ライブを軸に活動しつつ、声優アーティストを中心に幅広く作詞、作曲などの楽曲提供も行う。2019年には『NHKみんなのうた』書き下ろし楽曲『ヨルガオ』が放送されたほか、千葉県・埼玉県の夏の高校野球中継番組のタイアップなど活動の場を広げ、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』 や 『COUNTDOWN JAPAN』 などの大型フェスにも出演。現在も年間30~50本ほどのライブ、新規楽曲制作など、精力的に活動中。
公式HP
http://nanoripe.com/
きみコ
ボーカル/ギター担当。茨城県日立市出身。血液型A型。右利き。全楽曲の作詞と多くの曲の作曲を担当。Fender Jaguar を愛用しており、自身の所有している5本全てのギターに名前をつけている。趣味は野球、釣り、バイク。 猫好きでもあり、クリームタビーのアメリカンショートヘアと暮らしている。 野球・陸上・バスケットボール・ソフトボールの経験があり、幼少期はリトルリーグ(硬式野球)に所属。
ライブほど何年やっても飽きないものって ほかに知らないかもしれない
―― 当サイトには初登場ということで、まずは、nano.RIPEの紹介をお願いします
きみコ(以下、省略)「ひとことで言えば、“ロックバンド” です。テレビアニメの主題歌を多く担当し、正式メンバーも今は2人になってしまったので “ユニット” など、いろいろな呼び方をされることがありますが、デビュー前から今もずっと “ロックバンド”という肩書きで活動しています」
動画は、アニメ『はたらく魔王さま!』第1期のエンディングテーマ「月花」。
―― 今クールもテレビアニメの主題歌を担当されているそうですね
「はい。第1期でもエンディング主題歌を担当した『はたらく魔王さま!!』という作品で、今回は第2期2nd Seasonのオープニング主題歌「光のない街」を担当しています」
nano.RIPEの最新ミニアルバム「光のない街」が8月23日に発売される。
―― アルバムタイトルにもなっている「光のない街」という楽曲ですが、どんなイメージで作られたのでしょうか
「前回もそうだったんですけど、アニメ制作サイドからの指定がまったくないんですよ! 信頼してくださっているんだと思うんですが、毎回『自由に作っちゃってください!』という感じなので、今回も自由に作らせてもらいました。アニメの楽曲を書くときはいつもそうなんですけど、アニメの曲ではあるけどnano.RIPEの曲でもあるので、自分の気持ちはしっかりと入れ込むよう意識して書いていて、この曲はコロナ禍でライブができない時期に書いたこともあって、その頃の感情が色濃く現れていると思います」
―― 作詞はきみコさん、作曲はギターのササキジュンさんが担当されていますが、普段楽曲制作はどのように進めていくのですか?
「まずどういった曲にするか、というところを2人で話し合って、そこからジュンが作曲に取り掛かります。途中経過を聴かせてもらいつつ、1コーラスのデモが完成した段階で歌詞を書き始め、そこから全体の構成、歌詞、アレンジを進めていく、という形がほとんどですね」
―― おふたりの意見が割れることはないですか
「ないこともないですが、それぞれこだわる部分が違ったりもするので、良い具合にお互いの意見を尊重できている気がします。出会ってからも長いので、10まで言わなくてもわかる部分もあるというか」
―― 結成から今年で25周年ですね
「そうですね、長い…(笑)。まさかここまで続くと思わなかったですが、何度かメンバーチェンジがあったときも、不思議と辞めるという選択肢は、あたしもジュンもなくて。これしかないんですよね、やりたいことも、やれることも。何より楽しいですし」
―― nano.RIPEはライブの本数もすごく多いです
「それはもう、ライブがやりたくて組んだバンドなので。もちろん制作や楽曲提供も楽しいんですけど、ライブほど何年やっても飽きないものって、ほかに知らないかもしれないです」
―― きみコさんといえば “多趣味” というイメージもありますが
「それはありますね。せっかちなので、何かしていないと落ち着かなくて(笑)。少しでも興味を持ったものはすぐに調べて行動に移すので、とにかくなんでもやってみます。その中でも続いているのが釣り、野球、バイクですね」
草野球チームHANAWA ROCKSにも所属する きみコさん。
「この曲に背中を押される」というよりも「これは自分の歌だ」って思ってもらいたくて
―― 野球への想いは楽曲にもしっかり反映されていますよね
「はい。毎年夏に合わせて“高校野球”をテーマに1曲作っていて、今年で4年目になります。今年は今回のCDにも収録されている『スポットライター』という楽曲を書き下ろしました」
動画は、2019年、チバテレ『高校野球ダイジェスト 白球ナイン』エンディングテーマ 、テレ玉『第101回全国高等学校野球選手権埼玉大会中継』テーマソングとなった「ローリエ」のショートバージョン。
―― こちらの『スポットライター』は石川県のラジオ局・MRO北陸放送「高校野球中継番組」のテーマソングにもなっているそうですね
「昨年に引き続きテーマソングを担当します。石川県は最初にタイアップさせていただいたテレビアニメ『花咲くいろは』の舞台で、そこからのご縁で今もずっと通い続けている大好きな土地なので、今年も石川県の球児たちに届けられることが本当にうれしいです」
―― nano.RIPEの書く高校野球ソングって、いわゆる“応援ソング”ではないですよね
「そうですね。あたし自身も少年野球をやっていたこともあり、他人事としての応援歌というよりは、球児の気持ちを代弁するようなイメージで毎回書いています。『この曲に背中を押される』というよりも『これは自分の歌だ』って思ってもらいたくて」
―― そもそもnano.RIPEは、野球に限らず応援歌や誰かに向けた歌が少ないような気がするのですが、それは意図しているのですか
「めちゃくちゃしています。人間って『自分だけじゃないんだ』って思えるとものすごく安心するじゃないですか。味方がいるっていうか。『これは自分の歌だ』って思ってもらいたいのはそういう意味もあって。なので、あたしはあたしの気持ちを歌うけど、きっと同じ思いを抱えている人がたくさんいるって信じていて、実際に誰かに届くとあたし自身も安心できる部分があるんですよね」
―― 今年の野球ソング「スポットライター」にはどんな想いが込められているのでしょうか
「今年に限らず共通して描いているのは『挫折』です。高校野球のキラキラした部分を美談にして描くようなことは絶対にしたくなくて、そこに辿り着くまでの道のりの中で避けては通れない『壁』や『迷い』もしっかりと入れ込みたいといつも思っていて。たとえば、大好きだった野球を嫌いになりそうな夜、とか」
―― 好きだからこその苦悩、ですね
「そうそう、そういう部分をちゃんと描くことが『これは自分の歌だ』って思ってもらえる第一歩だと思うんですよね。あたしもリトルリーグ(小学校の硬式野球)経験者なんですけど、大好きだったはずなのに辞めたいって思ってしまうような日もあったので」
セカンドのポジションを守るリトルリーグ時代のきみコさん。
―― 2番Aメロの “後悔なんてどうしてもするさ” という歌詞なんかは、なかなか見ない表現ですよね
「“後悔しないように” が普通ですもんね。そりゃあ後悔しないのが一番だし、そんなことは自分が一番よくわかってるけど、本気でやっているものほど後悔は残るじゃないですか。大人になって振り返ったら良い思い出になるようなこともあるけど、当時はどうしようもなく悔しかったこととか。2番サビの “信じ続けることも すべて投げ出すことも 難しいからぼくら今を駆ける”という部分も、決してみんながみんな迷わずに真っ直ぐに野球に向き合ってきたわけじゃないと思うので、ここまで言って大丈夫かな?と思いつつも、思い切って書いた部分でもあります」
―― 爽やかな曲調の中に隠した小さな毒がnano.RIPEの魅力でもあるような気がします
「どの曲も何かしら隠してますよね(笑)。あたし自身そんなにキレイな人間じゃないし、でも、そんな自分がキライってわけでもないんですよ」
―― それこそ、そういう部分に共感できると、「自分だけじゃなかったんだ」って安心できるような
「そうですね。それを確かめたくて書いているような部分もあるのかもしれないです」
バッターボックスに立つリトルリーグ時代のきみコさん。
―― すでに開幕している地域もありますが、高校野球の石川県大会も間もなくスタートしますね
「今年ももちろん応援します。昨年は星稜高校が夏の甲子園に出場したんですけど、実は数年前に星稜高校の学園祭でライブをさせてもらったことがあって。そういうご縁もあってすごくうれしかったので、星稜高校を応援するために甲子園のチケットを取ったんですよ。だけど昨年は1回戦で敗退してしまって、タイミングが合わなくて現地では観られなかったんです。なので、今年こそ石川県の代表校を甲子園で観たいですね」
―― nano.RIPEのライブツアーも始まりますし、忙しい夏になりそうですね
「本当に。毎年夏は中継に気を取られて仕事のペースがガクンと落ちるので、気を付けつつ楽しみたいと思います(笑)。球児たちに負けない熱いライブができるように頑張りますので、是非、nano.RIPEのライブにも足を運んでいただけたらうれしいです」
【nano.RIPE LIVE SCHEDULE】
「光のない街」RELEASE TOUR『あまぐものつえ』
7月29日(土)[東京]渋谷CLUB QUATTRO
8月26日(土)[大阪]梅田バナナホール
8月27日(日)[愛知]名古屋ell.FITS ALL
9月16日(土)/17日(日)[石川]金沢AZ
チケット一般発売中
https://eplus.jp/sf/search?block=true&keyword=nano.RIPE
【OFFICIAL WEBSITE】
http://nanoripe.com/
【OFFICIAL YouTube Channel】
https://www.youtube.com/@nanoripe/featured
取材・文/田舎暮らしの本 Web編集部
写真/きみコさん本人提供
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この記事を書いた人
田舎暮らしの本編集部
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