岡山県津山市出身のお笑いコンビ・次長課長の河本準一さん。現在、お笑い芸人として活動しながら、地元である岡山で国産米『準米』をプロデュースするなど、お笑い以外の取り組みにも挑戦し、活動の幅を広げています。河本さんから見た岡山県は、どんな魅力に満ちた県なのか!? 河本さんならではの切り口で、さまざまな角度から岡山の魅力をひもとき、紹介していきます。
今回は、自身がプロデュースしたお米を販売することの難しさに直面した河本さんのこれまでの取り組みや、今後の目標について語っていただきました。
自分がこんなにプレゼン能力に乏しい人間だとは思わなかった
これまで農業に携わってきたなかで、最大の挑戦は「お米を販売すること」でした。もしかしたら、今までの人生でいちばん苦しい、いちばんうまくいかなかったことかもしれないです。僕は米作りはあくまでもお手伝いの範囲でしかやってなくて、メインの仕事としては“小売業”になるんですけど、お米を広めるにあたって、自分でブランディングをして、そのお米を、お米があるほかの県に、しかも「その県のお米より高く売る」ってことがどれだけ難しいことか、初めてわかりました。
その難しさは今も全然継続中です。本当に、今までこんなにうまくいかなかったことはないですね。親の離婚と2番目の親父のDVくらい。このふたつはどうしようもなかったですけど。3位が経営です。それぐらい難しいです、人に物を売るということは。自分がこんなにプレゼン能力に乏しい人間だとは思わなかったですし、芸人やってていちばんヘコみました。「こんなに伝わらないのか……」って。
でも、家族以外にも背負うものがある。人も雇ってますし、「やらなきゃ生産者が死ぬ」っていう思いもあるので、それがモチベーションとなってがんばれているところも大きいですね。こんなに牛歩だとは思わなかったっていうぐらいのスピードではありますけど、少しずつ進んでます。
「上の写真が大分県の国東で作っている『準米 にこまる』、下が岡山県の津山で作っている『準米 きぬむすめ』です」
とにかく「生産」を止めるわけにはいかないんですよね。当たり前ですけど、生産し続けないことには、お米は売れないですから。「お米を加工して〇〇を作ろう」と構想を練っていても、肝心のお米がなかったら元も子もないわけで。自分で“準米”という名をつけてお米をブランディングしてプロデュースして売るってもう決めてるわけですから、それに早く付加価値をつけていかないとどうしようもない。
それにはまず生産者さんが倒れないように、こっちが粘り強く買い続けなきゃいけないので、やりがいがめちゃめちゃあるんですよ。大変ですけど、なにも「木星に行け」って言われてるわけじゃなく、「エベレストに登れ」ぐらいの感覚というか。実際に登ってる人もいるから、やってやれないことはないじゃないですか。自力で木星に行った人の話は聞いたことないですけど(笑)。
移住先としても魅力的な「岡山県」
岡山で農業に携わっていると「人手が足りない」という話もよく耳にするんですけど、岡山は就農先としてもいい県なんじゃないかなと思います。あんまり知られてないかもしれないですけど。岡山県人ってプロモーションが上手じゃないんですよ。いいところはいっぱいあるのに、伝えるのがヘタなところがあるんです。
岡山は一日の降水量が日本で一番少ないといわれるくらい晴れの日が多いし、かといって一級河川は大きいのが3本も流れてるんで、そこまで水不足にもならないですし。もちろん果物はビックリするぐらいうまいです。
比較的天災も少ないと思います。もちろんないわけじゃないんですけど。本当かどうかわからないですけど、かつて“岡山首都計画”があった、という噂があるくらい。災害が少ないから、国家レベルの重要施設や機密事項は岡山にあった方が安全なんじゃないかという話で、これはまぁ、都市伝説のようなものかもしれませんけど、台風の被害が少ないのは本当です。
九州、四国エリアは台風の通り道なんで、毎年ギャンブルみたいな感じで、「今年はお願いだから来ないでくれ」みたいな気持ちになるんですね。実際に(岡山県以外で米づくりをしている大分県)国東(くにさき)の田んぼも被害に遭ってますし。でも、岡山ではそれがない。なので、移住するにはいい県だと思います。一戸建ての家も安いので、買うのにもそんなに苦労しないんじゃないかな、とも思いますし。
“準米”を海外に持っていきたい
今後の目標としては、“準米”を海外に持っていきたい、というのがあります。お米はもちろんですけど、今、米麹(こめこうじ)ドリンクを作ってるんで、それをなんとしても海外に持っていきたいなって。日本のお米は海外でもおいしいと評判で、有名なブランド米なんかはすごく高く売れてるんですよね。
海外で高く売るためにはプレゼン能力が大事だと思うんです。今、新潟や秋田なんかの一部のブランド米の知名度だけが高いから、海外のサイトでもそういった一部のブランド米のことばかり書いてあるのを見ると悔しいですね。
日本酒もそうですけど、おいしい日本酒はほかにもたくさんあるのに、「獺祭(だっさい)」だけが突然、世界でバーンと跳ねたりするわけじゃないですか。そういう意味では何が起きるかわからないので、ピコ太郎方式じゃないですけど、キッカケがあれば知名度も上がるだろうし、インスタやTikTok、YouTubeなどのSNSでも発信して、アクションを起こしていかないといけないなと思ってます。
実は今、少しずつですけど海外の方からも話は来てるんです。アメリカからも話が来てますし、それをどんな感じで進めていくのがいいのか、考えている最中です。僕がアメリカに行って、たとえばどうにかしてビヨンセに会うことができて、米麹ドリンクを飲んでもらって、ビヨンセが「うまい!」って一言言ってくれる……みたいなことがあったらいいんですけどね(笑)。
でも本当に、夢物語にしないように着実に足は前に進んでるんです。酔っぱらって居酒屋で「俺、米麹のドリンク作ってビヨンセに飲んでもらうんや」ってくだを巻くような僕ではないので。せっかく自分で始めたことなんで、責任と自信を持って世界に向けてプレゼンしていくっていうのは、本当に今後の目標としているところです。
もちろん英語の勉強もしないといけないと思ってますけど、たとえば英語を勉強するために3年かかるとして、もし、今から半年後にプレゼンする機会があったら、英語ができなくてもそこに行きます。今はAIなんかもあるし、僕の持ち前のコミュニケーション能力があれば「米麹ドリンクがうまい」っていうことぐらいは伝えられるかな、と思ってるので。
簡単に栄養が摂れて健康的な「米麹ドリンク」
米麹ドリンクって、おいしいだけじゃなくてヘルシーでもあるんです。アメリカってヘルシーなものが好きじゃないですか。そもそも“麹”がすごくいいものだし、アメリカで麹を使ったラーメンのお店が繁盛してたりもするんで、米麹のドリンクも、アメリカ人が好きそうな味にアレンジしたり、さらにヘルシーにするためにケールを入れたりして、栄養価を高くしたりということはできると思うんです。だから、どこまでいけるのかわからないですけど、一歩ずつ進んでいきたいですね。今後の目標って言いましたけど、それも遠い目標ではなく、結構直近の目標で、今年中にはお米や米麹ドリンクをプレゼンしにアメリカに行きたいと思ってます。
そもそも米麹のドリンクを作ろうと思ったのには理由がふたつあります。ひとつは、日本のお米を限界まで高い値段をつけて売る、その限界を知ったということです。高い原価で買い取って、それをさらに高く売ることの難しさっていうのは、実際に経営してみないとわからなかったです。お米にそこまで振り切った金額……たとえば「1kg8万円です」って言われても、それはいくらなんでも買えない、そこまで価値をつけることはできないっていうのがわかったんですよね。まずそれがひとつ。
もうひとつは、お米にも限りがあるので、どうにかしておいしいお米を使ったうえで量を増やせるような仕組みが作れないかなって思ったときに、簡単に栄養がとれて健康的なもの……僕が病気をしたこともあって、健康に意識が向いていたというのもあったんですけど、そういうものを考えたときに、米麹ドリンクにたどり着いたんです。
米麹ドリンクには、基本、米と米麹以外は何も入ってないんですよ。お酒ではないので、そういった意味でも海外に持っていきやすいというのはあると思います。“メイドインジャパンの新しいヘルシードリンク”として知ってもらうことができれば、結果は必ずついてくると信じて、歩いていくしかないですね。
執筆:河本準一(次長課長)
編集:田舎暮らしの本 Web編集部
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この記事を書いた人
河本準一
こうもと じゅんいち|1975年4月7日生まれ。岡山県津山市出身。NSC大阪校13期生。1995年、井上聡とお笑いコンビ、次長課長を結成。2002年、東京に進出し、芸人としてだけでなく俳優としても活躍。2010年、2015年に急性すい炎を患う。現在、SDGs推進活動や農業など、お笑い以外の活動にも取り組む。 おもなレギュラー番組は『じっくり聞いタロウ〜スター近況(秘)報告』(テレビ東京)、『巡って発見!ぶらり中国周遊記 シーズン2』(BSよしもと)など。
Twitter:@Junkoumon
Instagram:@junichi_komoto0407
Website:https://junmai.jungumi.com/
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