瀬戸内海沿岸の穏やかな風景から、山や渓谷の自然豊かな県北部まで、多彩な表情を持つ広島県。いま、その魅力を多くの人に届けて楽しんでもらう取り組みが進んでいる。インターネットで情報を得て来訪する個人旅行者をターゲットに、体験型ツアーなど新たな企画で注目を集める。
掲載:2024年11月号
アウトドアや文化体験など、地域の魅力をきめ細かく
府中町の老舗、佐々木酒店がリニューアル。角打ちも充実。近年、広島の地酒は外国人観光客からの人気も高まっている。
「広島の観光というと原爆ドームと宮島、2つの世界遺産をイメージされるでしょう。広島県にはこのほかにもぜひ見ていただきたい観光資源がたくさんあります。それらの魅力に磨きをかけ、情報発信しようと取り組んでいるのが私たちHIT(一般社団法人広島県観光連盟)です」
と話すのはHITインバウンド事業部の玉垣雅史さん。「100万人が訪れる1カ所ではなく、1万人が熱狂する100カ所をつくろう!」と、県全域を対象に観光PRや観光事業者の支援を行っている。
広島県を訪れる外国人観光客を国別に見ると、米国をはじめ欧米豪主要国が56.2%、韓国・中国・台湾などアジア主要国が18.9%(2023年)。最近では個人旅行者が増え、なかでも欧米からの来訪にその傾向が強いという。
「個人の方のほとんどは、オンラインの旅行事業者、OTAのサイトを見て宿やアクティビティを予約します。ですから現在は受け入れる側の私たちもOTAサイトでの観光PRに力を入れています」
宿や店など地域の事業者には、こうした変化に応じた環境づくりや商品企画が求められている。HITでは事業者をサポートしようと、資金獲得・学び・つながり・広報のためのプラットフォーム〝HYPP(Hiroshima Yearning Product Platform)〞を立ち上げ、4年目になる現在までで全県から延べ1000件以上の事業者が登録した。
世界遺産の原爆ドーム。平和記念公園、広島平和記念資料館と併せて、外国人も多数訪れる。
観光のテーマは幅広い。例えば尾道市から瀬戸内海の島々を橋でつなぎ愛媛県今治市に渡る「しまなみ海道」は、風光明媚なサイクリングロードとして海外でも注目を集めている。E-BIKE(電動アシスト付き自転車)のレンタルもあり、ビギナー向きから愛好者向きまで、モデルルートも多数紹介されている。
「E-BIKEでのツアーは県北の北広島町大朝(おおあさ)にもあります。アウトドアでは、安芸太田町の三段峡(さんだんきょう)でカヤックやシャワークライミングも人気上昇中です。県北エリアは公共交通機関でのアクセスが複雑な場所もありますが、海外からの旅行者も増えています」
透き通った水が流れる太田川の上流域、三段峡ではSUPやカヌーの体験ができる。
広島市の奥座敷、湯来町ではウエットスーツを着て源流へとさかのぼるシャワークライミングが楽しめる。
瀬戸内海の島を橋でつなぐ「しまなみ海道」は世界に知られるサイクリングルート。
北広島町大朝ではE-BIKEで日本の原風景「里山」をサイクリング。
尾道市には16人乗りの自転車でブルワリーを巡るツアーも。地元ガイドがハンドルを握り、参加者は地ビールを楽しみながらペダルをこぐ。
いわゆる〝映えスポット〞としては県央、世羅町の農場で季節ごとに彩りを変える広大な花畑などが、アジアからの旅行者に受けている。
「OTAを通じて、それぞれの興味に合わせて目的地を選ぶ旅行が増えました。東広島市の酒蔵、三次市や世羅町のワイナリー、福山市のデニム、熊野町の筆など、食や伝統技術について見学や体験を交えたツアーも注目されています」
欧米から広島を訪ねる旅行者は、多くが東京圏から入国する。そこで、航空会社と連携して羽田乗り継ぎ広島行きの割安チケットを活用したキャンペーンも実施している。
「日本の縮図といわれる広島県はリンゴが穫れてスキー場もある県北から、レモンを栽培する瀬戸内海沿岸まで、地域ごとにさまざまな風土を持っています。まず広島に来て、広島を拠点に日本を楽しんでいただければと思います」
四季折々の花で彩られる世羅町の世羅高原農場。夏には約110万本のヒマワリが咲く圧巻の風景が広がる。
三次市の平田観光農園はイチゴ、サクランボ、ブドウ、リンゴなど季節の果物狩りを中心に手づくり体験やスイーツなどが楽しめる“くだものテーマパーク”。
熊野町の晃祐堂では化粧筆の製造見学と化粧筆づくり体験ができる。
まだある! 広島県の魅力
“Dive! Hiroshima”は広島県の観光情報を集約したWebサイト。さまざまなテーマの特集や、地域ごとのモデルコース、各観光スポットやイベントの紹介など、定番から穴場まで県内のあらゆる見所について閲覧できる。体験・ツアーなら、全ラインアップは300数十。試しに広島市周辺で検索すると、市内の川でのSUPや郊外の山でのE-マウンテンバイクなどのアウトドア体験から、金箔を使った鉛筆づくりや漆塗り、筆づくりなど伝統工芸の体験まで100数十が多彩にヒット。参加したい企画が誰でもきっと見つかりそう。
ひろしま公式観光サイト Dive! Hiroshima
https://dive-hiroshima.com
「四季を通じていろいろな体験ができる広島県。ぜひゆっくりと楽しんでください」
広島県観光連盟インバウンド事業部 玉垣雅史さん(右)、プロダクト開発事業部 伊藤美佐さん
数字で見る! 広島県インバウンドDATA
●外国人延べ宿泊者数
2023年1月~12月......1,444,310人
2024年1月~6月...........919,690人
(観光庁「宿泊旅行統計調査」)
●国・地域別外国人観光客数
(2023年)
米国..............................368,900人
オーストラリア............240,100人
フランス .......................236,300人
台湾...............................173,800人
イギリス........................173,200人
ドイツ............................158,500人
スペイン.........................123,200人
イタリア..........................115,600人
カナダ............................... 80,600人
中国................................... 74,400人
(広島県観光連盟「令和5年広島県観光客数の動向」)
広島県移住支援情報
無料会員限定! 過去の人気セミナー動画を配信中!!
都市の利便性と、海山川の自然に恵まれた広島県。有楽町の東京交通会館には移住相談窓口があり、広島暮らしについて気軽に相談できる。県内の地域コーディネーターや移住サポーターは、地域ごとに人とのつながりづくりをサポートする。移住ポータルサイト「HIROBIRO.ひろしま」では、移住イベント情報や各市町の施策、移住者インタビューなどを発信。無料の会員登録で過去のセミナー動画もチェックできる。
お問い合わせ/ひろしま暮らしサポートセンター ☎︎080-5873-3296
尾道市内には6つの仏塔がある。高台に立つ天寧寺三重塔は室町時代に健立。
有楽町のひろしま暮らしサポートセンターでの相談は無料。移住相談員がサポート!
【HIROBIRO.ひろしま】https://www.hiroshima-hirobiro.jp/
【広島県公式移住窓口あびぃちゃん】https://www.hiroshima-hirobiro.jp/news/details/004766/
文/新田穂高 写真提供/(一社)広島県観光連盟
この記事の画像一覧
この記事のタグ
田舎暮らしの記事をシェアする