各自治体が返礼品の充実やそのPRに力を入れているなかで、2年連続でふるさと納税寄附額日本一となっている宮崎県都城市。寄附金を活用した手厚い支援で移住者が急増、その大部分が40代以下の子育て世代だ。ふるさと納税の成功事例を体現している都城市を取材した。
掲載:2025年4・5月号
CONTENTS
- 約194億円の寄附金額の約7割を子育て支援に活用
- 3つの完全無料化で子育て期の経済負担を軽減
- 最新! 都城市で人気の返礼品
- 子育て中の本誌ライターがリポート!
ふるさと納税の恩恵を受ける 子育て世帯にオススメのスポットin都城
宮崎県都城市 みやこのじょうし
宮崎県南西部に位置する人口約16万人の南九州の拠点都市。広大な都城盆地のほぼ全域を占め、四季がはっきりした気候が特徴。高速道路や高規格道路、JR線、また40km圏内に2つの空港があり、交通インフラが整っている。都会と豊かな自然が適度に共存するまちで、商業・医療・福祉の都市機能が集積しているのも魅力。写真/霧島連山の麓に広がる観光牧場「高千穂牧場」は、大自然のなかで動物たちとの触れ合いや手づくり体験ができる、ファミリーに人気の観光スポットだ。
約194億円の寄附金額の約7割を子育て支援に活用
ふるさと納税制度がスタートしたのは2008年。当初、知名度も低く、寄附金額は1000円にも届かなかった。しかし、都城市は、肉用牛・豚、鶏の合計産出額が日本一であり、また、12年連続で売上高日本一の焼酎メーカー「霧島酒造」があるまちだ。2014年、市は返礼品を肉と焼酎に絞り込み、都城市独自の特徴を押し出したPRを開始。この戦略は成功し、その年のふるさと納税の寄附金額はそれまでの平均金額の約100倍にあたる5億円を達成。翌2015年には、全国1位の42億円の寄附金額を集めた。以降10年間で5度、寄附金額日本一を達成している。
ふるさと納税で集まった寄附金は、8つのメニューのなかで寄附者が選んだ使途に活用している。まちづくりや環境・森林保全、高齢者支援などがあるなかで、全体の約半数が「子育て支援」を希望している。それに応えるかたちで、市はさまざまな角度から手厚い子育て支援策を展開することができ、その結果、「子育てするなら都城」というブランドイメージが確立されつつある。
3つの完全無料化で子育て期の経済負担を軽減
なかでも大きな施策が、「第一子からの保育料」「中学生までの入院・通院や薬局利用時にかかる医療費」「妊産婦時に受診する健診費用」の3つの完全無料化だ。
都城市は、2023年に「人口減少対策課」を設置し、〝10年後に人口増加へ!〞の目標のもと、人口減少対策に取り組んでいる。人口を増やす方法は、移住者を呼び込むことによる社会増と、子どもの出生を増やす自然増の2つだ。そこで市では、移住者を呼び込むための施策として、最大500万円の移住応援給付金を、自然増のための施策として、前述の3つの完全無料化をスタートしたのだ。
これらの施策が大きな話題を呼び、移住希望者数が急増、スタートから1年の昨年度、市は早々に約13年ぶりの人口増に転じた。人口減少対策課の満永昌孝さんは、次のように話す。
「最大500万円という数字のインパクトから給付金のほうが取り上げられがちですが、長期的な人口増を目指していくうえでは、給付金で移住者を増やすだけでは不十分です。3つの完全無料化をはじめとする経済的な負担の軽減や、保育所、放課後児童クラブ、公共施設やファミリー・サポート・センターなど子育てしやすい環境を整えることで、子育て世帯の方と、これから子どもを望む方に、都城は安心して子育てができると感じていただくことが重要です」
ふるさと納税というエンジンで「移住支援」と「子育て支援」の両軸を動かし、子育て世帯の獲得と人口増に成功しはじめている都城市。今後もこのシステムを継続していくことが重要だと、さらに担当者は続ける。
「ふるさと納税という基盤があるからこそ、手厚い子育て支援を行うことができ、子育て世帯に支持されています。ですが、例えば、もし現状の子育て支援策を来年から取りやめるとなったら、この支持は得られなくなり、都城市は安心して子どもを生み育てられるまちではなくなってしまうでしょう。また、市では現状は待機児童はゼロですが、希望の保育施設に入りにくいことがあるなど、まだまだ課題もあります。今実施している子育て支援を継続し、今後さらに進化させていくために、ふるさと納税事業に取り組んでいきます」
最新! 都城市で人気の返礼品
内閣総理大臣賞を受賞した牛肉、20種類以上のブランド豚が揃う豚肉、独自の飼育方法で生産された鶏肉など、量や発送方法が選べる2000種類以上の返礼品が揃う。「ぜひ日本一の売上高を誇る焼酎とともにお楽しみください!」(ふるさと納税局 シティプロモーション担当 上森智之さん)
内容量&発送時期が選べる「本格手焼き! 炭火焼鶏(ゆずこしょう付き)」
「熟練の職人が手焼きで焼き上げ急速冷凍した炭火焼鳥は、ジューシーで自信を持っておいしいです! 塩のみのシンプルな味つけだからこそ、素材そのものの味わいが楽しめます」
セット内容&発送時期が選べる!「宮崎牛9種盛り焼肉セット」
「9種類の部位を一気に味わえる食べ比べセットです。バーベキューにもオススメです。モンドセレクションで金賞を受賞した焼肉のたれも、ぜひご賞味ください」
産地が選べる豚肉詰め合わせ「わくわく4.1kgセット」
「とんかつ用のロース、焼肉用のバラ、しょうが焼き用の肩ローススライス、切り落としのロース・バラしゃぶとバラエティ豊かで、日々のいろんな料理に使っていただける、人気返礼品です」
都城の酒造メーカー3社の焼酎を飲み比べ「豪華プレミアム7種7本セット」
「おいしい料理をさらに引き立てる、都城自慢の焼酎をお楽しみください! いつもの味もほしいけど、たまには違う焼酎も試してみたい……という方に。各焼酎の違いをお楽しみいただけます」
ゴルフクラブ「スリクソン」
「都城市には、ゴルフクラブメーカー、(株)ダンロップゴルフクラブの工場があります。プロも愛用する憧れのゴルフクラブをぜひ使ってみてください」
子育て中の本誌ライターがリポート!
ふるさと納税の恩恵を受ける 子育て世帯にオススメのスポットin都城
ふるさと納税の寄附金を活用し、都城市には魅力的な公共施設やアクティビティ施設が次々と誕生! まちとしての魅力が増している。なかでも、特に子育て世帯に人気のスポットを訪ねてみた。
➀ Mallmall(まるまる)
まず訪れたのは、市街地に位置する複合施設「Mallmall(まるまる)」。図書館、子育て支援施設、交流施設、イベント広場が一体となっていて、全施設が駐車場から大きな屋根でつながっている。雨の日でも傘をさす必要がなく、子ども連れには大変便利だ。ベビーカーや子どもと手をつないだたくさんの親子が行き交っており、市内の子育て世帯の憩いの場になっているのを感じた。
スタイリッシュなデザインでグッドデザイン賞を受賞した都城市立図書館は、なんと延床面積8046㎡。絵本や児童書も充実しており、子どもともゆったりと過ごすことができる。
子育て世代活動支援センター「ぷれぴか」は、支援員に見守られながら雨の日でも思い切り子どもを遊ばせることができる、子育て世帯に大人気の施設だ。また、Mallmallイベント広場では、週末になるとマルシェやさまざまなイベントも開催されているのだとか。
都城市立図書館
高い天井とあまりの広さに感激。子どもが靴を脱いでリラックスして本を読めるスペースや、飲食可能なエリアもあり、3歳の娘がいてもゆったり過ごすことができた。
ぷれぴか
未就学児の親子の交流スペース「子育て支援センター」や小学校3年生までの親子で遊べる「プレイルーム」、乳幼児の一時預かりなどを実施している。プレイルームではダイナミックな遊びを思い切り楽しむことができる。
② 関之尾公園
次に向かったのは「関之尾公園」。都城市を代表する観光地が、昨年春にリニューアルし、キャンプフィールドやコテージ、アウトドアショップやレストランが新たに加わった。人気アパレルブランド「スノーピーク」との連携で、洗練された空間で自然を満喫できる。到着早々、子どもたちは目を輝かせて大はしゃぎ。迫力満点の滝や吊り橋のある遊歩道を歩く冒険に大興奮。市街地から車で約20分で、霧島ジオパークサイトにもなっている自然に触れられるのは、都城市ならではの魅力だ。
関之尾滝
「日本の滝百選」にも選ばれている迫力満点の滝。少し怖がりながらも轟音と水しぶきを楽しんでいた。大自然のなかに行くと、子どもたちがいつもより無邪気になる。
レストラン Blue Bird dining
子どもたちは地元産のお肉を使ったミートボールと焼き立てパンのキッズランチプレートを、私は都城産のそば粉を使ったガレットをいただいた。いつもは食の細い息子が「おいしい!」と完食!
③ 「道の駅」都城NiQLL(ニクル)
最後に訪れたのは、都城ICから車で約5分というアクセス抜群の「道の駅」都城NiQLL。ここでは地元の精肉や新鮮な野菜、多彩な焼酎が並ぶ直売所での買い物が楽しめるほか、地元の食材をふんだんに使ったレストランやカフェも充実している。「木のゆうぐ広場」で子どもを遊ばせたり、ファミリー向けのイベントも多く開催されており、家族で楽しめるスポットになっている。
多彩な商品が並ぶ直販所での買い物や、飲み比べもできる焼酎カフェを大人が楽しんだあとは、木のぬくもりを感じられる「木のゆうぐ広場」でもうひと遊び。大人も子どもも楽しい道の駅だ。
■都城市を訪ねてみて……
実際に訪れた都城市は、子育て世帯にとって理想的な環境が整っているまちだった。市街地には大型スーパーやチェーン店、アパレルショップが立ち並び、田舎の不便さは感じられない。広々とした公園が点在し、少し車を走らせれば豊かな自然に囲まれたレジャー施設が多数あり、子どもをのびのびと遊ばせることができる。そこに、ふるさと納税を活用した新たな施設が加わり、その魅力はますます増している。(ライター・揖斐)
子育て世帯を応援! 注目の施策
「第一子からの保育料」「中学生までの入院・通院や薬局利用時にかかる医療費」「妊産婦時に受診する健診費用」の3つの完全無料化以外にも、充分過ぎるほどに手厚い子育て支援が揃っている。ふるさと納税寄附金額第1位の賜物だ。
病児・病後児保育の利用料が実質無料!
2023年10月から1人当たり1日最大2000円の病児・病後児保育施設の利用料助成がスタートした。これにより、保育所などに通う幼児や小学生が体調不良で集団保育ができず、保護者が就業などにより家庭で保育ができない際に、無料で病児・病後児保育施設に子どもを預けることができる(給食費・おやつ代は別途負担)。
送迎を依頼できるファミサポが自治公民館に加入で無料!
子どもの送迎支援や預かり支援を援助会員に依頼することができる「ファミリー・サポート・センター事業」では、半額を市が負担し、1時間300円で利用することができる。さらに昨年9月からは、自治公民館加入者が送迎支援を利用する際の利用料が無料に。
都城市が子育て世帯の移住先に選ばれるその他の理由
●医療の充実
市内に約130カ所の病院があり、夜間急病センターなど24時間365日の救急医療体制も整っている。また、近隣のまちでは産婦人科や小児科がなくなったりしているなか、都城市には5つの産婦人科と、全国トップクラスの周産期医療を行う「都城医療センター」があり、安心して出産することができる。小児科の数も多い。
●学校の充実
認可保育所・認定こども園などが市内に87施設、小学校が37校、中学校が20校、高校が8校、大学が1校ある。地方移住の懸念点として、高校などの学校の数により選択肢が狭まることが挙げられるが、都城市は幅広い進路の選択が可能だ。
問い合わせ/都城市移住・定住サポートセンター
☎0986-23-2542
※掲載内容は2025年2月取材時点の情報です。
文・写真/揖斐麗歌 写真提供/都城市
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