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田舎暮らしの本 10月号

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田舎暮らしの本 10月号

9月3日(水)
890円(税込)

© TAKARAJIMASHA,Inc. All Rights Reserved.

PR総務省

50代から「地域おこし協力隊」で夢への第一歩を踏み出す! 長年の社会人経験を活かして充実した人生を

都市部から過疎地域へ拠点を移し、地域の担い手として活動する「地域おこし協力隊」。主な世代は20~40代ですが、近年では50代や60代の人も増えてきています。長年の社会人経験や高いコミュニケーション能力から醸しだされる安定感や頼り甲斐は、自らの手で人生を耕してきた“先輩層”ならではの強みです。今回は、50代で地域おこし協力隊に挑戦し、故郷近くのまちで自分の夢へ向かって歩を進めている星野貴男さんに話を伺いました。

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※地域おこし協力隊について、詳しくはこちらを参照

「休耕地をどうにかしたい!」と故郷の群馬県で地域おこし協力隊に

藤岡市鬼石地域で50代で地域おこし協力隊となった
50代で地域おこし協力隊となった星野貴男(ほしのたかお)さん。「休耕地を復活させ、神流川(かんながわ)一帯に『ほし農eN(ほしのうえん)』をつくりたいと思っています」と夢を語ってくれました。

「実家の畑が荒れているのを見て、なんとかしたい! 故郷のために何かできないかと思ったんです」と話すのは、星野貴男さん(58歳)。2023年7月から、群馬県藤岡市鬼石(おにし)地域で「地域おこし協力隊」として活動しています。

 鬼石地域は、藤岡市の市街地から車で20分ほど、埼玉県との県境にある小さなまち。昔の宿場町で、美しい青緑色が特徴の三波石(さんばせき)の産地でもあります。星野さんは地域おこし協力隊として、藤岡市と雇用契約を結び鬼石振興課に在籍。活動内容は、過疎化が進む鬼石地域の活性化と移住定住の促進、情報発信などです。

「現在は休耕地の再生に向けた取り組みも進めています。実は農地の復興は活動内容に直接は入っていませんでしたが、農地を復興して農業体験などで人が訪れるようになれば地域の活性化につながると思い応募しました」と笑いながら話す星野さん。このあたりの臨機応変さは、さすが年の功というべきでしょうか。

 星野さんの実家は、桐生市の養蚕農家でした。農業より工業という時代背景もあり、星野さん自身は農家ではなく、埼玉のトラック製造会社の技術者として働くことを選びました。50歳を過ぎたころから、実家の畑が草だらけになっていることや老いていく両親のことが気にかかるようになり、「群馬へ帰りたい」という思いが徐々に高まってきたといいます。そして子どもが社会人となったのを機に、群馬へのUターンを決心しました。

 しかし帰郷するとはいっても、仕事のあてはなく、起業するにも資金も知識もありません。悩んでいたときに、群馬県地域おこし協力隊のポータルサイト「ツナグンマ」を見て、地域おこし協力隊という制度を知りました。

「3年間、地域協力活動で給料をもらいながら、仕事を覚えて勉強もできる。さらに地域との絆や生活の基盤も固められます。『これだ!』と思いました」

 故郷の桐生市に近く、地域の活性化や地方創生といった活動内容にも興味が湧き、藤岡市鬼石振興課の地域おこし協力隊に応募。埼玉の家に妻と子どもを残し、単身で鬼石地域へ移り住みました。

ゼロから空き家対策に取り組み、「おにしん家」を立ち上げる

群馬県藤岡市鬼石地域のまちなみ
桜山公園から望む藤岡市鬼石地域のまちなみ。中央を流れる川の手前が鬼石地域で、奥は埼玉県神川町(かみかわまち)です。桜山公園は冬桜の名所で、秋から冬にかけて約7000本の冬桜が楽しめます。

 星野さんの地域おこし協力隊としての活動は大きく分けて次の3つです。「①鬼石地域の魅力発信」「②鬼石振興課の補助業務」「③空き家対策」。①はSNSなどを使ってのさまざまな情報発信で、②は事務作業から関連施設の草刈りまで多岐にわたります。星野さんが特に注力したのが③の空き家対策です。

「着任したときは、地域に空き家はたくさんあるものの、紹介できる物件はゼロ。数カ月かけて現状調査に取り組みました。調べれば調べるほど、急激な人口減少、空き家だらけになっていく現状への住民の不安、荷物を片付けられない所有者の悩みなど、深刻な問題に直面していると感じました」

 まずは鬼石地域の現状の調査から始めた星野さん。町の課題解決を「人口減少を抑えて4000人を維持すること」と仮定して、人口減少を抑えるシナリオを作成し、鬼石地域の存続を願う地区代表者を交えた定住対策部会にて議論を交わしました。

 同時に進めた空き家調査では、町に空き家は数多くあれど、所有者不明のまま放置されてしまっている現状に直面しました。着任後に築いた人脈を頼りに空き家の所有者を地道に探し、空き家バンクに登録していない理由や心境などを一人ひとりに丁寧に聞き取りを実施。「長年暮らしてきた家だからこそ、大切に住み続けてくれる人に売りたい」「興味本位の人に家を見られたくない」といった持ち主の切実な想いに気づき、非公開空き家バンク制度「おにしん家(ち)」を2024年に立ち上げました。「おにしん家」は、誰にでも空き家の情報を公開するのではなく、移住相談に訪れてこの地に移住する気持ちが強い人にだけ物件を紹介するという独自のスタイルで、相談に訪れた移住希望者からも家の所有者からも厚い信頼を得ています。

「大変でしたが、職場や地域の皆さんに協力していただき、官民協業型のプロジェクトとして取り組むことができました。僕はトラック製造の技術者でしたが、当然ながら技術開発にはさまざまな調査を行います。また企画を通すためには多くの人への事前調整などが必要です。こうした社会人としての経験が、地域おこし協力隊となってからの調査や人との折衝などに役立ちました。温かい人たちに囲まれた、いい環境で仕事ができることがありがたいです」

 藤岡市には、星野さんのほかに地域おこし協力隊が鬼石振興課にもう一人(2025年8月末で任期終了)いるほか、森林課にも二人います。活動内容が異なってはいても、近況報告や情報交換を行い、ときには集まってお茶をしたり、歌ったりして、親睦を深めています。また、任期終了した協力隊経験者の人たちとの交流も盛んで、サポートや相談に対応してくれています。

「若い人たちと仕事をするのは楽しいです。僕らの年代とは違う見方や発想があり、いい刺激をもらえています。一方で、30年近く培ってきた僕の社会人経験を若い人たちに伝えていければいいなと思っています」

群馬県藤岡市の地域おこし協力隊メンバー
藤岡市の地域おこし協力隊。左から森林課の横尾 幹さん、鬼石振興課の吉田まり子さん(2025年8月末で任期終了)と星野貴男さん、森林課の渋木香里さん。協力隊同士、仲がよく、のびのびと活動しています。

50代で地域おこし協力隊となった方
音楽が好きな星野さん。取材時もギターをさらっと披露してくれました。趣味などの幅広さもこの世代の強みです。

休耕地の復活を目指す第一歩「ほし農eN(ほしのうえん)」

 星野さんの本来の夢は、休耕地の復活。空き家対策の仕組みも整い、地域への顔つなぎもできた3年目は、畑おこし活動に着手しています。まずは、空き家対策で地域をめぐっていた際に見つけた休耕地を借りて、よみがえらせることから。さらに、自給自足や畑をやりたい人には、畑を紹介する「畑版 おにしん家」というアイデアもあるといいます。

「鬼石地域の神流川流域から利根川の合流地点の少し先までの休耕地を耕し、オーガニック系野菜の主要産地として生まれ変わらせるという壮大なプロジェクト『運命のほし農eN計画』を開始しました。荒れてしまった土地を農地として復活させるには煩雑な法律や手続きがあって課題は山積みですが、いろいろな方に協力いただき、勉強しながら進めていきたいと思います。あと、使われなくなった農機具などもどんどん直していきたいです。これは、僕の前職での技術が大いに役立ちますね」と星野さんは充実した様子です。

 2026年6月に地域おこし協力隊の任期が終了する星野さん。その後のことを視野に入れ、農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」を始めました。空き家だった家を借りて住んでいますが家主から許可を得て、リビングは音楽も楽しめるスペースに、2階は客室にと仲間たちで改装。畑で収穫した野菜を調理して味わう食堂スペースもあります。

50代で地域おこし協力隊となり、放置された畑をよみがえらせたいと話す
作成した今後10年のプロジェクト計画を手にする星野さん。後ろは、農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」として活用している家。

農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」客室
農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」の客室。農業体験に訪れた人が泊まれるようにしています。

農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」リビング
リビングは、大勢の人たちが集うスペース。「上毛かるた『裾野は長し赤城山』にちなみ、赤城の大広間と呼んでいます(笑)」と星野さん。

農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」のオープニング記念に集まった人たち
「鬼の巣」のオープン記念に、お世話になった方々に集まってもらい、音楽と食事を楽しみました。

「2025年6月には、イモを収穫して植える農業体験ツアーを実施しました。午前は、桐生市の僕の実家の畑でジャガイモを掘って、サツマイモの苗を植え、畝づくりやマルチシート張りなどの農作業。収穫したての作物を畑で蒸して食べてもらいました。午後は鬼石に戻り、『ほし農eN』の野菜たっぷりカレーをみんなでつくり、鬼石地域へ移住した方々も合流して楽しい夕食会に。任期終了後も、こうした企画をいろいろとやっていきたいです」

「鬼石地域での地域おこし協力隊の活動は、思っていた以上に楽しい」と話す星野さん。「鬼石は山に囲まれていて自然が豊か。そして、ユニークな人が集まっているところが魅力です。かつて宿場町や造園業が盛んだったことから、外から訪れる人に対して垣根がなく、皆さんウェルカムな空気感です。新しい事業や取り組みに対しても、常に前向きに検討してもらえます」と話してくれました。

自生しているわらび。成長して一面覆われている
成長したわらびで、一面が覆われている畑。このわらびを活かして、春にはわらび採り&料理体験ツアーも開催しました。

星野さんから、地域おこし協力隊を目指す人へのアドバイス

「50代からでも、地域おこし協力隊にはなれます。僕自身は、いいタイミングで地域おこし協力隊になったと思っています。社会人経験を積んだ50代だからこそ、若い世代よりもできることが多いですからね。ただ、人と接するときは、前職や前の暮らしのことをあまり出しすぎず、フラットに接するのがオススメです。

 また、地域おこし協力隊は、文字通り“協力隊”なので、職場や地域との協力がなにより大切です。自分がやりたいことばかりを追い求めるのではなく、任された仕事や補助業務などをきちんと行い、信頼関係を築いたうえで、自主企画を提案していくようにすると通ることが多いですよ」

地域おこし協力隊に興味を持ったら

 全国どの地域であろうと、地域おこし協力隊の業務の大前提は「地域協力活動」。最長3年間の任期の中で、地元住民との交流や共同作業などが自ずと発生するため、顔見知りゼロの状態からでも地域になじみやすく、活動しながら任期終了後の基盤を整えることができます。未経験の仕事に就くような場合は、研修や独立の支援を行っている自治体もあり、また自治体にとっても、50代以降の社会経験が豊かな人材は頼もしい存在です。移住を考えている人にとっては、定住への足掛かりとして適しているといえる地域おこし協力隊。地域で活躍したい、地方へ移住したいという思いがあるなら、ひとつの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。

 地域おこし協力隊に興味がある方は、まずはオンライン講座やイベントに参加してみましょう!

地域おこし協力隊入門講座

 地域とつながるプラットフォーム「スマウト」では、地域おこし協力隊の応募に関心のある方や、地域選びに失敗したくない方を対象に、総務省主催でオンライン講座を開講。制度の解説をはじめ、特定のテーマについて深掘りした内容となっています。

●開催日/毎月最終火曜日
●開催方法/オンライン

↓お申し込みや詳細はこちらをクリック

地域おこし協力隊入門講座

地域おこし縁むすびキャラバン

 地域おこし協力隊員を募集する自治体と出会えるマッチングイベント「地域おこし縁むすびキャラバン」を開催します。自治体が出展するブースのほか、移住相談や地域おこし協力隊制度の解説をする窓口も設置。具体的に活動地域が決まっている方も、制度について知りたい方も、ぜひご参加を。地域とのご縁が生まれるかもしれません。

●日時/会場
<東京開催>
2025年10月12日(日) 13:00-16:30/東京交通会館8F セミナールームBCD
2025年11月29日(土) 13:00-16:30/東京交通会館12F カトレアサロンA
<大阪開催>
 2025年11月2日(日) 13:00-16:30/OMMビル2F F・F2ホール

↓詳細はこちらをクリック

地域おこし縁むすびキャラバン


お問い合わせ先/総務省地域力創造グループ地域自立応援課 
地域おこし協力隊/ニッポン移住・交流ナビ JOIN

地域おこし協力隊Facebook
https://www.facebook.com/chiikiokoshikyouryokutai?mibextid=wwXIfr&rdid=GczzTHyTxILCd8gL&share

地域おこし協力隊募集情報はこちら
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/search.html

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  • 藤岡市鬼石地域で50代で地域おこし協力隊となった
  • 群馬県藤岡市鬼石地域のまちなみ
  • 群馬県藤岡市の地域おこし協力隊メンバー
  • 50代で地域おこし協力隊となった方
  • 50代で地域おこし協力隊となり、放置された畑をよみがえらせたいと話す
  • 農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」客室
  • 農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」リビング
  • 農と音を楽しむ民泊「鬼の巣」のオープニング記念に集まった人たち
  • 自生しているわらび。成長して一面覆われている
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  • 地域おこし縁むすびキャラバン

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