「壁のない広い空間でシンプルに暮らしたい」。そんな思いが出発点となって、Kさん一家が選んだのは「木の家」。家中をいつでも新鮮な空気が巡るような開放的な間取りで、心地よく暮らせる工夫に満ちている。
掲載:2025年9月号
暮らしの中心に、家族のつながりを置いた間取り
お話を伺ったのは/鳥取県境港市(さかいみなとし) Kさん夫妻
ご主人は境港市出身で剣道家、奥さんは琴浦町出身でウクレレ演奏が好き。中学生と小学生のきょうだい、2匹のビーグル犬とともに暮らす。ご夫妻がオススメするまちのスポットは境水道大橋からの景色と水木しげるロード。写真/犬たちが大喜びで走り回る庭。ここでバーベキューを楽しむこともあるという。
鳥取県境港市に暮らすKさん一家が「木の家」を建てたきっかけは、偶然にも実家の前の土地が売りに出されたことだった。同じころ、県内に「無印良品の家」のモデルハウスがオープン。「ちょっと見てみようか」と家族で訪ねることにした。
「もともと無印良品の家具や雑貨が好きだったので、まず家のたたずまいに惹かれました」とご主人。
家づくりの打ち合わせを進めるなかで、Kさん夫妻が大切にしたいと思っていたのが、壁や仕切りをできるだけ設けない「一室空間」の間取りだった。
「私の実家は、昔ながらの日本家屋で、部屋を襖で仕切っていたんです。完全に閉じられていないから、家族の気配が自然と伝わってくるんですよね。そんな、ゆるやかなつながりが感じられる家にしたいと思っていました」(奥さん)
また、個室があると、かえって使われないスペースが生まれてしまうことにも抵抗があった。家のすみずみまで空気が巡り、家族がひとつ屋根の下で暮らしていることを実感できるような空間にしたかったと話す。
「もちろん、子どもたちが大きくなれば、プライベートな空間も必要になると思います。でも、間取りを変えられる可変性があると聞いて、それなら変えていくことも楽しめばいいと、考え方を切り替えることができました」(奥さん)
風を通す窓設計や、夏は日差しを遮り、冬は光を取り込む深い軒。自然に寄り添うパッシブデザインが、快適な暮らしを支えている。
リビングとつながるウッドデッキ。木製フェンスが目隠しとなり、外でもくつろげる心地よい空間に。
日本家屋の「土間」のような玄関。自転車を置いたり、観葉植物を育てたりできる。
リビングとダイニングも一体感があって広々。1年に一度は模様替えを楽しんでいる。
収納から考える、ものとの快適な付き合い方
この家で暮らし始めて5年。Kさん一家は、日々のなかで「シンプルに暮らす心地よさ」を実感しているという。
家具や収納、雑貨は、ほとんどが無印良品のプロダクトで揃えられている。「いろいろなメーカーを比較しなくても、無印良品で選べば全体に統一感が出てくれる。その手軽さも助かっています」と奥さん。
子どもたちには、それぞれひとつずつユニットシェルフを用意。「おもちゃや着替えは、この中に収まる分だけにしようね」と声をかけているという。
「どれくらいのものがあれば心地よく暮らせるのか、自然と学んでもらえたらいいなと思って」(奥さん)
また、室内にいながら季節の変化を感じられるのも、「木の家」ならではの魅力だ。
「ウッドデッキは、外のリビングみたいな存在。天気がいい日は寝転がって過ごしています。妻はキッチンから空や雲の流れを眺めるのが好きみたいです」(ご主人)
心地よい季節には窓を大きく開けて風を通し、夏と冬はエアコン1台で快適に。この家の優れた断熱性が、そんな暮らしやすい環境を支えている。
「子どもたちもこの家が好きみたいですね。学校から帰ると自然とリビングに集まって、一緒にゲームをしたり、犬たちと過ごしたりしています。何げない日常のなかに、家族の時間がある。それが何よりの癒やしです」(ご主人)
「木の家」Kさん宅の間取り。
2匹のビーグル犬と暮らす。わんちゃんのトイレまわりなどは視線に入りにくいよう工夫されている。
2階は、緩やかにスペースを区切っている。今年の春までは2段ベッドを利用していた。
フリースペースの一角に設けた子どもの勉強スペース。無印良品の家具で、インテリアの統一感を出している。
空気を遮る壁がないので、エアコン1台とサーキュレーターで夏も冬も快適に過ごせる。
キッチンでは、無印良品のポリプロピレン収納ケースを利用。「横のラインを合わせたときの美しさが好きです」(奥さん)
ADVICE
「木の家」の魅力のひとつは、広々とした一室空間を選べること。「自然の力をうまく取り入れながら、省エネで快適に暮らせるパッシブデザインや、高い断熱・気密性能が無印良品の家の特徴ですが、一室空間にすることで、その効果がより生きると思います」(MUJI HOUSE広報 小林未来さん)
また、シンプルにこだわったKさんだが、「これはつくってもよかったかも」と思うものがひとつある。それは屋外の収納だ。
「冬の雪かきスコップや夏の草刈り道具など、土地柄どうしても必要なものがあるんです。そういう道具をしまうスペースは、やっぱりあったほうがよかったかもしれません」(ご主人)
文/はっさく堂 写真提供/無印良品の家・MUJI HOUSE(撮影/加藤晋平)
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